新しい職場で、名前を間違えて覚えられた。「さいとうさん」ではなく「さいとうさん」——濁点の位置が違う。訂正のタイミングを逃し続けて、もう2週間。今さら言い出せない。

言い出せる。訂正の気まずさは3秒で終わる。放置の気まずさは、在籍している限り続く。この損得だけ握って、軽く直しに行こう。言い方の型を場面別に書く。

この記事の要点

  • 訂正は早いほど軽い。相手のミス指摘でなく、情報提供の形で出す
  • 言い方は自分側に寄せる。「紛らわしくてすみません、◯◯です」
  • 放置の実害は呼び名だけでなく、書類・メール・社内システムに広がる
  • 数ヶ月後でも直せる。正式表記が見える場面に乗せると自然だ

なぜ早く直すべきか。実害は呼び名の外に広がる

名前の間違いを放置する実害は、呼ばれ方の違和感だけでは済まない。

  • 社内の紹介で誤りが再生産される。間違えて覚えた人が、他の人にあなたを紹介するたび、誤った名前が増殖する
  • 書類・システムに転記される。口頭の誤りが、座席表・共有名簿・議事録に文字として定着し始める
  • 訂正コストが在籍日数に比例して膨らむ。1週間目の訂正は1人への3秒、半年後の訂正は部署全体への周知になる

つまりこれは、気まずさを我慢するかどうかの話ではなく、誤情報の拡散を早期に止めるかどうかの実務だ。そう捉えると、訂正への腰が軽くなる。

言い方の型。自分側に寄せて3秒で終える

訂正の言葉は、相手の間違いを正す形でなく、自分の名前が紛らわしいという形に寄せる。相手の面子を削らないのが、円滑さの核だ。

呼ばれた直後に直す(ベスト)。

「あ、すみません、◯◯(正しい読み)です。紛らわしいですよね」

笑顔で軽く。この段階なら、相手も「ああ失礼!」で終わり、次から直る。

上司・目上に対して。

「申し遅れておりました。◯◯と読みます。読みにくい名前でして」

取引先に対して。取引先の場合、相手の社内資料にまで誤りが広がる前に直す価値が特に高い。名刺やメール署名を指しながらだと自然だ。

「名刺の表記の通り、◯◯と申します。よく間違えられまして」

共通のコツは2つ。訂正は1回、その場では1人に(大勢の前での訂正は相手に恥をかかせる)。そして直った後は蒸し返さない。以後まだ間違える人には、その都度軽く同じ型で返せばいい。

放置してしまった後の直し方。きっかけに乗せる

数週間〜数ヶ月放置した場合、いきなりの訂正は唐突に感じられる。正式表記が視界に入る場面に乗せると、自然に出せる。

  • メールの署名を指す。「署名の通り、実は◯◯と読みまして。タイミングを逃して言い出せずにいました。すみません」
  • 書類・名簿の確認時に出す。入社関係の書類、共有名簿の更新、年末調整。名前を扱う事務の場面は、訂正の絶好の乗り物だ
  • 新しい人が入ったタイミングで出す。自己紹介のやり直しが発生する場面は、正しい読みを全体に再インストールできる

「言い出せずにすみません」と自分の詫びを添えるのがポイントになる。相手は「いやいや、こちらこそ」と返しやすく、気まずさが3秒で成仏する。

新しい職場での小さな違和感を言い出せない悩みは、名前に限らず起きる。職場に馴染む時期の全般的な構え方は中途入社で馴染めない時で書いた。小さな訂正を出せる関係を早く作ることが、馴染みの速度そのものでもあるんよ。

予防の仕込み。初日の自己紹介で読みを立たせる

これから入社する人・異動する人向けに、予防も書いておく。間違えられやすい名前の人は、初日の自己紹介で読みを先に立たせる。

「◯◯と申します。◯◯(誤読されやすい読み)とよく読まれるのですが、◯◯です。覚えにくいので、お気軽に聞き返してください」

誤読パターンを自分から言うと、記憶への残り方がまるで違う。メール署名にふりがなを入れる、チャットツールの表示名に読みを併記する、という仕組み側の予防も効く。初日の挨拶の全体は初出社の挨拶が担当だ。

なお、逆にあなたが相手の名前を間違えた場合の対処は、口頭なら即訂正、メールなら宛名を間違えた時の3段階で書いた通りになる。名前は、間違えた側の3秒の訂正で済む世界に、双方から寄せていくのが一番平和だ。

よくある誤解

「一度定着した呼び名を直すのは、相手に恥をかかせる行為だ」。恥をかかせるのは、大勢の前での指摘や、責める調子の訂正だけだ。1対1で、自分側に寄せた3秒の訂正は、相手にとっても「早く教えてもらえて助かった」に分類される。後で第三者経由で気づかれる方が、よほど相手に恥をかかせる。

「些細な違いだから、我慢すれば済む話だ」。名前は、あなたのアイデンティティの最小単位だ。間違った名前で呼ばれ続ける小さなストレスは、蓄積すると職場への所属感をじわじわ削る。些細だからこそ、3秒で直して消すのが正しい扱いになる。

よくある質問

訂正したのに、まだ間違え続けてくる人がいます

悪意でなく、記憶の上書きに時間がかかっているだけのことが大半だ。その都度、同じ軽い型で「◯◯です」と返し続ける。3回目くらいで定着する。イライラを声に乗せないことだけ守れば、関係は削れない。

ニックネームや略称で呼ばれるのが嫌です。これも訂正していいですか?

いい。呼ばれ方の希望を伝えるのは正当な要望だ。「◯◯さんと呼んでいただけると嬉しいです」と、希望の形を示す言い方にすると角が立たない。職場での呼ばれ方は、あなたが決めていい領域だ。

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