フリーランスになって、年金の通知を見た。将来もらえる額が、会社員の同僚の話と比べて明らかに少ない。老後にいくら要るのか、何で埋めればいいのか、月いくら積み立てれば足りるのかが分からない。

差の正体は厚生年金と退職金の2つで、埋める手段も決まっている。フリーランスの年金は会社員の半分以下。差は月々3万で埋まる

先に一文で。フリーランスの公的年金は国民年金だけで満額でも月約6.9万、会社員の厚生年金は平均月約14.6万で差は月8万・25年で約2,300万、埋める順番は付加年金→小規模企業共済→iDeCo→NISAで、月3万を30年続ければ差はほぼ埋まり、掛金の控除で実質の負担は2割減る。

この記事の要点

  • 国民年金の満額は月約6.9万。会社員の厚生年金は平均月約14.6万
  • 差は月8万、65〜90歳で約2,300万。退職金の差が別に乗る
  • 順番|付加年金→小規模企業共済→iDeCo→NISA
  • 月3万×30年(年3%)で約1,750万、月4万で約2,330万

公的年金の差

フリーランス(第1号)会社員(第2号)
加入する年金国民年金のみ国民年金+厚生年金
保険料(月)17,920円(2026年度)給与の18.3%(本人負担は半分)
受け取り(月)満額で約6.9万円基礎年金を含めて平均約14.6万円
退職金なしある会社が74.9%
障害・遺族の保障障害基礎年金・遺族基礎年金障害厚生年金・遺族厚生年金が上乗せ

国民年金の満額は2025年度で年831,700円(月69,308円)。40年全て納めた場合の額で、未納が1年あれば年約2.1万円減る。会社員の厚生年金の平均は、厚生労働省の令和5年度の事業概況で月146,429円(基礎年金を含む)。

差は月約8万円。65歳から90歳までの25年で約2,300万円。これに会社員の退職金(大卒・定年で平均1,896万円。退職金の平均の記事)が別に乗る。

埋める手段の順番

順番制度上限(月)控除受け取り向いている人
1付加年金400円全額65歳から終身、年200円×納付月数全員(2年で元が取れる)
2小規模企業共済7万円全額廃業・退職時。60歳前でも可事業を続ける人。流動性が要る人
3iDeCo6.8万円全額60歳以降運用益の非課税を使いたい人
4国民年金基金iDeCoと合わせて6.8万円全額65歳から終身終身で受け取りたい人
5NISA年360万円なしいつでも控除の枠を使い切った人

1と2を先にする理由は、付加年金は納付月数×200円が毎年受け取れて2年で回収できること、共済は廃業時に受け取れて貸付もあるので、事業が傾いた時の資金にもなることだ。iDeCoは60歳まで引き出せないので、生活費と事業資金の余裕が出てから入れる。共済の仕組みは小規模企業共済とはの記事で書いた。

月いくら積み立てれば足りるか

年利3%で運用した場合の到達額の目安(積立は複利計算)。

月の積立20年25年30年
2万円約656万円約892万円約1,165万円
3万円約985万円約1,338万円約1,748万円
4万円約1,313万円約1,784万円約2,331万円
5万円約1,641万円約2,230万円約2,914万円
7万円約2,298万円約3,122万円約4,080万円

30代で始めるなら月3〜4万、40代なら月5〜7万が、年金の差2,300万円を埋める目安になる。共済とiDeCoに入れれば掛金が全額控除になるので、税率20%の人なら月3万の積立で年約7万の税が戻り、実質の負担は月2.4万になる。運用益が0%でも、控除の分だけで積立額の2割が戻る計算だ。

国民年金の未納・免除の影響

  • 未納|1年で年約2.1万円、受取額が減る。10年未納なら月1.7万円減。追納は2年以内、免除の追納は10年以内
  • 免除(全額)|免除期間は受取額が2分の1として計算される。未納よりはるかにいい
  • 納付猶予|受取額には反映されないが、受給資格期間には入る

