辞めた翌日から、何をすればいいのか誰も教えてくれない。役所に行けとは言われたが、何を持って、いつまでに、どこへ行くのか分からない。放っておくと損をするらしい、という不安だけがある。

やることは決まっている。期限が短い順に並べれば、迷う場面はほぼ消える。この記事は退職後の手続きの全体マップだ。詳細が要る項目は個別記事に分けてある。

この記事の要点

  • 順番は期限が短い順。健康保険・年金 → 失業手当 → 住民税 → 確定申告
  • 健康保険の任意継続は退職翌日から原則20日。ここが一番短い
  • 失業手当は離職票が届かないと始まらない。届かないなら会社に催促する
  • 次が決まっていて空白がないなら、大半は新しい会社がやってくれる

全体マップ。期限が短い順に並べる

退職後の手続きの順番は、次の4手にまとまる。

  1. 健康保険と年金の切り替え(退職翌日から14日以内)
  2. 失業手当の申請(離職票が届き次第ハローワークへ)
  3. 住民税の納付方法の確認(退職月で扱いが変わる)
  4. 確定申告(年内に再就職しなければ翌年2〜3月)
順番やること期限の目安窓口
1健康保険(任意継続を選ぶ場合)退職翌日から原則20日以内加入していた健康保険組合・協会けんぽ
1健康保険(国民健康保険を選ぶ場合)原則14日以内市区町村の役所
1国民年金への切り替え原則14日以内市区町村の役所
2失業手当の申し込み離職票が届き次第。受給期間自体に期限があるハローワーク
3住民税の支払い方法の確認退職月による会社・市区町村
4確定申告翌年の申告期間税務署

1が3つ並んでいるのが要点だ。ここだけは期限が短く、しかも選択を間違えると金額が変わる。

順番1|健康保険と年金。ここだけは急ぐ

退職した翌日から、会社の健康保険の資格は失われる。空白のまま病院に行くと、窓口で全額を払うことになる。

健康保険の選択肢は3つある。

  • 任意継続——前職の健康保険を継続する。期限は退職翌日から原則20日以内と最も短い
  • 国民健康保険——市区町村の窓口。原則14日以内
  • 家族の扶養に入る——収入の条件を満たせば保険料の負担がない

どれが安いかは人によって逆転する。任意継続は在職時の会社負担分も自分で払う形になるが上限がある。国保は前年の所得で決まるため、退職前の所得が高かった年の翌年は高くなりやすい。金額の比較手順と条件は退職後の健康保険は任意継続・国保・扶養のどれかに分けて書いた。

年金も同時に切り替える。会社員は厚生年金に入っているが、退職すると国民年金に切り替える届出が要る。こちらも原則14日以内だ。収入が減って納付が難しい場合は、免除や納付猶予の申請という道がある。未納のまま放置するのと、免除の申請をするのは、将来の扱いがまったく違う。払えないなら払えないと窓口で言うことだ。

やることは1回の役所訪問でまとめられる。国民健康保険と国民年金は同じ役所で手続きできる。任意継続を選ぶ場合だけ窓口が別になる。

順番2|失業手当。離職票が来ないと始まらない

失業手当(雇用保険の基本手当)の手続きは、離職票が手元に届いてからになる。ここが多くの人の詰まりどころで、会社から離職票が届かないと1日も進まない。2週間ほど経っても届かないなら、会社に催促していい。

金額と時期の決まり方は失業保険はいくら・いつからもらえるかに書いた。要点だけ言うと、自己都合か会社都合かで、受給開始の時期と給付日数の両方が変わる。離職票に書かれた離職理由は必ず確認してほしい。会社が付けた理由とあなたの認識が違うなら、異議を申し立てられる。ここを流すと数十万円の差になり得る。

受給が始まった後は、求職活動の実績を報告する義務がある。何が実績として認められるかはハローワークの求職活動実績の作り方にまとめた。

関連する疑問は個別に分けてある。

順番3|住民税。退職月で扱いが変わる

見落としが一番多いのがこれだ。住民税は前年の所得に対してかかる。つまり収入がなくなった年にも、去年の分の請求が来る。

会社員のうちは給与から天引き(特別徴収)されているが、退職するとこの仕組みが止まる。退職月によって、残りを最後の給与から一括で引かれるか、自分で納付書で払う形(普通徴収)に切り替わるかが変わる。辞めた数ヶ月後に、数十万円の納付書が届いて驚く人がいる。

