国民健康保険の納付書が届いて、額を見て固まった。会社員の時はこんなに引かれていなかったはずだ。高すぎる気がするが、何が違うのか、安くする方法はあるのかが分からない。
高いのには仕組みの理由があり、安くする手も決まっている。国保は所得の1割強。上限は年109万円。安くする手は5つある。
先に一文で。国保が高いのは全額自己負担・所得比例・均等割・前年所得で計算の4つが理由で、東京23区なら所得300万で年約36万・500万で約59万、対策は退職直後の任意継続との比較、会社都合退職の軽減、低所得の軽減、業種別の国保組合、法人化の5つを上から順に検討する。
この記事の要点
- 高い理由|会社の折半がない・所得の1割強・均等割6.4万・前年所得で計算
- 目安(東京23区・40歳未満)|所得200万で24万、300万で36万、500万で59万
- 退職直後は任意継続と比べる。上限は月約3.2万円
- 会社都合退職なら前年所得を30%で計算する軽減がある
高い理由は4つ
- 全額自己負担|会社員の健康保険は会社が半分払う。国保にはその折半がない
- 所得比例|前年の所得(−43万円)に約11.5%(40歳未満)〜14%(40〜64歳)をかける
- 均等割|所得がゼロでも1人年約6.4万円(40歳未満)。家族が増えれば人数分
- 前年の所得で計算|退職や独立で今年の収入が減っても、去年の給与に対する額が来る
会社員の健康保険料が給与の約5%(本人負担分)なのに対し、国保は所得の11〜14%。同じ収入なら2倍以上になる。
所得別の保険料の目安
東京23区・2025年度の料率で計算。所得は給与所得または事業所得(青色控除後)。
| 所得 | 40歳未満 | 40〜64歳 |
|---|---|---|
| 100万円 | 12.9万円 | 15.9万円 |
| 200万円 | 24.4万円 | 29.8万円 |
| 300万円 | 35.9万円 | 43.6万円 |
| 400万円 | 47.4万円 | 57.5万円 |
| 500万円 | 58.9万円 | 71.3万円 |
| 600万円 | 70.4万円 | 85.2万円 |
| 800万円 | 93.3万円 | 112.0万円→上限109万円 |
| 1,000万円 | 98.4万円→上限92万円 | 上限109万円 |
上限は医療分66万円+支援金分26万円(+介護分17万円)。所得800万円前後で上限に達し、それ以上は増えない。会社員の年収に直すと、年収500万円(給与所得356万円)で約42万円、年収800万円で約72万円が独立初年度に来る。自治体の料率差は大きく、同じ所得で年10万円以上変わる。
対策1、退職直後は任意継続と比べる
会社の健康保険は、退職後20日以内に申請すれば最長2年間続けられる(任意継続)。保険料は会社の折半がなくなるので退職時の2倍になるが、標準報酬月額に上限(協会けんぽは32万円)があるため、給与が高かった人は国保より安くなる。
| 任意継続(協会けんぽ東京) | 国保(東京23区・40歳未満) | |
|---|---|---|
| 退職前の年収400万円 | 月約3.2万円(上限で計算) | 月約2.8万円(給与所得276万円) |
| 退職前の年収500万円 | 月約3.2万円(上限) | 月約3.5万円 |
| 退職前の年収600万円 | 月約3.2万円(上限) | 月約4.3万円 |
| 扶養家族がいる | 家族分の保険料は不要 | 家族の人数分の均等割が加わる |
年収500万円以上、または扶養家族がいるなら任意継続が安いことが多い。2年目は国保が独立初年度の所得で再計算されて下がるので、1年目だけ任意継続にして2年目に国保へ切り替える形もある。任意継続は途中でやめられる(2022年から申し出で脱退可)。
対策2、会社都合・特定理由の退職なら軽減
倒産・解雇・雇い止めなどの非自発的失業者(雇用保険の特定受給資格者・特定理由離職者)は、前年の給与所得を30%として国保を計算する軽減がある。退職の翌年度末まで続く。年収500万円で退職した人なら、国保が年約42万円から約13万円に下がる。市区町村の窓口で離職票を見せて申請する。自己都合退職は対象外だが、正当な理由のある自己都合(特定理由離職者)は対象になる。判定は特定理由離職者の記事で書いた。
対策3、所得が少ない世帯の軽減
世帯の所得が一定以下なら、均等割が7割・5割・2割軽減される。2025年度の目安は、単身で所得43万円以下なら7割、約73万円以下なら5割、約98万円以下なら2割。確定申告か住民税の申告をしていれば自動で適用される。申告していないと軽減されないので、所得がゼロの年も申告する。
対策4、業種別の国民健康保険組合
文芸美術国民健康保険組合(デザイナー・ライター・イラストレーターなど、所属団体の加入が要る)、東京都の建設国保、理美容国保などは、所得に関係なく定額の組合が多い。文芸美術国保は2025年度で月約2.4万円前後(本人)で、所得が300万円を超えるあたりから区の国保より安くなる。加入には業種の実態と団体の会員資格が要り、審査に1〜2ヶ月かかる。
対策5、法人化して社会保険に入る
