求人票に「退職金制度あり」と書いてある。あるのは分かったが、いくらもらえるのか、そもそも普通はいくらなのかが分からない。

厚生労働省が5年に1度、退職金の実態を調べている。最新の令和5年調査(2022年の退職者の実績)を、退職の理由別・勤続年数別・制度の形態別に並べた。4社に1社は退職金がない。ある会社でも形態で600万円違う

先に一文で。退職給付制度がある企業は74.9%で、大学・大学院卒の定年退職の平均退職給付額は1,896万円・自己都合は1,441万円、勤続20〜24年なら1,021万円で35年以上なら2,037万円、退職一時金のみの会社は1,623万円で年金と併用の会社は2,261万円と、制度の有無と形態で額が大きく変わる。

この記事の要点

  • 制度がある企業74.9%。30〜99人は70.1%、宿泊・飲食は42.2%
  • 定年退職の平均|大卒1,896万・高卒事務1,682万・高卒現業1,183万
  • 自己都合は定年より455万円少ない(大卒1,441万)
  • 勤続20〜24年1,021万→35年以上2,037万。形態で638万円の差

出典と数字の意味

出典は厚生労働省「令和5年就労条件総合調査の概況」の「退職給付(一時金・年金)の支給実態」。常用労働者30人以上の民営企業を対象に、2022年の1年間に退職した勤続20年以上かつ45歳以上の人への支給額を集計したものだ。退職給付は5年に1度の調査項目で、次は令和10年調査になる。

  • 退職給付額|退職一時金と退職年金(年金現価額)の合計。一時金だけの会社なら一時金の額
  • 対象|勤続20年以上かつ45歳以上の退職者。勤続10年前後で辞める人の額は含まれない
  • 学歴・職種|大学・大学院卒(管理・事務・技術職)、高校卒(管理・事務・技術職)、高校卒(現業職)の3区分

退職金がある会社の割合

区分制度がある企業の割合
全体74.9%
1,000人以上90.1%
300〜999人88.8%
100〜299人84.7%
30〜99人70.1%
電気・ガス・熱供給・水道業96.4%
金融業、保険業92.8%
製造業85.6%
情報通信業74.6%
医療、福祉75.5%
運輸業、郵便業69.9%
生活関連サービス業、娯楽業68.5%
サービス業(他に分類されないもの)54.4%
宿泊業、飲食サービス業42.2%

前回の平成30年調査では80.5%だった。5年で5.6ポイント減っている。制度がない会社は珍しくなくなっており、求人票で確認しないと分からない。制度がない会社の見方は退職金なしはやばいのかの記事で書いた。

制度がある企業の内訳は、退職一時金のみ69.0%、退職年金のみ9.6%、両制度併用21.4%。1,000人以上の企業では両制度併用が47.1%、30〜99人では一時金のみが77.2%になる。

退職の理由別の平均額

退職の理由大学・大学院卒(管理・事務・技術職)高校卒(管理・事務・技術職)高校卒(現業職)
定年1,896万円(月収の36.0ヶ月分)1,682万円(38.6ヶ月分)1,183万円(34.3ヶ月分)
会社都合1,738万円1,385万円737万円
自己都合1,441万円1,280万円921万円
早期優遇2,266万円2,432万円2,146万円

読み取れることは3つある。

1、自己都合は定年より455万円少ない。大卒で1,896万円と1,441万円。勤続20年以上でも、自分から辞めると2割以上減る。

2、早期優遇が最も高い。早期退職の募集に応じた人は、定年より370万円多い。会社が上乗せして辞めてもらう形が、そのまま数字に出ている。

3、現業職は事務・技術職の6〜7割。同じ高卒でも、定年で1,682万円と1,183万円。職種で500万円変わる。

前回調査(平成30年)と比べると、大卒の定年退職は1,983万円から1,896万円へ87万円減った。会社都合は2,156万円から1,738万円へ418万円減っている。

勤続年数別の平均額(定年退職者)

勤続年数大学・大学院卒高校卒(管理・事務・技術職)高校卒(現業職)
20〜24年1,021万円557万円406万円
25〜29年1,559万円618万円555万円
30〜34年1,891万円1,094万円800万円
35年以上2,037万円1,909万円1,471万円

勤続20〜24年と35年以上で、大卒は1,000万円、高卒事務は1,350万円の差がある。退職金は勤続年数で決まる仕組みが、統計上もそのまま出ている

この表は勤続20年以上の人だけの数字だ。勤続10年で辞める場合の相場は、別の計算になる(退職金の相場は勤続10年でいくらかの記事)。

制度の形態別の平均額(定年退職者・大学・大学院卒)

制度の形態平均退職給付額
退職一時金制度のみ1,623万円
退職年金制度のみ1,801万円
両制度併用2,261万円

一時金のみと両制度併用で638万円違う。同じ「退職金あり」でも、形態で年収1年分以上の差が出る。求人票の「退職金制度あり」の1行では、どの形態かは分からない。

求人票と面接で確認する3点

  1. 制度の有無|「退職金制度あり」の記載。なければ4社に1社の側
  2. 形態|一時金のみか、年金(企業年金・確定拠出年金)があるか、併用か
  3. 支給条件|勤続何年から支給されるか(3年からの会社が多い)、自己都合での減額率

面接で聞くなら「退職金制度は一時金と年金のどちらでしょうか。勤続何年から支給の対象になりますか」で足りる。給与欄と同じで、聞くことは失礼にならない(求人票の給与欄の読み方 完全ガイド)。

私は4回転職しているので、1社で勤続20年以上の退職金はもらえない前提で動いてきた。転職を重ねる人ほど、退職金の代わりに何で老後の資金を作るかを、早く決めるべきだ。企業型の確定拠出年金があれば転職時に持ち運べる。この数字は、1社に長くいる人のための数字だと分かって読む。

よくある誤解

「退職金は2,000万円くらいもらえる」。大卒の定年退職で1,896万円、それも勤続20年以上の人の平均だ。高卒現業職は1,183万円、自己都合なら大卒でも1,441万円になる。

「退職金制度があれば安心」。一時金のみの会社と併用の会社で638万円違う。制度の有無より、形態と支給条件で額が決まる。

よくある質問

退職金は減っていますか?

減っている。大卒の定年退職は平成30年調査の1,983万円から令和5年調査の1,896万円へ87万円減り、制度がある企業の割合も80.5%から74.9%へ下がった。

勤続20年未満で辞める場合の退職金はどのくらいですか?

この調査には含まれない。多くの会社は勤続年数に応じた支給率表を持っており、自己都合の減額もある。就業規則の退職金規程で自分の勤続年数の支給率を確認する。振り込まれる時期は退職金はいつ振り込まれるかの記事で書いた。

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