持病がある。コントロールできているし、仕事に支障はない。それでも、転職で言うべきなのか。言ったら落とされないか。

先に法的な線を引く。聞かれてもいないことを自発的に告知する義務は、原則ない。その上で、言った方がいい場合と伝え方の実務がある。順に書く。

この記事の要点

  • 自発的な告知義務は原則ない。病歴は保護されるべき個人情報だ
  • 例外は、職務の遂行に直接支障を及ぼす場合になる
  • 聞かれた時は、職務との関係で正直に。積極的な嘘はリスクだ
  • 配慮が要るなら、内定後に「病名より配慮事項」で伝えるのが実務だ

法的な線引き。原則・例外・答え方

原則。応募者に、聞かれてもいない病歴を自ら申告する法的義務は基本的にない。病歴は機微な個人情報で、採用選考は本人の適性と能力を基準に行うべきというのが行政指針の立場だ。健康状態を理由にした一律の不採用は、この趣旨に反する。

例外。その病気が、応募する職務の遂行に直接の支障を及ぼす場合は話が変わる。意識を失う発作のリスクがある人が運転や高所作業の職に応募する、といったケースでは、安全に関わるため信義則上の告知が問題になりうる。判断の軸は病名ではなく、職務との関係だ。デスクワークに支障のない持病は、この例外に当たらない。

聞かれた時の答え方。面接や健康状態の申告書で直接聞かれた場合、積極的な虚偽はリスクになる。後に発覚した際、詐称類似の問題として扱われうるからだ。実務の答え方はこうなる。

「業務に支障のある健康上の問題はありません」

支障がないなら、これは嘘ではない。相手が知りたいことの本質(この仕事を遂行できるか)への、正確な回答だ。病名の開示と、業務遂行可否の回答は、別のものとして扱っていい。

言った方がいい場合。隠すコストと比べる

告知義務がないことと、言わない方が得なことは、別の話だ。入社後の生活を考えると、伝えた方が楽になるケースがある。

  • 定期通院がある。月1回、決まった曜日に抜ける必要があるなら、隠したままの調整は毎回の消耗になる
  • 業務・環境に配慮が要る。長時間の立ち仕事を避けたい、強い光や騒音が症状に響く、など
  • 服薬による時間帯の制約がある

こうした場合、隠し続けるコスト(毎回の言い訳・発覚の不安・無理をして悪化)の方が、伝えるコストより大きくなりやすい。休職歴が絡む場合の考え方は休職・復職が怖い人への整理も参考になる。

伝え方の実務。タイミングと言い方

伝えると決めた場合の実務は3点だ。

1、タイミングは内定後・入社前。選考中の告知は、適性・能力以外の要素で判断が曇るリスクを自分から持ち込む形になる。内定が出て、条件の確認をする段階(労働条件の確認と同じ場面)で伝えるのが、双方にとって実務的だ。

2、病名の詳細より、配慮事項を具体的に。会社が知りたいのは診断名ではなく、何をどう配慮すればあなたが力を発揮できるかだ。「月1回◯曜日の午前に通院が必要です。業務への影響はこの範囲で、このように調整します」という形が、一番受け取りやすい。

3、支障がないことも言葉にする。配慮事項とセットで、「それ以外の業務遂行に支障はありません」と明示する。配慮の依頼が、能力の留保と誤解されないためだ。

入社後の健康診断についても1つ。入社時の健診は一般的な手続きで、そこで把握される情報は健康管理の目的で扱われるものだ。健診で分かる範囲のことを面接で虚偽申告していた、という形を作らないためにも、聞かれた時の答え方は前述の型(職務との関係で正確に)を守るのが安全になる。

配慮を制度で受ける選択肢。障害者雇用枠

持病の内容によっては、もう1つの道も視野に入る。障害者手帳の対象になる場合、障害者雇用枠での就労という選択肢だ。

  • 配慮を、個人の交渉ではなく制度として受けられる
  • 通院・体調への理解が前提の求人で、隠すストレスから解放される
  • 一般雇用と比べた給与水準や職務の幅は、求人によって差がある。両にらみで検討する価値がある

手帳の対象かどうか、枠を使うかどうかは、主治医や支援機関と相談して決める話になる。IT分野での就労を目指すなら、障害者専門の就労支援(atGPジョブトレIT・Web、manabyなど)という窓口も存在する。該当する人には制度と専門窓口がある、という事実だけここに置いておく。

最後に。持病を抱えて働くことは、あなたが思っているより普通のことだ。開示は義務ではなく、戦略の変数になる。職務に支障がないなら堂々と黙り、配慮が要るなら賢く伝える。どちらを選んでも、あなたの選択は正当なんだわ。

よくある質問

持病は転職先に必ず伝えなければいけませんか?

原則、自発的な告知義務はない。例外は職務の遂行に直接支障を及ぼす場合で、判断の軸は病名ではなく職務との関係だ。

面接で健康状態を聞かれたら嘘をついていいですか?

積極的な虚偽はリスクだ。支障がないなら「業務に支障のある健康上の問題はありません」が正確で安全な答えになる。

持病を伝えた方がいい場合はありますか?

定期通院や配慮が要る場合だ。内定後に、病名の詳細より配慮事項を具体的に伝える形が実務になる。

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