対策は1つだけだ。退職前に、住民税の残額がいくらで、どう払う形になるかを会社に確認しておく。金額を知っていれば準備できる。知らないと生活が崩れる。

退職前にやっておくことの全体は転職が決まってから退職日までにやること、退職金がない会社の場合の考え方は退職金なしの会社はやばいかに書いた。

順番4|確定申告。年内に再就職しなければ自分でやる

年の途中で辞めて、その年のうちに再就職しなかった場合、年末調整を受けていない状態になる。この場合、翌年に自分で確定申告をすると、払いすぎた所得税が戻ってくることがある。

対象になりやすいのは、退職までに一定の所得税を納めていて、その後の収入が少なかった人だ。還付は自動では来ない。申告した人だけが受け取る。源泉徴収票は捨てずに取っておくこと。

学び直しを挟むなら、順番が1つ増える

失業期間に資格やスキルを取る予定があるなら、受講を申し込む前に制度を確認してほしい。順番を間違えると対象外になる制度がある。

申し込んだ後に「対象外でした」は取り返しがつかない。先に確認するだけで数十万円が変わる領域だわ。

お金の見通しが立たないなら、計算を人に任せる手もある

ここまでの手続きを全部やっても、手元にいくら残って、いつまで持つのかが分からないと不安は消えない。健康保険・年金・住民税・失業手当が同時に動くと、自分で計算するのは正直きつい。

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あわせて検索される疑問に、先に答えておく

次の会社が決まっている場合、何もしなくていいですか

退職日と入社日が連続していれば、健康保険も年金も新しい会社が手続きするため、基本的にやることはない。問題は空白が1日でもある場合だ。その期間の健康保険と年金は自分で埋める必要が出る。入社日を調整できる段階なら、月をまたぐ空白を作らない形にすると手続きも保険料も軽くなる。調整の実務は入社日の調整の仕方に書いた。

失業手当をもらいながら転職活動をするのは不利になりませんか

不利にならない。失業手当は求職活動をしている人のための制度で、活動していることが受給の前提になる。むしろ受給中の求職活動は実績として報告する必要があるため、活動と受給は矛盾しない。ただし受給中にアルバイトをする場合は申告が要るなど、細かい決まりがある。申告を怠ると不正受給の扱いになり得るから、そこだけは正直にやってほしい。

在職中に転職先を決めてから辞めるのと、辞めてから探すのはどちらが得ですか

手続きの量と金銭面だけで見れば、在職中に決めてから辞める方が圧倒的に軽い。この記事の手続きの大半が不要になり、収入も途切れない。ただし消耗が限界に来ている場合は、その計算だけで決めない方がいい。判断材料は在職中の転職と退職後の転職、どちらがいいかに整理してある。

次の会社への入社時に揃える書類は入社書類は何が必要か一覧、雇用保険の紙が見つからない場合は雇用保険被保険者証がない時にまとめてある。

空白期間の健康保険・年金の切り替え詳細は転職の空白期間の社会保険、会社経由の資産の移し替えは財形貯蓄企業型DCにそれぞれ切り出した。

書類トラブルの専用記事

手続きの途中で書類が詰まったら、それぞれ専用記事がある。

書類・お金・手続きの用語ごとの専用記事

受け取る書類

税金・保険の切り替え

有給・引き継ぎ・最後の給料

辞め方そのもの

ここまでのまとめ

順番は期限が短い順。健康保険・年金 → 失業手当 → 住民税 → 確定申告

健康保険の任意継続は退職翌日から原則20日。ここが一番短い

失業手当は離職票が届かないと始まらない。届かないなら会社に催促する

退職後の住民税の額と払い方

退職後の住民税は前年の年収の5〜6%(年収500万で年約24万)が6月から翌5月に来て、1〜5月退職なら最後の給与から一括徴収、6〜12月退職なら一括か納付書(年4回)を選ぶ。年収別の目安表と、届かない時の確認先、払えない時の分割は退職後の住民税はいくらかの記事で書いた。

