求人票はきれいに書いてある。面接の雰囲気も悪くない。だが、入ってすぐ辞める人が多い会社なのかどうかが分からない。
離職率は、その不安に対する最も直接的な指標になる。ただし公開している企業は限られるし、数字が低ければ安心とも限らない。調べ方と、数字の読み方を分けて書く。
この記事の要点
- 上場企業なら有価証券報告書から推測できる。平均勤続年数が手がかりだ
- 数字が低い理由には「辞められない」も含まれる
- 見るべきは数字より、どの層がどう辞めているか
- 面接では「配属先で直近1年に何人」と具体的に聞く
調べる場所は4つある
順番に見ていく。
1、有価証券報告書(上場企業)
上場企業は有価証券報告書を公開しており、従業員数と平均勤続年数が記載されている。金融庁のEDINETや、企業のIRページから見られる。
平均勤続年数が短い企業は、人の入れ替わりが速いと読める。ただし、急成長で採用を増やしている企業も平均勤続年数は下がるため、従業員数の推移とセットで見る必要がある。
- 従業員数が増えていて、勤続年数が短い → 採用を拡大している可能性
- 従業員数が横ばいで、勤続年数が短い → 入れ替わりが起きている可能性
2、就職四季報(新卒採用を行う企業)
新卒の3年後離職率を掲載している企業がある。中途採用の実態とは別だが、企業の傾向を知る材料にはなる。図書館でも読める。
3、厚生労働省の公表データ
新規学卒者の離職状況が業界別に公表されている。個別企業の数字ではないが、その業界の水準が分かる。
「離職率30%は高いのか」は、業界の水準を知らないと判断できない。宿泊・飲食、生活関連サービス、教育・学習支援などは業界全体として高めに出る傾向がある。業界の水準と比べて、その企業がどうかを見る。
4、企業の採用ページ・報告書
自主的に開示する企業が増えている。開示しているという事実そのものが、1つの情報になる。数字に自信がなければ普通は載せない。
数字が低ければ安心、ではない
ここが本題になる。離職率が低い理由は、1つではない。
- 働きやすいから辞めない — 望ましい状態
- 他に行き場がなくて辞められない — 専門性が身につかず、市場価値が上がらない場合
- 年齢層が高く、転職しにくい — 若手が入ってこない場合
- 辞める前に人が入ってこない — そもそも採用していない場合
逆に、離職率が高くても問題ない場合がある。独立や次のキャリアへ送り出す前提の業界(コンサル、広告、一部のIT)では、数年で卒業するのが標準の使い方になっている。
だから数字そのものより、どの層がどういう理由で辞めているかを見る。ここを埋める方法が次になる。
数字の外側を埋める。3つの経路
経路1、口コミで退職理由を読む。在籍者と退職者の投稿から、辞めた理由の傾向が読める。
*クリックすると公式サイトが開く。企業の口コミが見られるサービスで、無料で登録できる。*
登録後の流れ|① 無料登録する(数分) → ② 気になる企業名で検索する → ③ 在籍者・退職者の投稿を読む
読み方の注意は転職会議の口コミの読み方に書いた。辞めた人が書く場所なので、評価が下に偏る前提で読む。見るべきは点数ではなく、同じ不満が複数の投稿で繰り返されているかになる。
経路2、担当に紹介実績を聞く。エージェント経由なら、その企業に過去に人を送っているか、定着しているかを聞ける。
*クリックすると公式サイトが開く。登録後に担当から連絡が来て、求人の実態から相談できる。*
登録後の流れ|① Web入力で登録(数分) → ② 担当から連絡が入り、面談の日程を決める → ③ 気になる企業の紹介実績を聞ける
経路3、求人の出方を見る。同じポジションの求人が長期間、繰り返し掲載されている場合、決まらないか、決まっても抜けているかのどちらかになる。求人票から読み取る方法は求人票の読み方にまとめた。
面接での聞き方。全社ではなく配属先を聞く
「離職率は何%ですか」は、答えにくい質問になる。会社として把握していない場合もあるし、数字を出しにくい空気もある。
具体的に聞く方が、答えが返る。
- 「配属予定の部署で、直近1年に何人が入社して、何人が退職しましたか」
- 「このポジションは、増員ですか。欠員の補充ですか」
- 「前任の方は、どういう理由で異動または退職されましたか」
この3つは、全社の平均より実態に近い。そして答えにくい質問でもないため、普通は返ってくる。
返ってこない場合、あるいは明らかに濁された場合、その反応が情報になる。質問自体を嫌がられたなら、それは入社後に質問しにくい職場だという予告でもある。
会社選びの基準の全体像はホワイト企業の見分け方 完全版にまとめてある。
数字を見る前に、自分の基準を決めておく
最後に、順番の話をする。
離職率を調べても、判断の基準がなければ数字は使えない。先に決めておくのは、自分が何を優先するかだ。
- 長く勤めたいのか、数年で経験を積んで動きたいのか
- 安定を取るのか、成長速度を取るのか
前者なら離職率の低さが重要になり、後者なら高くても問題にならない。同じ数字が、人によって別の意味を持つ。
基準を持って初めて、数字は判断材料になる。基準がないまま数字だけ集めると、不安が増えるだけで動けなくなるわ。
あわせて検索される疑問に、先に答えておく
非上場の中小企業は、どう調べればいいですか
有価証券報告書がないため、公開情報は限られる。使えるのは口コミサイトと、求人の出方、そしてエージェント経由の情報になる。加えて、面接で会社の人数構成を聞く方法がある。「社員数と、そのうち勤続5年以上の方は何割くらいですか」。この質問なら答えやすく、実質的に定着の状況が分かる。中小企業ほど、面接での質問が最大の情報源になる。
離職率が高い業界を避けるべきですか
一律に避ける理由はない。業界として高めに出る領域でも、その中で条件のいい会社は存在する。避けるべきは業界ではなく、その業界の中で条件が下位の会社になる。だから業界の平均を知った上で、その企業が平均より上か下かを見る。業界全体を避けると、選択肢が過度に狭くなるんよ。
入社してから離職率が高いと気づいた場合、どうすればいいですか
まず、自分が辞めたいのかどうかを分けて考える。周りが辞めていることと、自分が合わないことは別の問題になる。人の入れ替わりが速い環境でも、自分の業務が積み上がっているなら残る価値がある。一方で、辞める人が増えて業務が集中し、自分の負荷が上がっているなら、それは環境の悪化として扱っていい。判断の材料は、周りの動きではなく自分の状態だ。
よくある質問
企業の離職率はどこで調べられますか?
上場企業は有価証券報告書、新卒採用企業は就職四季報、業界水準は厚労省の公表データ、あとは企業の自主開示になる。
離職率が低ければ安心ですか?
そうとは限らない。辞められない、年齢層が高いといった理由もある。どの層がどう辞めているかの方が判断に使える。
面接で離職率を聞いても大丈夫ですか?
「配属予定の部署で直近1年に何人が入社して何人が退職したか」と具体的に聞く方が、答えが返り実態にも近い。
会社選びのチェックリストをLINEで無料配布中
面接で聞く質問と、口コミの読み方をまとめた資料を、公式LINEで無料配布している。数字は、基準を持った人にしか使えないんよ。

