AIに文章を書かせると、2つの問題が必ず出る。
自分の文体にならない。そして、書いてほしくないことを書く。
毎回の指示で「文体はこうで、これは書くな」と伝えるのは、10記事までなら成立する。200記事では成立しない。
私はこのメディアの制作をClaude Codeに任せていて、文体と禁止事項はCLAUDE.mdというルールファイルに固定している。毎回の指示ではなく、常に読み込まれる憲法として置く形だ。この記事では、そこに何を書いて、何が起きたかを運用者として書く。
なおCLAUDE.md自体の仕様はAnthropicの公式ドキュメントにある。この記事は仕様解説ではなく、非エンジニアの運用記録だ。
この記事の要点
- 毎回の指示は揮発する。ルールファイルは持続する
- 構成は3ブロック。役割と文体・禁止事項・作業手順
- 一番効くのは禁止事項の列挙。良い文章の定義より確実だ
- ルールは破られる前提で、自動検査とセットで運用する
なぜ指示ではなくルールファイルなのか
会話型AIを使っている人なら、この経験があるはずだ。
最初に丁寧に前提を伝えたのに、会話が長くなると崩れてくる。文体が戻る。禁止したはずの言い回しが復活する。
原因は単純で、毎回の指示は、その場限りの依頼だからだ。新しい作業を始めれば、前の依頼の記憶は薄れる。
ルールファイルは違う。作業のたびに自動で読み込まれる、常設のルールになる。私の感覚では、これは部下への口頭指示と、部署のマニュアルの違いに近い。口頭指示は忘れられるが、マニュアルは毎回参照される。
同じ前提を3回コピペしたら、ルールファイルに昇格させる。私の運用はこの一言に尽きる。
私のルールファイルの構成。3ブロック
実物の構成をそのまま書く(全文は伏せるが、骨格は再現できるはずだ)。
ブロック1。役割と文体。
「あなたは◯◯の編集部だ」という役割から始めて、一人称、読者への呼びかけ、語尾のバリエーション、使う記号まで指定している。ポイントは、抽象的な形容詞を使わないことだ。「親しみやすく」ではなく「語尾は〜だ・〜なんよ・〜だわを混ぜる」。AIは形容詞を独自解釈するが、具体例は解釈の余地がない。
ブロック2。禁止事項。ここが本丸だ。
- 使わない言葉のリスト(私が嫌いな表現、AIが多用する定型句)
- 書いてはいけない事実の線引き。私の経歴で、書いていい範囲と絶対に書いてはいけないこと(使っていないサービス、経験していない業界、創作の数字)を列挙している
効き方の実感として、「良い文章を書け」系の指示より、禁止の列挙の方が圧倒的に確実だ。良さの定義は曖昧だが、禁止は白黒が付く。
ブロック3。作業の手順。
書く前に既存記事の形式を確認すること、事実確認ができないことは書かないこと、完了時に何を報告するか。作業の型を固定すると、成果物のばらつきが減る。
<!-- 撮影プレースホルダー[撮2]: CLAUDE.mdの実物スクショ(経歴の禁止事項の節は伏せた画角)をここに挿入 -->
ここまでのまとめ
・毎回の指示は揮発する。ルールファイルは持続する
・構成は3ブロック。役割と文体・禁止事項・作業手順
・一番効くのは禁止事項の列挙。良い文章の定義より確実だ
ルールは破られた。だから検査とセットにした
ここが一番伝えたい部分だ。ルールファイルを書いても、AIは完全には従わない。
実際に起きたことを2つ書く。
- 禁止していた経歴の創作が、それでも起きた。ルール導入後も、説得力を優先したAIが体験談を補った。この事故の全容はAIが私の経歴を捏造した話に書いた
- 量産が続くと、禁止語がじわじわ戻ってきた。1本ずつは守るのに、大量生産の中で数カ所ずつ混入する
だから私の運用は二段構えになっている。
- ルールファイルで事故の頻度を下げる(発生率を減らす)
- 自動検査スクリプトで、漏れを外に出さない(禁止語・経歴の禁止表現・壊れリンクを機械的に検出する)