国民年金が払えない年は免除にする

国民年金の免除は前年所得で判定され(単身で全額免除67万以下〜4分の1免除177万以下)、全額免除でも年金額に2分の1が反映されるが、未納は年金額にも資格期間にも入らず障害・遺族の保障も失う。退職した年は退職者の特例で本人の前年所得を除いて判定でき、追納は10年以内。申請の順番は国民年金の免除はフリーランスでも使えるかの記事で書いた。

独立・副業・お金の全体像

副業の申告→独立の資金と手続き→初年度の税と保険→稼ぎ方と手取り→将来の積立の5段階で、今いる段階の記事だけ読めばいい。全体は独立・副業・お金の完全ガイドにまとめた。

失業保険の日額早見表(2026年8月改定)

失業保険の日額は退職前6ヶ月の月給÷30に50〜80%をかけた額で、月給20万で5,036円・30万で6,307円・40万で6,744円、上限は29歳以下7,450円・30〜44歳8,270円・45〜59歳9,110円。月給別・年齢別の表と、自己都合・会社都合の合計の目安は失業保険の日額早見表の記事で書いた。

独立前に会社員のうちにやること

会社員の信用は辞めた瞬間に消える。クレジットカード・賃貸・ローンの契約、副業での受注実績、生活費6ヶ月+税と保険料の後払い分の貯金、健康診断、有給消化と6月以降の退職、企業型DCの移換先、在職中の給付、就業規則の競業避止の10個を1年前から順に進める(独立前に会社員のうちにやること10個の記事)。フリーランス1年目は賃貸の審査に落ちやすく、在職中の契約が最も確実だ(フリーランスは賃貸の審査に通らないのかの記事)。

会社員でも確定申告が必要な人

副業所得20万超・年収2,000万超・2ヶ所給与・年の途中の退職は確定申告が必要で、医療費10万超・ふるさと納税6自治体超・住宅ローン初年度・控除の申告忘れは申告すると戻る。還付だけの申告は5年間できる。判定表とe-Taxの手順は会社員でも確定申告が必要な人の記事で書いた。

退職後の年金の切り替え

厚生年金は退職日の翌日に終わり、次の会社まで空白が月末を含めばその月は国民年金(月17,920円)になる。退職から14日以内に市区町村で切り替え、払えないなら退職特例で免除を申請する。放置すると未納で障害年金の要件も外れる。手順と書類は退職後の年金の切り替え手続きの記事で書いた。

失業保険をもらいながら働く時の線

受給中の副業・アルバイトは週20時間未満で申告すれば認められ、1日4時間以上働いた日は手当が後ろに繰り越され、4時間未満の日は収入−1,354円+日額が賃金日額の80%を超えた分だけ減額される。業務委託やブログ収入も申告対象で、開業届を出すと止まり、隠すと3倍返しになる。判定と減額の式は失業保険をもらいながら副業・アルバイトはできるかの記事で書いた。

早く決まった人の再就職手当

受給中に早く就職すると、残日数×日額×70%(残3分の2以上)か60%を一括で受け取れる。給付日数90日で残60日・日額6,000円なら25.2万円。条件は待期後・残日数3分の1以上・1年超の雇用・雇用保険加入など7つで、自己都合の給付制限中の1ヶ月は紹介経由が条件になり、フリーランス開業も対象だ。計算例と申請の期限1ヶ月は再就職手当はいくらもらえるかの記事で書いた。

会社都合と自己都合の違い

会社都合は待期7日ですぐ支給で給付日数90〜330日、自己都合は給付制限1ヶ月(2025年4月〜)で90〜150日。35歳・加入10年・日額6,000円なら36万の差で、国保の軽減も付く。残業45時間超3ヶ月・未払い・パワハラ・退職勧奨は自分から辞めても会社都合扱いになり、離職票の理由が違えばハローワークで異議を出す。表と例は会社都合と自己都合の違いの記事で書いた。

退職勧奨された時の対応

退職勧奨は応じる義務がなく、断っても解雇にはならない。繰り返しや長時間の面談は退職強要で違法。応じるならその場で答えず、会社都合・退職金の上乗せ(月給3〜12ヶ月)・有給消化・在籍期間・転職支援を書面で交渉し、退職届は書かず合意書に署名する。5条件と判断は退職勧奨されたらどうするかの記事で書いた。

