退職の理由は自己都合だと思っていた。辞める時に、会社都合にできるなら失業保険が違うと聞いた。何がどれだけ違うのか、自分の辞め方はどちらなのか、会社が自己都合と書いた離職票をどうすればいいのかが分からない。
理由の欄ひとつで、数十万円変わる。同じ退職でも、理由の欄ひとつで失業保険が数十万変わる。給付制限と日数と額の差、国保の軽減、会社都合扱いになる退職理由、異議の出し方を書く。
先に一文で。会社都合は待期7日ですぐ支給で給付日数90〜330日、自己都合は給付制限1ヶ月(2025年4月〜)で90〜150日、35歳・加入10年・日額6,000円なら36万の差、国保の軽減も付き、倒産・解雇・退職勧奨・残業45時間超・賃金未払い・パワハラなどは自分から辞めても会社都合扱いになり、離職票の理由が違えばハローワークで異議を出す。
この記事の要点
- 給付制限|会社都合なし、自己都合1ヶ月(5年で3回以上は3ヶ月)
- 給付日数|会社都合90〜330日(年齢×加入年数)、自己都合90〜150日(加入年数のみ)
- 額の差|35歳・10年・日額6,000円で36万。45歳・20年・7,000円で126万
- 自分から辞めても、残業45時間超3ヶ月・未払い・パワハラ・退職勧奨は会社都合扱い
違いの一覧
| 項目 | 会社都合(特定受給資格者) | 自己都合 |
|---|---|---|
| 給付制限 | なし(待期7日のみ) | 待期7日+1ヶ月(2025年4月以降の離職。5年で3回以上は3ヶ月) |
| 給付日数 | 90〜330日(年齢と加入年数) | 90・120・150日(加入年数のみ) |
| 受給の条件 | 離職前1年に6ヶ月以上の加入 | 離職前2年に12ヶ月以上の加入 |
| 国民健康保険 | 前年の給与所得を30%として計算する軽減(翌年度末まで) | なし |
| 退職金 | 会社の規定で会社都合は上乗せの会社が多い | 規定の自己都合率 |
| 履歴書 | 「会社都合により退職」 | 「一身上の都合により退職」 |
給付日数の表
会社都合(特定受給資格者・一部の特定理由離職者)
| 加入年数 | 30歳未満 | 30〜34歳 | 35〜44歳 | 45〜59歳 | 60〜64歳 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1年未満 | 90日 | 90日 | 90日 | 90日 | 90日 |
| 1〜5年 | 90日 | 120日 | 150日 | 180日 | 150日 |
| 5〜10年 | 120日 | 180日 | 180日 | 240日 | 180日 |
| 10〜20年 | 180日 | 210日 | 240日 | 270日 | 210日 |
| 20年以上 | ― | 240日 | 270日 | 330日 | 240日 |
自己都合(一般の離職者)
| 加入年数 | 全年齢 |
|---|---|
| 10年未満 | 90日 |
| 10〜20年 | 120日 |
| 20年以上 | 150日 |
日額は失業保険の日額早見表の記事で確認する。
受給額の差の例
| 例 | 自己都合 | 会社都合 | 差 |
|---|---|---|---|
| 28歳・加入5年・日額5,500円 | 90日=49.5万 | 120日=66万 | 16.5万+1ヶ月早い |
| 35歳・加入10年・日額6,000円 | 120日=72万 | 180日=108万 | 36万+1ヶ月早い |
| 45歳・加入20年・日額7,000円 | 150日=105万 | 330日=231万 | 126万+1ヶ月早い |
| 52歳・加入25年・日額7,500円 | 150日=112.5万 | 330日=247.5万 | 135万+1ヶ月早い |
年齢が上がるほど、加入年数が長いほど、差は大きい。45歳以上で20年勤めた人が退職勧奨に応じる時、会社都合になるかどうかで100万円以上動く。受給中の働き方は失業保険をもらいながら副業はできるかの記事、早く決まった時は再就職手当の記事で書いた。