独立初年度で売上が少ない年は、未納にせず免除か猶予を申請する。免除なら後から追納でき、追納しなくても半分は受け取れる。

40代から始める場合

40歳から65歳までの25年で月4万円なら約1,784万円、月5万円なら約2,230万円。45歳からの20年なら月5万円で約1,641万円、月7万円で約2,298万円。遅く始めるほど月の額が増えるが、共済とiDeCoの控除で2割は戻るので、額面ほどの負担ではない。

私は会社員を4社経験してからフリーランスになったので、厚生年金の加入期間が10年以上ある。その分は将来の受取に乗るが、フリーランスになった年から国民年金だけになった。共済と付加年金は独立2年目から始め、iDeCoは生活費と事業資金の6ヶ月分が残ってから入れた。順番を守れば、老後の話は月々の額の話に変わる。

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よくある誤解

「フリーランスは年金がもらえない」。国民年金は満額で月6.9万円受け取れる。少ないだけで、ゼロではない。

「iDeCoから始めるべき」。60歳まで引き出せない。事業の資金繰りが不安定な時期は、廃業時に受け取れて貸付もある小規模企業共済と付加年金を先にする。

フリーランスの保険と契約の守り

会社員の保障6つのうち独立で残るのは医療費3割と国民年金だけで、消える傷病手当金・労災・賠償の代わりは労災特別加入(年1〜2万)・所得補償(月1万前後)・賠償責任保険(フリーランス協会)で埋める(フリーランスに必要な保険5種類の記事)。2024年11月のフリーランス新法で発注者には条件の書面明示と60日以内の支払いが義務になり(フリーランス新法を分かりやすくの記事)、契約書は損害賠償の上限・中途解約・競業避止の3ヶ所を直す(業務委託契約書のチェック項目の記事)。

退職金の税金

退職金は退職所得控除(勤続20年まで年40万、20年超は年70万)を引いた残りの半分にだけ分離課税され、勤続20年で1,000万なら約15万、勤続30年で2,000万なら約40万で済む。受給に関する申告書を出さないと20.42%が源泉徴収される。勤続年数×金額の早見表は退職金の税金の早見表の記事で書いた。

転職した年のふるさと納税とiDeCo

転職した年のふるさと納税の上限は前職と現職を足した1〜12月の年収で決まり、退職金と失業保険は入らず、転職先で年末調整を受けるならワンストップ特例が使える(ふるさと納税は転職した年にどうなるかの記事)。iDeCoは転職で消えず、種別変更届を1枚出せば続き、企業型DCがある会社なら上限が月2万円に下がる(iDeCoは転職したらどうなるかの記事)。

国民年金が払えない年は免除にする

国民年金の免除は前年所得で判定され(単身で全額免除67万以下〜4分の1免除177万以下)、全額免除でも年金額に2分の1が反映されるが、未納は年金額にも資格期間にも入らず障害・遺族の保障も失う。退職した年は退職者の特例で本人の前年所得を除いて判定でき、追納は10年以内。申請の順番は国民年金の免除はフリーランスでも使えるかの記事で書いた。

独立・副業・お金の全体像

副業の申告→独立の資金と手続き→初年度の税と保険→稼ぎ方と手取り→将来の積立の5段階で、今いる段階の記事だけ読めばいい。全体は独立・副業・お金の完全ガイドにまとめた。

退職後の年金の切り替え

厚生年金は退職日の翌日に終わり、次の会社まで空白が月末を含めばその月は国民年金(月17,920円)になる。退職から14日以内に市区町村で切り替え、払えないなら退職特例で免除を申請する。放置すると未納で障害年金の要件も外れる。手順と書類は退職後の年金の切り替え手続きの記事で書いた。

よくある質問

会社員時代の厚生年金はどうなりますか?

加入していた期間の分は、65歳から老齢厚生年金として受け取れる。フリーランスになっても消えない。

国民年金だけで足りる人はいますか?

持ち家で住居費がなく、配偶者に厚生年金がある世帯なら、国民年金と少額の積立で回る場合がある。単身で賃貸なら、上の表の月3〜5万が現実的な線になる。

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