美容師を辞めたい。だが、辞めた後の自分が想像できない。手に職の世界しか知らないまま、外に出て生きていけるのか。

この問いには、実体験で答えられる。私は1社目、美容業界のブラック企業にいた。残業代なし、休日出勤、パワハラ。1年もたずに辞めて、フリーターになった。その後どうなったかを含めて、全部書く。

この記事の要点

  • 辞めた後の道は4つ。休んで戻る・環境を変える・隣接へ・外へ
  • 業界の消耗は環境の問題だ。甘えの物差しで測らなくていい
  • サロンの対人力と体力は、外の世界で普通に通用する
  • 学び直しには給付金という追い風がある。自腹の時代より条件はいい

私の話から始める。業界を出て、どうなったか

先に、私の実例を置く。

1社目の美容業界の会社は、絵に描いたようなブラックだった。朝から晩まで働いて残業代はなく、休日も呼び出され、職場にはパワハラが常態化していた。1年もたずに辞めた。

その後はフリーターだ。カフェやポスティングのバイトで食いつなぎながら、50万円を自腹で払って渋谷のWebスクールに通い、HTML/CSSやPhotoshopを学んだ。そこからWeb業界に未経験で潜り込み、デザイナー、ディレクターと進んで、いまはフリーランス4年目になる。あの50万円の顛末はWebスクールに50万払った話に詳しく書いた。

この実例から言えることは1つだ。業界を出た後の人生は、実在する。辞めた直後は、履歴書に書けるものが何もない気がしていた。だが実際には、あの業界で身につけたものが、外の世界でずっと土台になり続けた。

辞めた後の道は4つ。全部を並べてから選ぶ

美容師の「辞めたい」には、実は4つの出口がある。いきなり業界離脱の1択で考えるから、怖くなる。

1、休んで戻る。心身が削れているだけなら、離れて回復すれば技術は残っている。資格は消えない。

2、業界内で環境を変える。同じ美容師でも、サロンの経営方針で労働環境はまるで違う。歩合の作り、休日、教育の空気。あなたが嫌いなのは仕事か、いまの店か。ここの切り分けは先にやる価値がある。

3、隣接職種へ移る。アイリスト・ネイル・美容部員・メーカーの営業やインストラクター。手先と美容の知識を持ったまま、働き方だけ変える道だ。

4、業界の外へ出る。私が選んだ道になる。ゼロからに見えるが、後述の通りゼロではない。

どれを選んでも、修業した年月が消えるわけではない。もったいないを人質に、限界の環境へ残る必要はないんよ。ブラック環境からの辞め方の実務はブラック企業の辞め方 完全版にまとめてある。

外へ出る場合。サロンで身についたものは通用する

業界の外に出る場合の不安、「自分には美容しかない」に答える。サロンワークで身につくものは、外の市場で普通に売れる。

  • 対人力|初対面の客と会話を続け、要望を聞き出し、満足させる。これを毎日やってきた人材は、販売・営業・サポート職で最初から強い
  • 体力と立ち仕事の耐性|労働の基礎体力として、どの現場でも評価される
  • 提案と手仕事の感覚|似合わせの提案は、要望のヒアリング×プロの提案という、営業の基本動作そのものだ

私の場合、Webスクールで学んだ技術に、接客で身についた「相手の要望を聞いて形にする」感覚が乗って、未経験からの転職が成立した。技術は道具で、土台はサロンで出来ていたのだと後から分かった。

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学び直すなら。私の時代より、条件は良くなっている

私は50万円を全額自腹でスクールに払った。当時は制度を知らなかったからだ。いまは違う。

教育訓練給付金という制度があり、対象講座なら受講費用の一部(条件を満たせば最大で8割)が戻る。IT・Web・医療事務・簿記など、美容師からの転身先になりうる分野の講座が対象に含まれている。制度の全体は教育訓練給付金の使い方に、8割給付の条件は80%給付の条件に書いた。

注意も1つ。スクールは通えば転職できる魔法ではない。私の50万円が回収できたのは、学んだ後に動いたからで、通っただけで人生が変わったわけではない。給付金は、方向を決めた人の追い風であって、方向の代わりにはならない。

最後に、あの頃の自分に言いたかったことを書いておく。業界の常識は、世界の常識ではない。休めないのも、無給の練習も、あの環境の中でだけ「当たり前」だった。外に出て初めて、あれが異常だったと分かった。いま限界のあなたに必要なのは、根性の追加ではなく、外の物差しだ。この記事が、その1本になれば十分だわ。

あわせて検索される疑問に、先に答えておく

奨学金やスクールの返済が残っていて辞められません

返済は辞められない理由ではなく、次の収入計画の変数として扱う。美容の学費の返済が残ったまま業界を出た人は珍しくなく、転職先の給与から返済を組み直せば済む話だ。むしろ低賃金の環境に残り続ける方が、返済は長引く。金額と期間を紙に書いて、いまの給料と転職後の想定給料で返済年数を比べてみると、感情の話が算数の話に変わる。

アシスタントのうちに辞めるのと、スタイリストになってから辞めるのはどちらがいいですか

外の世界に出る前提なら、スタイリストの肩書きを待つ必要はない。異業種の採用で見られるのは役職ではなく、接客の実地経験と若さだからだ。デビューまでの我慢の年数を、外での積み上げに使う方が合理的な場面は多い。一方、業界内で環境を変える・隣接に移る場合は、スタイリスト経験の有無で選択肢が変わる。出口の方向を先に決めてから、タイミングを決める順番だ。

よくある質問

美容師を辞めた後、どんな仕事に就く人が多いですか?

販売・営業・美容部員、隣接のアイリスト系、事務・IT系への転身が定番だ。対人力と体力がどの道でも土台になる。

辞めたいのは甘えでしょうか。

低賃金・長時間・休めない環境での消耗は環境の問題だ。私も1年で離れたが、あれは逃げではなく撤退だった。

手に職があるのに辞めるのはもったいなくないですか?

技術と資格は辞めても消えない。戻る選択肢を保持したまま外を試せる。もったいないを理由に限界の環境へ残る必要はない。

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