この評価はおかしい。正式に抗議したい。不服申し立てって、できるのか?やったら何が起きるのか?
現実を先に言う。申し立てで評価が覆る例は稀だ。それでも、出す意味は別の場所にある。制度と現実と、例外まで書く。
先に一文で。人事評価の不服申し立ては社内制度があれば可能だが覆る例は稀で、実利は記録と牽制にあり、労基署が動くのは報復査定や差別など違法性が絡む例外に限られる。
この記事の要点
- 申し立ての可否は会社の制度次第。公務員は制度化されている
- 評価の裁量は会社側に広く、覆る例は現実には多くない
- それでも出す意味は2つ。記録が残る・次回への牽制になる
- 労基署が動くのは違法性がある時だけ。裁量の不満は労働局へ
社内の経路。制度の有無をまず確認する
最初にやるのは、自分の会社に評価の苦情処理・再審査の制度があるかの確認だ。
- 就業規則・評価規程に、異議申し立てや苦情処理委員会の定めがないか読む
- 公務員は人事評価の苦情相談・苦情処理が制度として整っている。窓口が明示されているはずだ
- 制度がない会社では、①フィードバック面談での意見表明②人事のキャリア面談③上司の上司(二次評価者)への相談、が実質の経路になる
どの経路でも共通する作法は1つ。感情の抗議でなく、事実の照会として出す。「◯◯の実績が評価に反映されていないように見えます。評価の根拠をご説明いただけますか」。この形なら、制度がない会社でも受け止められる。
現実。覆る例は稀だ、それでも出す意味
期待値の調整をしておく。評価は会社の人事裁量の領域で、裁判でも裁量は広く認められてきた。申し立て1本で評価が覆る例は、現実には多くない。
それでも、記録に残る形の異議には2つの実利がある。
- 記録が残る|後に評価を理由とした不利益(降格・退職勧奨)が来た時、「当時から争っていた」記録は、あなたの武器になる
- 次回への牽制|異議を出す社員の評価は、次回から雑につけにくくなる。評価者の側に、説明可能性の意識が生まれる
つまり不服申し立ては、過去を覆す道具というより、未来の評価の質を上げる道具として働く。
外部窓口。労基署が動ける場合・動けない場合
「労基署に訴えてやる」の前に、管轄の整理をしておく。
労基署が動けない|評価の中身(AかBか・妥当か)そのもの。これは法違反でなく裁量の問題だからだ。
労基署・行政が動ける(違法性の例外)
- 評価を口実にした賃金の不払い(決まっていた賞与の一方的な不支給等)
- 報復査定|育休の取得・内部通報・労組活動への報復として評価を下げる行為は、不利益取り扱いとして法に触れる
- 差別的評価|性別・国籍・信条を理由にした査定
裁量への不満そのものは、労働局の総合労働相談コーナーが受け皿になる。無料で、あっせん(会社との話し合いの仲介)まで使える。1人で会社と向き合うのが不安な場合、社外の労働組合(ユニオン)に個人で加入して交渉を任せる道もある。
申し立ての実務。書き方の型
出すと決めたら、通りやすさより記録の質を優先して作る。
- 事実|「今期、◯◯を達成した(数字・証跡)」
- 評価との差分|「評価コメントには△△とあるが、上記の事実と整合しない」
- 求めること|「評価の根拠の説明と、事実にもとづく再確認を求める」
感情語(理不尽・不当・許せない)は全部削る。事実と差分だけの文書は、読み手の防御反応を最小にし、記録としての価値を最大にする。提出はメールか書面で、日付の残る形にする。
申し立てと並行してやること
不服申し立ては、選択肢の1つであって全部ではない。並行して、納得いかない時の4つの選択肢(説明・見せ方・制度外・市場)を動かしておく。特に、申し立てても変わらなかった場合の判断(低評価で辞めるのはありかの記事)は、申し立ての結果を待つ間に準備しておくと、どちらに転んでも動ける。
よくある誤解
「不服申し立てをしたら、目をつけられて余計に下げられる」。報復査定はそれ自体が違法性を帯びる行為で、記録に残る異議の後ほど、会社はやりにくくなる。むしろ記録なしの陰の不満の方が、静かに下げられ続ける危険が高い。
「弁護士を立てれば評価を覆せる」。評価の裁量そのものを法廷で覆すハードルは高い。弁護士が力を持つのは、違法性の例外(不払い・報復・差別)が絡む場合だ。まず自分のケースがどちらかを、無料相談で見立ててもらうのが順番になる。
よくある質問
評価の開示自体を拒まれています。開示させられますか?
評価結果の開示義務は法律で一律には定められておらず、会社の制度次第になる。ただし、評価が処遇(賃金)に連動する場合、その算定根拠の説明を求めることは正当な要求だ。処遇の説明という入口から求めると、応じられやすい。
公務員です。民間と何が違いますか?
公務員は人事評価制度と苦情処理が法令・規程で整備されており、申し立ての経路が明文化されている。窓口・期限が決まっているので、所属の人事担当か規程で確認して、期限内に出すことが最重要になる。
転職の資料をLINEで無料配布中
不服申し立て文書のテンプレ(事実・差分・求めることの3部式)を公式LINEで無料配布している。覆すためでなく、記録と牽制のために出す。それが申し立ての正しい使い方だ。


