「◯◯支店の課長で行ってもらいたい」

栄転の打診だ。評価されている証拠で、給与も上がる。なのに、素直に喜べない。

子どもの学校がある。家を買ったばかりだ。親の介護が始まりそうだ。あるいは単純に、その役職をやりたくない。

先に答えを言う。断ることはできる。ただし代償はある。両方を正確に見た上で決めろ。

この記事の要点

  • 断ること自体は可能。ただし転勤命令には一定の拘束力がある
  • 代償の大きさは、会社の文化で天と地ほど違う
  • 断る前に確認すべきは3点。規則・前例・代替案
  • 伝え方は3点セット。感謝・具体的な事情・代替の貢献

私のDMに繰り返し届く形

まとめるとこうだ。

「地方の支店への異動を伴う昇進の話が来ました。会社としては評価してくれているのだと思います。ただ、子どもが小学校に上がったばかりで、妻も地元で働いています。単身赴任も考えましたが、正直やりたくありません。断ったら今後のキャリアはどうなるのか、それが怖くて返事ができずにいます」

「断ったら今後のキャリアはどうなるのか」。

この不安が、判断を止めている一番の要因だ。だから、実際に何が起きるのかを先に書く。

前提。断ることは可能だが、拘束力の話がある

法的な整理を、正確な範囲で書く。

就業規則や労働契約で転勤の可能性が定められている場合、会社の転勤命令には一定の拘束力がある。多くの正社員の契約には、この定めが入っている。

ただし、命令が無制限に有効というわけでもない。業務上の必要性がない場合や、労働者に通常受け入れるべき程度を著しく超える不利益がある場合には、命令が権利の濫用として無効になり得るという考え方が判例上ある。

育児・介護の事情については、会社に配慮を求める根拠がある。育児介護休業法には、転勤に際して子の養育や家族の介護の状況に配慮すべき旨の定めが置かれている。

だから、最初にやることは1つだ。就業規則を読む。

  • 転勤・異動に関する条項があるか
  • 勤務地限定のコース(地域限定社員)への変更制度があるか
  • 育児・介護に関する配慮の規定があるか

規則を読んでから話す人と、読まずに感情で断る人では、話し合いの結果がまったく違う。

なお、この記事は一般的な整理であって、個別の事案の法的判断ではない。争いになりそうな場合は、労働局の総合労働相談コーナー(無料)に相談してほしい。

断った後に何が起きるか。会社の型で分かれる

ここが一番知りたいところのはずだ。正直に書くと、会社によって天と地ほど違う。

型A。次の機会に回されるだけの会社。

「今回は事情があるなら仕方ない」で終わる。数年後に別の機会が来る。育児・介護など納得されやすい理由の場合、この扱いになる会社は珍しくない。

型B。一度断ると二度と声がかからない会社。

「会社の期待に応えない人」というラベルが貼られる。昇進のルートから静かに外れる。明示的な処分はないが、以降の打診が止まる。

型C。露骨に不利益な扱いをする会社。

評価を下げる、閑職に回す。これは違法な取り扱いに当たる可能性がある領域だ。この兆候が出たら記録を残し、相談窓口を使ってほしい。

自分の会社がどの型かは、前例を見れば分かる。

  • 過去に転勤や昇進を断った人はいるか
  • その人はいま、どういうポジションにいるか

社内の誰かに聞ける関係があるなら、そこが最も確度の高い情報源になる。答えが見つからない場合は、型Bを想定して判断するのが安全だ。

そもそも今回の異動が本当に栄転なのかを確かめたい人は、栄転と左遷の見分け方で4つの実態から判定できる。肩書が上がっていても、決裁の範囲が狭まる異動は実質的に別物だ。

断る前に確認すべき3点

1。就業規則と自分の契約。上に書いた通り。読まずに断らない。

2。社内の前例。断った人のその後。これが会社の型を教えてくれる。

3。代替案が存在するか。

これが一番使える。断るか受けるかの二択ではなく、第三の案を持っていく。

  • 単身赴任+一定期間の期限を設ける(「2年なら」)
  • 勤務地限定のコースへの変更
  • 別の形での役割拡大(同じ拠点でのマネジメント)
  • 時期の延期(「子どもが小学校を卒業する3年後なら」)