ルールは予防で、検査は検疫だ。どちらか片方では実用にならなかった。両方揃えてから、同じ事故の再発は止まっている。
非エンジニアがルールファイルを作る手順
自分用に作りたい人のために、手順を最短で書く。
- 自分の過去の文章を3〜5本用意する。一番自分らしいと思うものを選ぶ
- AIに「この文章の文体の特徴を、箇条書きのルールにして」と頼む。一人称、語尾、リズム、記号の癖が言語化されて返ってくる
- 返ってきたルールを自分で直す。違うと感じる項目を消し、絶対に守ってほしい禁止事項を足す
- 書いてはいけない事実を列挙する。経歴・数字・体験の線引き。ここだけは自分にしか書けない
- ファイルとして保存し、作業のたびに参照させる
3と4が人間の仕事だ。文体の言語化はAIが得意だが、事実の線引きはあなたにしかできない。
そして、運用しながら育てる。AIの出力に違和感を持つたびに、その違和感をルールの1行に変換する。私のルールファイルも、最初から完成していたわけではなく、事故と違和感の数だけ行が増えた。
実際に書いているルールの例文。形式ごと真似していい
抽象的な説明だけだと作りにくいはずなので、私のルールファイルから、公開できる範囲の実例の形式を示す。
文体の指定は、こういう粒度で書いている。
- 一人称は「私」、読者への呼びかけは「あなた」
- 断定調。文末は複数のバリエーションを混ぜて単調を避ける
- カッコは半角の「」を使う。二重引用符は使わない
禁止の指定は、理由を付けずに列挙する。
- 禁止語のリスト(具体的な単語を並べる)
- 「〜することが重要です」「いかがでしたか」等の定型文の禁止
- 経歴で書いていい事実の列挙と、絶対に書いてはいけない項目
ポイントは、理由を書かないことだ。理由を書くと、AIが理由を解釈して例外を作り始める。「この場合は理由に当たらないから使ってもいい」という判断をさせない。ルールは問答無用の形式にする方が、機械には伝わる。
もう1つ、運用のコツがある。ルールファイルは短く保つ。何でも足していくと、重要なルールが薄まる。私は「3回同じ違反を見たら足す。半年参照されなかったら消す」という基準で棚卸ししている。ルールも記事と同じで、書きっぱなしでは劣化する。
ルールファイルは、自分の言語化でもあった
最後に、予想していなかった副産物の話をする。
ルールファイルを書く作業は、自分の文章とは何か、自分が何を絶対に譲らないかを言語化する作業だった。
語尾の癖、嫌いな表現、書いていい事実の範囲。普段は無意識でやっていることを、他人(AI)に伝わる形まで具体化する。これをやった後、自分で書く文章も変わった気がしている。気がしている、という以上の証明はできないが。
AIに文体を任せることは、自分の文体を手放すことではなかった。むしろ、初めて自分の文体を定義することだった。この感覚は、やった人にしか伝わらないかもしれない。
道具の選び方はChatGPTで足りる人、Claude Codeが要る人、運用の全体像は2週間で200記事のメディアを作った話に書いた。
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よくある質問
CLAUDE.mdとは何ですか?
Claude Codeが作業のたびに自動で読むルールファイルだ。仕様はAnthropicの公式ドキュメントで確認してほしい。この記事は運用の記録になる。
ルールファイルには何を書けばいいですか?
役割と文体・禁止事項・作業手順の3ブロック。特に効くのは禁止事項の列挙で、良い文章の定義より確実に伝わる。
ルールを書けばAIは完全に従いますか?
従わない。量産の中で禁止表現は戻ってくる。ルールで頻度を下げ、自動検査で漏れを止める二段構えで初めて実用になる。
AI運用の資料をLINEで配布中
文体ルールの作り方シートをLINEで無料配布している。AIに任せる前に、自分の譲れない線を言語化してほしい。




