フリーランスには退職金がない。節税もしたい。小規模企業共済がいいと聞くが、何がどう得なのか、途中でやめたら損なのか、iDeCoと何が違うのかが分からない。

自分で作る退職金で、掛金が全額控除になる制度だ。月7万で年84万の控除。税率20%の人なら年25万戻る。仕組み・節税額・デメリットを順に書く。

先に一文で。小規模企業共済は個人事業主と小さな会社の役員が月1,000〜70,000円を積み立てて廃業・退職時に受け取る退職金制度で、掛金は全額所得控除、節税額は課税所得330万で年36万の掛金なら約7万・695万で年84万なら約25万、20年未満の任意解約は元本割れするので、余裕が出てから始めて廃業まで続ける前提で使う。

この記事の要点

  • 掛金月1,000〜70,000円。全額が所得控除
  • 節税額|掛金×(所得税率+住民税10%)。年84万で税率20%なら約25万
  • 受け取りは退職所得か公的年金等の雑所得。税負担が軽い
  • 20年未満の任意解約は元本割れ。廃業・65歳なら割れない

仕組み

項目内容
運営独立行政法人中小企業基盤整備機構
加入資格常時使用する従業員20人以下(商業・サービス業は5人以下)の個人事業主・会社役員
掛金月1,000〜70,000円(500円単位)。増額・減額可
掛金の扱い全額が所得控除(小規模企業共済等掛金控除)
受け取り廃業・退職・65歳到達(180ヶ月以上)などで共済金を受け取る
受け取り時の課税一括は退職所得、分割は公的年金等の雑所得
予定利率年1.0%(共済金A・B)
貸付掛金の範囲内(7〜9割)で借りられる。一般貸付は年1.5%

会社員の副業では原則加入できない。開業届を出した個人事業主か、法人の役員が対象になる。

節税額の早見表

掛金×(所得税率×1.021+住民税10%)で計算。課税所得は、所得から各種控除を引いた後の額。

課税所得(税率)掛金 月1万(年12万)月3万(年36万)月5万(年60万)月7万(年84万)
195万円以下(5%)1.8万円5.4万円9.0万円12.6万円
330万円以下(10%)2.4万円7.2万円12.1万円16.9万円
695万円以下(20%)3.6万円10.9万円18.2万円25.5万円
900万円以下(23%)4.0万円12.0万円20.0万円28.1万円
1,800万円以下(33%)5.2万円15.7万円26.2万円36.7万円

さらに国民健康保険は所得控除を反映しないので、国保は減らない。減るのは所得税と住民税だけだ。課税所得が高いほど効果が大きく、税率5%の帯では効果が小さい。

売上500万・経費20%(所得335万、課税所得約250万)の個人事業主が月3万を掛ければ、年7.2万の節税になる。手取りの全体は個人事業主の手取り早見表の記事で書いた。

受け取り時の課税

受け取り方課税目安
一括(廃業・退職)退職所得退職所得控除(20年以下は年40万円、超は年70万円)を引き、残りの半分に課税
分割(10年・15年)公的年金等の雑所得公的年金等控除の対象
任意解約(20年未満)一時所得特別控除50万円を引き、残りの半分に課税

20年掛けて一括で受け取れば、退職所得控除800万円が引ける。掛金の合計が800万円(月3.3万×20年)までなら、受け取り時の税はほぼゼロになる。会社員の退職金の平均は勤続20年以上で1,000万円台(退職金の平均の記事)で、それを自分で作る計算だ。

デメリット3つ

1、20年未満の任意解約は元本割れ。12ヶ月未満は0円、その後は掛金の80%から始まり、240ヶ月で100%になる。廃業・65歳到達・法人成りでの受け取りなら、期間に関係なく元本割れしない。途中でやめる前提なら入らない

2、減額した分は運用されない。掛金を減らすと、減らした分はその後利息がつかず据え置きになる。無理な額で始めて減らすより、少額で始めて増やす。

3、現金が動かせない。積み立てた分は自由に引き出せない。掛金の7〜9割まで年1.5%で借りられる貸付があるので、緊急時の資金にはなる。

iDeCo・国民年金基金との使い分け

小規模企業共済iDeCo国民年金基金
上限(月)7万円6.8万円(個人事業主)iDeCoと合わせて6.8万円
控除全額全額全額
受け取り廃業・退職時(60歳前でも可)60歳以降65歳から終身年金
運用予定利率1.0%自分で選ぶ(元本変動)予定利率1.5%
途中の解約可(20年未満は元本割れ)原則不可不可
貸付ありなしなし

順番は、小規模企業共済→iDeCoの順が多い。共済は廃業で受け取れて貸付もあるので流動性が高く、iDeCoは60歳まで動かせない代わりに運用益が非課税になる。両方使えば月13.8万、年165万の控除になる。老後の全体像はフリーランスの老後資金の記事で書いた。

加入の手順

  1. 開業届の控え(または確定申告書の控え)を用意する
  2. 商工会議所・銀行・信用金庫の窓口、または中小機構のオンライン申込で手続きする
  3. 掛金の払い方(月払い・半年払い・年払い)を選ぶ。年払いなら12月に年額をまとめて払っても、その年の控除になる
  4. 翌年の確定申告で、掛金払込証明書の額を小規模企業共済等掛金控除に入れる

12月に加入して1年分を前納すれば、その年の控除に間に合う。年末に所得が見えてから、額を決めて入るのが最も無駄がない。

私はフリーランスになって2年目から入った。1年目は売上の見込みが立たず、掛金を続けられる自信がなかったからだ。続けられる額を、続けられると分かってから決める。減額すると運用されない仕組みを知っていたので、最初は月1万から始めて、年末の所得を見て増やした。

よくある誤解

「節税になるから、入れるだけ入るべき」。国保は減らず、現金は動かせない。生活費と事業資金の6ヶ月分が残ってからの額にする。

「途中でやめたら全部損」。廃業・65歳・法人成りでの受け取りは元本割れしない。損になるのは、事業を続けたまま任意で解約する場合だけだ。

退職金の税金

退職金は退職所得控除(勤続20年まで年40万、20年超は年70万)を引いた残りの半分にだけ分離課税され、勤続20年で1,000万なら約15万、勤続30年で2,000万なら約40万で済む。受給に関する申告書を出さないと20.42%が源泉徴収される。勤続年数×金額の早見表は退職金の税金の早見表の記事で書いた。

転職した年のふるさと納税とiDeCo

転職した年のふるさと納税の上限は前職と現職を足した1〜12月の年収で決まり、退職金と失業保険は入らず、転職先で年末調整を受けるならワンストップ特例が使える(ふるさと納税は転職した年にどうなるかの記事)。iDeCoは転職で消えず、種別変更届を1枚出せば続き、企業型DCがある会社なら上限が月2万円に下がる(iDeCoは転職したらどうなるかの記事)。

独立・副業・お金の全体像

副業の申告→独立の資金と手続き→初年度の税と保険→稼ぎ方と手取り→将来の積立の5段階で、今いる段階の記事だけ読めばいい。全体は独立・副業・お金の完全ガイドにまとめた。

よくある質問

会社員の副業でも入れますか?

原則入れない。主たる事業が会社員の給与である人は加入資格の対象外とされている。独立して開業届を出してからの制度になる。

掛金は経費になりますか?

経費ではなく所得控除だ。事業の経費として売上から引くのでなく、所得から引く。効果は同じ方向だが、帳簿には載せない。

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