転職先から「前職の源泉徴収票を出してください」と言われた。だが辞めた会社に頼んでも、なしのつぶて。嫌がらせなのか、怠慢なのか、とにかく紙が来ない。

先に力関係を言う。源泉徴収票の交付は所得税法上の会社の義務で、退職後1ヶ月以内が決まりだ。しかも税務署という強力な援軍を呼べる。渋る会社への手順を、効く順に書く。

この記事の要点

  • 交付は法的義務。退職後1ヶ月以内の発行が決まりで、罰則もある
  • 手順は3段。記録に残る依頼→税務署への不交付の届出→確定申告での自力精算
  • 税務署の行政指導が入ると、大半の会社は発行する
  • 年末調整に間に合わなくても、確定申告で精算できるので詰まない

前提。なぜ源泉徴収票が要るのか

転職先が前職の源泉徴収票を求めるのは、年末調整であなたの1年分の収入と納税を合算して精算するためだ。1月から退職日までの前職の給与情報がないと、転職先は正しい年末調整ができない。必要になる場面の全体は源泉徴収票は転職でいつ必要かで書いた。

つまりこの書類が来ないと、あなたの税の精算が宙に浮く。だから法律は交付を会社の義務にしていて、退職後1ヶ月以内の交付を定めている。あなたが頼み込んでもらうものではなく、会社が出さなければならないものだ。この認識から始めると、以降の動きが変わる。

手順1。記録の残る形で依頼する

電話で頼んで流されているなら、メールか書面に切り替える。

「◯月◯日付で退職いたしました◯◯です。源泉徴収票がまだ届いておりませんので、交付をお願いいたします。転職先の年末調整で◯月◯日までに必要なため、◯日までにご送付いただけますと幸いです。お手数ですが、よろしくお願いいたします」

期限を明記するのがポイントだ。そしてこのメールは、次の段階(税務署への届出)で「請求したのに交付されなかった」ことを示す証拠になる。1〜2週間待って動きがなければ、遠慮なく次へ進む。

手順2。税務署に「不交付の届出書」を出す

ここがこの問題の本丸だ。税務署には「源泉徴収票不交付の届出書」という専用の手続きがある。会社が交付義務を果たさない時に、従業員が税務署へ届け出る仕組みだ。

  • 届出書は国税庁のサイトから入手できる。記入は、会社の情報・自分の情報・請求の経緯程度で難しくない
  • 給与明細があれば添付する(収入額の裏付けになる)
  • 提出先は自分の住所地でなく、会社の所在地を管轄する税務署でも、自分の管轄でも相談に乗ってくれる

届出が受理されると、税務署から会社へ行政指導が入る。税務署からの連絡を無視し続けられる会社はほとんどなく、この段階で発行されるのが大半だ。あなたが会社と直接やり合う必要は、ここから先はもうない。

離職票も併せて出し渋られている場合は、そちらはハローワーク経由の催促という別ルートになる(離職票をもらえない時で書いた)。窓口は違うが、行政を挟むと動くという構図は同じだ。

手順3。間に合わない場合は、確定申告で精算する

年末調整の期限までに間に合わなかったら、どうなるか。詰まない。翌年の確定申告(例年2月16日〜3月15日)で、自分で精算すればいい。

  • まず転職先には事情を正直に伝える。「前職に請求中で、税務署への届出も行っています」と言えば、事務としては通る話だ
  • 確定申告までに源泉徴収票が届けば、それを使って申告する
  • 最後まで届かない場合の申告方法(給与明細等での対応)は、税務署の窓口で相談できる。不交付の届出をしてある事実が、ここでも効く

年末調整に乗り遅れると損をした気分になるが、実際は精算のタイミングが数ヶ月ずれるだけで、払う税額も戻る税額も変わらない。焦りから会社への請求を諦める必要はまったくない。

会社が倒産していた場合

会社そのものが消えている場合は、依頼する相手がいない。この場合も道はある。

  • 破産管財人がいるなら、管財人に交付を依頼する。倒産処理中の会社の事務は管財人が引き継いでいる
  • 連絡先が完全に消えているなら、税務署に相談する。不交付の届出と給与明細で、確定申告の道筋を作ってもらえる

給料の未払いが絡んでいる場合は、給料が振り込まれない時の対処で書いた立替払制度の話と並行で進めることになる。

よくある誤解

「退職の仕方が悪かったから、発行を拒否されても仕方ない」。関係ない。交付義務は退職の経緯と無関係に発生する。円満でない退職だろうと、会社都合だろうと懲戒だろうと、源泉徴収票は出さなければならない。人質に取れる書類ではない。

「少額のアルバイト分だから、なくても問題ない」。年末調整・確定申告は全収入の合算が原則で、少額でも精算には要る。金額の大小で義務は消えない。

よくある質問

電子データ(PDF)で送られてきました。紙でなくても有効ですか?

本人が同意していれば電磁的な交付も認められている。転職先への提出も、多くはデータか印刷で通る。転職先の指定がある場合はそれに合わせ、紙の原本が必要と言われたら会社に書面での交付を求めればいい。

在職中の会社に今年の源泉徴収票を請求できますか?

在職中の分は年末調整の後(通常12月〜1月)に交付されるのが通常で、年の途中では発行されない。途中で必要な場合(住宅ローン審査など)は、給与明細や収入証明で代替するのが一般的だ。退職時だけは、1ヶ月以内交付のルールが動く。

転職の資料をLINEで無料配布中

書類請求のメールテンプレと、不交付時の対応フローチャートを公式LINEで無料配布している。渋る会社と消耗戦をやる必要はない。行政を呼べばいい。

LINEで無料の資料を受け取る