転職の手続きに追われて、ふと思い出す。前の会社の企業型DC、何もしていない。あれはどうなるのか。放置でも年金なんだから大丈夫なのか。
先に言い切る。放置は6ヶ月で自動移換となり、運用停止・手数料の垂れ流し・期間の不算入という三重の損になる。財形の放置より、こちらの方がはるかに痛い。仕組みと手順を書く。
企業型DCとは、会社が掛金を出し、従業員が自分で運用する年金制度のことで、確定拠出年金の企業型を指す。
この記事の要点
- 退職から6ヶ月放置で、資産は現金化されて自動移換される
- 自動移換中は運用ゼロのまま、管理手数料だけ引かれ続ける
- 通算加入者等期間にも数えられず、受け取り開始が遅れうる
- 移す先は2択。転職先の企業型DCか、iDeCoの口座だ
放置の結末。自動移換の三重の損
企業型DCは、退職すると掛金の拠出が止まり、6ヶ月以内に資産の移し先を決めることがあなたの宿題になる。放置した場合の結末が自動移換で、資産は運用商品から売却され、現金の状態で国民年金基金連合会に移される。この状態の損は3つ重なる。
損1、運用が完全に止まる。現金のまま塩漬けで、増える可能性がゼロになる。年金資産の数年〜数十年の運用機会を、まるごと捨てる形だ。
損2、手数料だけ引かれ続ける。自動移換の際の手数料に加えて、毎月の管理手数料が資産から差し引かれ続ける。増えない資産から、確実に減る分だけが動く。
損3、通算加入者等期間に数えられない。受け取り開始できる年齢は加入期間の長さに関わるため、自動移換の期間はここに算入されず、老後の受け取り開始が遅れる要因になる。
つまり自動移換は、減り続ける・増えない・受け取りも遅れるの三拍子で、制度上いちばん選んではいけない置き場所になっている。
移し先の2択。あなたの転職先で決まる
対処はシンプルで、6ヶ月以内に次のどちらかへ移す。
転職先に企業型DCがある場合。入社手続きの際に「前職の企業型DCの移換をしたい」と伝え、転職先の制度へ資産を移す。手続きは会社経由で進み、あなたは書類の記入が中心だ。
転職先に制度がない場合(フリーランス・公務員等も)。iDeCo(個人型確定拠出年金)の口座を作って移す。金融機関を自分で選べるため、口座管理手数料の安さと商品の品ぞろえで選ぶ。手続きは、金融機関へ移換を申し込み、前職のDCの記録(加入者番号など、退職時の書類にある)を記入して返送する流れになる。
どちらも、完了まで1〜2ヶ月かかることがある。6ヶ月の期限は長く見えて、転職直後の忙しさの中では短い。退職が決まった時点で、移し先の当たりだけつけておくのが安全だ。
よくある誤解。「少額だから放置でいい」
「残高20万円くらいだし」という放置が一番多い。数字で見る。
自動移換の手数料と毎月の管理手数料を合わせると、放置の年数に応じて数千円〜万単位が確実に消えていく。少額の資産ほど、手数料の比率は重くのしかかる。しかも前述の通り、期間の不算入という金額に見えない損も同時に進む。
もう1つの誤解が「60歳前に引き出せばいい」だ。確定拠出年金は老後資金の制度で、中途の引き出し(脱退一時金)は、資産額や加入期間などの厳しい条件を満たす例外に限られる。基本は引き出せない前提で、だからこそ移して運用を続ける以外の正解がない。制度の細部は変わりうるため、最新の条件は運営管理機関や公的な案内で確認してほしい。
手続きの手順。今日やるのは2つだけ
重く見えるが、今日の作業は2つで終わる。
- 前職のDCの記録を確保する。退職時に届く(または届いた)「加入者資格喪失のお知らせ」系の書類に、記録関連の番号が書いてある。見当たらなければ前職の担当部署か、記録を管理する運営管理機関へ問い合わせる
- 移し先を決めて申し込む。転職先に制度の有無を聞く。なければiDeCoの金融機関を1つ選んで、移換の資料請求をする
あとは届いた書類を返送して、完了通知を待つだけだ。財形貯蓄と同じく(財形の転職時の扱いで書いた)、会社経由のお金は転職の時だけ自分の手続きを必要とする。退職金制度全体の中での位置づけは退職金の相場、手続きの流れの全体は退職後の手続きガイドが担当だ。
既に自動移換されてしまった人へ
6ヶ月を過ぎて、もう自動移換された人も、詰みではない。今からでもiDeCoや転職先の企業型DCへ移せる。移した時点で運用が再開し、手数料の垂れ流しが止まり、以後の期間は算入される。
自動移換されたかどうかは、国民年金基金連合会(特定運営管理機関)からの通知で分かるが、通知は住所変更をしていないと届かない。心当たりがあるのに通知の記憶がない人は、確定拠出年金の記録照会の窓口に問い合わせるところから始めればいい。放置の期間が何年あっても、動いた日から損は止まる。年金の話は、いつ始めても今日が一番早い日なんよ。
よくある質問
マッチング拠出や自分の掛金分も、同じように移換されますか?
企業型DCの口座内の資産は、拠出の内訳に関係なく一体として移換される。移換先での掛金の設定(iDeCoでいくら拠出するか等)は、移した後に自分で決め直す形になる。
運用商品はそのまま引き継がれますか?
引き継がれない。移換の際は一度売却して現金化され、移換先で商品を選び直す。移換のタイミングで運用の中身を見直す機会と考えればいい。
会社経由のお金の確認リストをLINEで無料配布中
DC・財形・持株会の退職時手続きを1枚にした表を、公式LINEで無料配布している。6ヶ月の期限は、忘れた人からお金を削っていく。今日、書類を探すところからだ。