国民健康保険の軽減
会社都合(特定受給資格者・特定理由離職者)で離職した65歳未満の人は、国保の保険料の計算で前年の給与所得を30%として扱う軽減が、離職の翌日から翌年度末まで受けられる。年収500万で退職した人の国保は年40万前後だが、軽減で20万前後になる。市区町村の窓口で雇用保険受給資格者証を見せて申請する(国民健康保険が高い時の対策の記事)。
自分から辞めても会社都合扱いになる理由
| 区分 | 該当する退職理由 |
|---|---|
| 特定受給資格者(会社都合と同じ) | 倒産、解雇(重責解雇を除く)、退職勧奨に応じた、事業所の廃止・移転で通勤困難、有期契約の更新拒否(3年以上か更新明示あり)、賃金の3分の1超が2ヶ月以上未払い、賃金が85%未満に低下、残業が3ヶ月連続45時間超か1ヶ月100時間超か2〜6ヶ月平均80時間超、パワハラ・セクハラ・いじめ、採用時の条件と著しく違う、法令違反の放置 |
| 特定理由離職者(給付制限なし・6ヶ月で受給) | 有期契約の期間満了で更新を希望したが拒否、病気・けが、妊娠・出産・育児、家族の介護、配偶者の転勤で通勤困難、体力の低下 |
残業45時間超が3ヶ月と、パワハラは、証拠があれば自分から辞めても会社都合扱いになる。残業の記録(勤怠・PCログ・メール)、給与明細、診断書、パワハラの日時と内容の記録を辞める前に集める(残業代の計算方法と早見表の記事)。退職勧奨を受けた時の対応は退職勧奨された時の対応の記事で書いた。
離職票の理由に異議を出す
- 離職票の「離職理由」欄で、会社が書いた理由を確認する。署名する前に見る
- 違えば、本人の判断欄で「異議あり」に印を付け、自分の認識する理由を書く
- ハローワークに離職票を出す時に事情を説明し、証拠(残業記録・給与明細・診断書・退職勧奨の書面や録音・メール)を出す
- ハローワークが会社に確認し、判定する。会社の記載でなくハローワークの判定で決まる
離職票が届かない時は離職票がもらえない時の記事、離職票なしで仮手続きする方法は離職票なしで失業保険を仮手続きする記事で書いた。
ここまでのまとめ
・給付制限|会社都合なし、自己都合1ヶ月(5年で3回以上は3ヶ月)
・給付日数|会社都合90〜330日(年齢×加入年数)、自己都合90〜150日(加入年数のみ)
・額の差|35歳・10年・日額6,000円で36万。45歳・20年・7,000円で126万
退職金・履歴書・面接
- 退職金|多くの会社の規定で、会社都合は自己都合より支給率が高い(自己都合の1.2〜1.5倍など)。規定を退職前に確認する(退職金の相場の記事)
- 履歴書|会社都合は「会社都合により退職」、自己都合は「一身上の都合により退職」。倒産・事業縮小は会社都合と書いて不利にならない。退職勧奨は「会社都合により退職」で問題ない
- 面接|会社都合の理由を聞かれたら、事実(事業縮小・部門閉鎖など)を短く言う。個人の能力を疑われる理由でなければ、それ以上の説明は要らない(面接で退職理由を言い換える記事)
私の1社目は美容業界のブラック企業で、残業代なし・休日出勤・パワハラで1年以内に辞めた。当時は自己都合だと思って何も調べなかったが、今の基準なら特定受給資格者に当たる辞め方だった。証拠を残していれば、給付制限なしで受け取れた。辞め方が同じでも、知っているかどうかで受け取る額が変わる。
よくある誤解
「自分から辞めたら全部自己都合」。残業45時間超3ヶ月・未払い・パワハラ・退職勧奨は、自分から辞めても会社都合扱い。証拠を出す。
「会社都合は転職で不利」。倒産・事業縮小・退職勧奨は個人の能力と無関係で、面接で不利にならない。不利になるのは重責解雇だけだ。
会社が倒産した時のお金
倒産による離職は会社都合扱いで失業保険は待期7日ですぐ90〜330日、離職票が出なければ仮手続き、未払いの給与と退職金は立替払制度で退職前6ヶ月分の8割(上限88〜296万)を国が立て替える。健康保険と年金は14日以内に切り替え、兆候が見えたら在職中に明細と勤怠を保存する。順番は会社が倒産したらの記事で書いた。
