納品したのに支払いが2ヶ月遅れている。口約束で始まった仕事の報酬が、後から減らされた。フリーランスだから仕方ない、と思っていたが、法律ができたと聞いた。何が変わったのかが分からない。

2024年11月から、発注側に義務ができた。口約束と支払い遅れは、法律で断れるようになった。受注側が発注側に求めていい内容の形で書く。

先に一文で。フリーランス新法は、全ての発注者に業務内容・報酬・支払期日の書面明示を、従業員を使う発注者には60日以内の支払い・7つの禁止行為・ハラスメント対策・30日前の解除予告を義務づけた法律で、違反はフリーランス・トラブル110番と公正取引委員会・厚労省の窓口に申し出られ、申し出を理由にした契約打ち切りは禁止されている。

この記事の要点

  • 全ての発注者|業務内容・報酬・支払期日をメールでいいから明示する義務
  • 従業員を使う発注者|60日以内の支払い、7つの禁止行為、ハラスメント対策
  • 6ヶ月以上の契約の途中解除は30日前予告
  • 違反はフリーランス・トラブル110番へ。申し出を理由の報復は禁止

対象になる人と発注者

  • 守られる側(特定受託事業者)|従業員を使わずに業務委託を受ける個人事業主、または代表1人だけの法人
  • 義務を負う側(発注事業者)|業務委託をする事業者。個人の発注者も一部の義務を負う

会社員の副業でも、業務委託で受けていれば対象になる。逆に、あなたが他のフリーランスに再委託する時は、あなたが発注者側の義務を負う。

発注者の義務。2段階

義務全ての発注者従業員を使う発注者
取引条件の明示(業務内容・報酬・支払期日など)を書面かメールで
納品から60日以内の支払い
募集情報の的確な表示(虚偽・誤解を招く表示の禁止)
7つの禁止行為(6ヶ月以上の取引)
育児・介護への配慮(6ヶ月以上の取引)
ハラスメント対策の体制整備
6ヶ月以上の契約の中途解除は30日前予告

求めていい5つのこと

1、条件を文字で出してもらう|口頭で始まった仕事でも、業務内容・報酬・支払期日・納期をメールかチャットで出す義務が発注者にある。「念のため条件をメールでいただけますか」は、お願いでなく法律上の求めになる。

2、60日以内に払ってもらう|納品(役務の提供)から60日以内が上限。「月末締め翌々月末払い」は60日を超えることがあり、新法ではそのままだと違反になる。

3、後から減額されない|6ヶ月以上の取引で、自分に責任がない減額・返品・やり直しの要求は禁止行為に当たる。

4、買いたたかれない|通常の相場より著しく低い報酬を一方的に決めることは禁止行為だ。相場の根拠を持っていれば交渉の材料になる(フリーランスの単価の上げ方の記事)。

5、突然切られない|6ヶ月以上の契約は、途中解除に30日前の予告が要る。予告なしの打ち切りは、その分の補償を求める根拠になる。

7つの禁止行為(6ヶ月以上の取引)

禁止行為具体例
受領拒否発注しておいて、自分の都合で納品物を受け取らない
報酬の減額納品後に「予算が減った」と一方的に減らす
返品不備がないのに返品する
買いたたき相場より著しく低い額を一方的に決める
購入・利用の強制発注者の商品やサービスを買わせる
金銭・役務の提供の要請協賛金や無償の追加作業を求める
不当な給付内容の変更・やり直し自分に責任がないのに、無償で作り直させる

支払いが遅れた時の手順

  1. 納品日と支払期日をメールで確認する(相手に文字で答えさせる)
  2. 期日を過ぎたら、請求書を再送し、支払予定日を聞く
  3. 60日を超えていれば、新法の支払期日の規定に触れることを伝える
  4. 動かなければフリーランス・トラブル110番に相談し、あっせんを依頼する

3の伝え方は「フリーランス新法で納品から60日以内の支払いが定められていますので、◯日までにお願いします」で足りる。未払いの回収の全体はフリーランスの報酬未払いの記事で書いた。

相談先

窓口扱う内容特徴
フリーランス・トラブル110番契約・支払い・ハラスメントなど全般弁護士に無料相談。和解のあっせんも無料
公正取引委員会・中小企業庁書面明示・支払期日・禁止行為発注者への指導・勧告・命令。命令違反は罰金
厚生労働省(労働局)募集表示・育児介護・ハラスメント・解除予告同上

申し出たことを理由に契約を打ち切るなどの不利益な扱いは禁止されている。それ自体が新たな違反になる。

下請法との違い

下請法は、資本金1,000万円超の発注者から、資本金1,000万円以下の受注者への取引だけが対象だった。新法は発注者の資本金を問わないので、小さな会社や個人からの発注も対象になる。フリーランスの取引先の多くは中小企業なので、実際に守られる範囲が広がった。

私はフリーランスになった最初の年、口頭で始まった仕事の支払いが3ヶ月遅れたことがある。当時は催促する根拠が契約書しかなく、その契約書もなかった。今は条件の明示と60日以内の支払いが法律の側にある。契約書がなくても、メールの1往復で条件を文字にしておけば、それが根拠になる。契約書の見方は業務委託契約書のチェック項目の記事で書いた。

よくある誤解

「契約書がないと守られない」。条件を文字で明示する義務は発注者側にある。メールの往復で十分で、それがなければ明示義務違反として申し出られる。

「小さい会社からの発注は対象外」。発注者の規模は問わない。従業員がいない個人の発注者でも、明示義務はある。

独立・副業・お金の全体像

副業の申告→独立の資金と手続き→初年度の税と保険→稼ぎ方と手取り→将来の積立の5段階で、今いる段階の記事だけ読めばいい。全体は独立・副業・お金の完全ガイドにまとめた。

請求書と屋号・口座の実務

請求書は宛名・発行者・番号・発行日・内容・金額(税抜/消費税/税込)・支払期日・振込先・登録番号の9項目で完成し、源泉徴収の仕事は税抜額×10.21%を引いた差引額を書く(フリーランスの請求書の書き方の記事)。屋号は任意で後から変えられ、口座とカードを事業専用に分けるだけで帳簿がほぼ自動になる(屋号の決め方と事業用口座の記事)。

よくある質問

会社員の副業で受けている仕事も対象ですか?

対象になる。従業員を使わずに業務委託を受けていれば、本業が会社員でも特定受託事業者に当たる。

プラットフォーム経由の仕事はどうなりますか?

発注者が誰かで決まる。プラットフォームが仲介するだけなら、発注した事業者が義務を負う。プラットフォーム自身が発注者なら、プラットフォームが義務を負う。

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