会社が倒産した時のお金

倒産による離職は会社都合扱いで失業保険は待期7日ですぐ90〜330日、離職票が出なければ仮手続き、未払いの給与と退職金は立替払制度で退職前6ヶ月分の8割(上限88〜296万)を国が立て替える。健康保険と年金は14日以内に切り替え、兆候が見えたら在職中に明細と勤怠を保存する。順番は会社が倒産したらの記事で書いた。

解雇予告手当の計算

解雇予告手当は30日に足りない日数分の平均賃金(直前3ヶ月の賃金総額÷暦日数)で、即日解雇なら30日分、月給30万なら約29.3万。試用期間14日以内や重責解雇(労基署の認定)は例外。受け取っても解雇の有効性は別に争え、解雇は失業保険で会社都合扱いになる。計算表は解雇予告手当の計算方法の記事で書いた。

介護で辞める前に使える制度

介護休業は家族1人につき93日を3回まで分けて取れて給付67%(月給30万で約20万)、介護休暇は年5日、時短・時差出勤・残業免除を請求でき、2025年4月から会社は制度の個別周知が義務。介護離職後は年収が半分以下になる例が多いので、包括支援センター→要介護認定→ケアマネ→93日で体制→時短で続ける、の順で動く。詳しくは親の介護で仕事を辞める前にの記事で書いた。

未払い賃金の請求のやり方

未払い賃金は3年分を退職後でも請求でき、証拠(明細・勤怠の撮影・PCログ・メール送信時刻)を在職中に集め、額を計算して内容証明で請求し、払われなければ労基署の申告、あっせん、労働審判、訴訟(付加金)と進む。給与の3分の1超が2ヶ月以上未払いなら自分から辞めても会社都合扱い。順番と金額別の手段は未払い賃金の請求のやり方の記事で書いた。

65歳以上の失業保険(一時金)

65歳以上の離職は高年齢求職者給付金という一時金で、被保険者期間1年以上なら基本手当日額の50日分(月給30万で約30万円)。64歳までの基本手当と違って老齢年金と同時に受け取れ、再就職しても返還は不要。65歳到達日は誕生日の前日で、退職日を数日ずらすと扱いが変わる。比較は65歳以上で辞めたら失業保険はどうなるかの記事で書いた。

有給は何日もらえるか

有給はフルタイムで入社6ヶ月に10日、以後増えて6年6ヶ月から毎年20日、週4日以下のパートは比例付与(週4日なら7日〜15日)。年10日以上の人は年5日の取得が会社の義務で、時効2年で最大40日まで貯まり、転職でリセットされる。付与日数の表と退職時の使い切り方は有給は何日もらえるかの記事で書いた。

健康保険の扶養に入る手続き

扶養は、これから1年の収入見込みが130万円未満(60歳以上・障害者は180万円未満)で同居なら被保険者の収入の半分未満なら入れて保険料はゼロ。退職して収入がゼロになれば翌日から入れるが、失業保険の日額3,612円以上で外れるので、給付制限中は扶養→受給中は国保→終了後に再び扶養という出入りになる。条件と手順は健康保険の扶養に入る手続きの記事で書いた。

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よくある質問

退職後の手続きは何から手をつければいいですか?

期限が短い順にやる。健康保険(任意継続は退職翌日から原則20日以内)と国民年金・国保(原則14日以内)が最初で、次が失業手当になる。

手続きを忘れて期限を過ぎたらどうなりますか?

任意継続は期限を過ぎると原則選べなくなる。年金は未納のまま放置すると将来の年金額と保障に影響が出る。失業手当は受給期間自体に期限がある。

次の会社が決まっていても手続きは必要ですか?

退職日と入社日が連続していれば新しい会社が手続きする。空白がある場合は、その期間の健康保険と年金を自分で埋める必要がある。

年内に辞める場合の税の扱いは年末調整の前に退職するとどうなるかで分けて書いた。再就職の有無で手続きが変わり、多くの場合は還付になる側だ。

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