解雇予告手当の計算
解雇予告手当は30日に足りない日数分の平均賃金(直前3ヶ月の賃金総額÷暦日数)で、即日解雇なら30日分、月給30万なら約29.3万。試用期間14日以内や重責解雇(労基署の認定)は例外。受け取っても解雇の有効性は別に争え、解雇は失業保険で会社都合扱いになる。計算表は解雇予告手当の計算方法の記事で書いた。
希望退職の割増は応募すべきか
希望退職の割増は月給6〜24ヶ月分で45〜50歳が最も高く、応募は会社都合扱いで失業保険は給付制限なし・最大330日、退職金と割増は退職所得控除で勤続25年なら1,150万まで非課税。応募前に額・離職理由・再就職支援・有給・撤回と拒否条項を書面で確認し、生活費何年分か・転職先の見込み・固定支出・残った時の処遇・会社の状態の5つで決める。表と判断は希望退職の割増は応募すべきかの記事で書いた。
介護で辞める前に使える制度
介護休業は家族1人につき93日を3回まで分けて取れて給付67%(月給30万で約20万)、介護休暇は年5日、時短・時差出勤・残業免除を請求でき、2025年4月から会社は制度の個別周知が義務。介護離職後は年収が半分以下になる例が多いので、包括支援センター→要介護認定→ケアマネ→93日で体制→時短で続ける、の順で動く。詳しくは親の介護で仕事を辞める前にの記事で書いた。
未払い賃金の請求のやり方
未払い賃金は3年分を退職後でも請求でき、証拠(明細・勤怠の撮影・PCログ・メール送信時刻)を在職中に集め、額を計算して内容証明で請求し、払われなければ労基署の申告、あっせん、労働審判、訴訟(付加金)と進む。給与の3分の1超が2ヶ月以上未払いなら自分から辞めても会社都合扱い。順番と金額別の手段は未払い賃金の請求のやり方の記事で書いた。
うつで退職を考えた時の順番
うつで辞めたい時はまず休職で傷病手当金(月給の3分の2・1年6ヶ月)を受け、退職するなら1年以上の加入・退職日に受給中・退職日に出勤しないの3条件で手当を続け、失業保険は受給期間の延長を申請して回復後に受ける。病気の退職は特定理由離職者で給付制限なし、自立支援医療で医療費1割。順番はうつで退職を考えた時の順番の記事で書いた。
面接での退職理由の答え方
退職理由は「事実を短く+自分で動いたこと+次の会社で満たしたい条件」の型で答え、給与・残業・人間関係・評価・将来性・体調・家庭の理由ごとに例文がある。悪口・全部他責・嘘・曖昧の4つは避け、深掘りには事実をもう1段具体的にして返し、転職回数が多い人は共通する軸で一本にまとめる。例文7つは面接で退職理由をどう答えるかの記事で書いた。
労働基準監督署に相談するとどうなるか
労基署は未払い賃金・残業・有給拒否・解雇予告手当・安全衛生などの法律違反に立入調査と是正勧告をするが、パワハラ・不当解雇・回収の代行は権限外で労働局と労働審判の領域。相談は匿名でよく申告は名乗って行い、労基署は申告者を明かさず、証拠が揃うほど早く動く。振り分けと手順は労働基準監督署に相談するとどうなるかの記事で書いた。
よくある質問
会社に「自己都合にしてほしい」と頼まれました
会社都合にすると助成金が止まる会社があるので頼まれることがある。応じる義務はない。応じるなら、退職金の上乗せなど条件を書面でもらう。実態が退職勧奨なら、離職票が自己都合でもハローワークで異議を出せる。
給付制限の1ヶ月はいつから数えますか?
離職票を出して待期7日が終わった翌日から1ヶ月。2025年4月1日以降の離職が対象で、それより前の離職は2ヶ月。給付制限中に教育訓練を受けると制限が解除される。
退職の資料をLINEで無料配布中
自分の退職理由が特定受給資格者・特定理由離職者に当たるかのチェック表と、年齢・加入年数・日額から会社都合と自己都合の受給額の差を出す記入表を公式LINEで無料配布している。理由の欄を、署名する前に確かめよう。