法人にすると、役員報酬を基準に協会けんぽと厚生年金に入る。役員報酬を低めに設定し、残りを法人に留めれば保険料は抑えられるが、法人の維持費(税理士・法人住民税の均等割7万円など)が年30〜50万円かかる。所得600〜800万円を超えたあたりで検討する。時期の判断は法人化のタイミングの記事で書いた。
払えない時
- 分割|納付書の期日どおりに払えない時は、市区町村の窓口で分割に変えられる。放置すると延滞金がつき、保険証が短期証になる
- 減免|災害・廃業・収入の急減(前年比3割減など)は、申請で減免される自治体がある
- 相談先|市区町村の国保の窓口。電話でも受け付ける
払えないまま放置するのが最も損で、分割の相談をした時点で延滞金の扱いが変わる。
私はフリーランスになった最初の年、会社員時代の給与に対する国保の額を見て、任意継続と比べなかったことを後悔した。退職後20日以内という期限を知らなかっただけで、1年目の差は10万円単位だった。独立初年度の払う額の時系列は独立の資金はいくら要るかの記事、手取り全体は個人事業主の手取り早見表の記事で書いた。
ここまでのまとめ
・高い理由|会社の折半がない・所得の1割強・均等割6.4万・前年所得で計算
・目安(東京23区・40歳未満)|所得200万で24万、300万で36万、500万で59万
・退職直後は任意継続と比べる。上限は月約3.2万円
よくある誤解
「国保は全国同じ料率」。自治体ごとに料率と均等割が違い、同じ所得で年10万円以上差が出る。引っ越しで変わる。
「所得が減れば翌月から下がる」。前年の所得で計算されるので、下がるのは翌年4月から。1年ずれる。
フリーランスの保険と契約の守り
会社員の保障6つのうち独立で残るのは医療費3割と国民年金だけで、消える傷病手当金・労災・賠償の代わりは労災特別加入(年1〜2万)・所得補償(月1万前後)・賠償責任保険(フリーランス協会)で埋める(フリーランスに必要な保険5種類の記事)。2024年11月のフリーランス新法で発注者には条件の書面明示と60日以内の支払いが義務になり(フリーランス新法を分かりやすくの記事)、契約書は損害賠償の上限・中途解約・競業避止の3ヶ所を直す(業務委託契約書のチェック項目の記事)。
国民年金が払えない年は免除にする
国民年金の免除は前年所得で判定され(単身で全額免除67万以下〜4分の1免除177万以下)、全額免除でも年金額に2分の1が反映されるが、未納は年金額にも資格期間にも入らず障害・遺族の保障も失う。退職した年は退職者の特例で本人の前年所得を除いて判定でき、追納は10年以内。申請の順番は国民年金の免除はフリーランスでも使えるかの記事で書いた。
独立・副業・お金の全体像
副業の申告→独立の資金と手続き→初年度の税と保険→稼ぎ方と手取り→将来の積立の5段階で、今いる段階の記事だけ読めばいい。全体は独立・副業・お金の完全ガイドにまとめた。
失業保険の日額早見表(2026年8月改定)
失業保険の日額は退職前6ヶ月の月給÷30に50〜80%をかけた額で、月給20万で5,036円・30万で6,307円・40万で6,744円、上限は29歳以下7,450円・30〜44歳8,270円・45〜59歳9,110円。月給別・年齢別の表と、自己都合・会社都合の合計の目安は失業保険の日額早見表の記事で書いた。
2026年の年収の壁
税金の壁は2026年に110万(住民税)・136万(配偶者控除)・169万(配偶者特別控除の満額)・178万(本人の所得税)まで上がり、残るのは社会保険の106万(2026年10月に賃金要件が撤廃)と130万(4月から契約上の基本収入で判定)だけになった。扶養内で働くなら見る壁は130万の1つで、超えるなら160万以上まで働く(年収の壁の一覧2026の記事)。
独立前に会社員のうちにやること
会社員の信用は辞めた瞬間に消える。クレジットカード・賃貸・ローンの契約、副業での受注実績、生活費6ヶ月+税と保険料の後払い分の貯金、健康診断、有給消化と6月以降の退職、企業型DCの移換先、在職中の給付、就業規則の競業避止の10個を1年前から順に進める(独立前に会社員のうちにやること10個の記事)。フリーランス1年目は賃貸の審査に落ちやすく、在職中の契約が最も確実だ(フリーランスは賃貸の審査に通らないのかの記事)。
退職後の年金の切り替え
厚生年金は退職日の翌日に終わり、次の会社まで空白が月末を含めばその月は国民年金(月17,920円)になる。退職から14日以内に市区町村で切り替え、払えないなら退職特例で免除を申請する。放置すると未納で障害年金の要件も外れる。手順と書類は退職後の年金の切り替え手続きの記事で書いた。
よくある質問
国保の保険料は経費にできますか?
経費ではなく社会保険料控除として、所得から全額引ける。国民年金も同じ。確定申告で忘れずに入れる。
配偶者の扶養に入れば国保は不要ですか?
配偶者が会社員なら、あなたの年収130万円未満(事業所得は経費を引いた額で判定する健保が多い)で扶養に入れ、保険料はゼロになる。独立初年度で売上が少ない年は、扶養に入る選択が最も安い。
独立の資料をLINEで無料配布中
退職前の年収から任意継続と国保を比べる記入表(軽減の該当チェックつき)を公式LINEで無料配布している。退職後20日以内に決める話なので、辞める前に計算しておこう。