代替案があると、話が「拒否」から「調整」に変わる。これが決定的に大きい。

伝え方。3点セットで話す

角を立てない伝え方の型を置く。

1。評価への感謝を先に置く。

「このようなお話をいただき、ありがとうございます。評価いただいていることは本当にありがたく思っています」

2。断る理由を、具体的な事情として述べる。

「子どもが小学校に上がったばかりで、妻も地元で就業しております。家族での転居も単身赴任も、現時点では現実的に難しい状況です」

ポイントは、不満や批判を理由にしないことだ。「その役職はやりたくない」「あの支店は評判が悪い」は、口に出した瞬間に関係が壊れる。事情を理由にする。

3。代わりに貢献できる形を提示する。

「現在の拠点で、後進の育成や◯◯の領域で貢献する形であれば、より責任を持って取り組めます。また、状況が変われば改めてご相談させてください」

この3つ目があるかないかで、受け取られ方が変わる。意欲の欠如ではなく、事情による判断として扱われる。

断った後の身の振り方も、準備しておく

現実的な話をする。型Bや型Cの会社だった場合、断った後のあなたの社内での位置は変わる。

だから、断ると決めた時点で、外の選択肢を持っておくのが合理的だ。

これは「辞めろ」という話ではない。外に選択肢がある状態で社内に留まる人と、ここしかないと思って留まる人では、その後の消耗がまったく違う。

「いつでも動ける」という状態そのものが、社内での立ち回りを楽にする。

*クリックすると公式サイトが開く。経歴を入力すると、その場で想定年収の目安とスカウトの可否が表示される。*

受けた後の流れ|① 経歴を入力する(10分前後) → ② その場で結果が表示される → ③ 経歴を置いておけばスカウトが届く

ミイダスで外の評価を測っておく

管理職の帯で動く可能性があるなら、待つ型の網も張っておくといい。

*クリックすると公式サイトが開く。経歴を登録しておくと、ヘッドハンターや企業からのスカウトが届く。*

登録後の流れ|① 経歴を登録する → ② 公開範囲を設定する(現職企業をブロックできる) → ③ スカウトを待つ

リクルートダイレクトスカウトで網を張っておく

こういう人には不要だ。型Aの会社だと確認できていて、断っても関係が変わらない見込みが立っている人。その場合は素直に断って、次の機会を待てばいい。

私の話も1つ書いておく

私は4回目の転職で、年収を下げてリモートと制度のある会社を選んだ。その時点で、年収と役職を上げる道からは自分で降りている。

周囲からは「もったいない」と言われた。実際、収入は減った。

だがその選択の3年後、私は1年の育休を取り、沖縄に移住してフルリモートで働いていた。当時の選択がなければ、どちらも起きていない。

キャリアの正解は、上がることだけではない。この実感は、いまでも変わっていない。年収を下げる選択の考え方は年収を下げて正解だった話、地方に移って働く形の現実は地方移住とリモートワークの現実に書いた。

とはいえ、私は栄転を断った経験そのものは持っていない。転職という形で、そもそも土俵を降りた側だ。社内で断って残り続ける難しさを、私は当事者として知らない。その部分は、この記事では正直に持っていないと書いておく。

だから、この記事で断定するのは1点だけだ。規則と前例と代替案の3つを確認してから答える。返事を急がされても、この3つが揃うまでは即答しなくていい。

3分で診断市場価値タイプ診断——社内の役職と関係なく、市場であなたの売り物が何かを8問で判定する。無料・登録不要。

よくある質問

栄転や昇進は断れますか?

断ること自体は可能だ。ただし就業規則等で転勤が定められている場合、命令には一定の拘束力がある。育児・介護の事情には配慮を求める根拠がある。まず規則を確認しろ。

栄転を断ると出世コースから外れますか?

外れる可能性はあるが、会社の文化で大きく変わる。次の機会に回すだけの会社もあれば、二度と声がかからない会社もある。社内の前例を確認するのが最も確度が高い。

断る場合、どう伝えるのが角が立ちませんか?

感謝を先に、理由は具体的な事情として、代わりに貢献できる形を提示する。この3点セットなら、意欲の欠如ではなく事情による判断として受け取られる。

キャリアの整理はLINEで。転職戦略シートを無料配布中

キャリアの判断シートをLINEで無料配布している。断るにしても受けるにしても、外に選択肢がある状態で決めてほしい。

LINEで無料の転職資料を受け取る