答えから言う。

退職金なしは、違法ではない。退職金は法律の義務ではなく、会社が定めるかどうかの制度だからだ。

ただし、やばいかどうかは別の質問だ。答えは「その分が他で払われているか」で決まる。払われていないなら、あなたは同じ働きで生涯の受取額が少ない側にいる。

順に書く。

この記事の要点

  • 退職金は法律の義務ではない。制度がない会社は普通に存在する
  • 見るべきは有無ではなく、無い分が月給・賞与に乗っているかだ
  • 退職金ありと無しの差は、長く勤めるほど大きくなる
  • 無い会社にいるなら、自分で積み立てる仕組みを早く作る

退職金なしが違法ではない理由

まず事実から。退職金を払えという法律は存在しない。

退職金は、会社が就業規則や規程で定めて初めて発生する約束だ。定めていない会社に支払いの義務はなく、退職金制度のない会社は統計上も一定の割合で存在する。中小企業やベンチャー、外資系では珍しくない。

だから「退職金なし=ブラック」という等式は成立しない。判定には、もう1つ情報が要る。

やばいかどうかの判定。無い分は、どこに行ったか

退職金の原資は、突き詰めればあなたの労働の対価の一部だ。制度がある会社は、毎月の給与の外に積み立てて、辞める時にまとめて払う。制度がない会社は、その分をどうしているか。ここで2つに分かれる。

問題ない型。退職金がない代わりに、月給や賞与の水準が高い。前払いしているという理屈が、数字で成立している。この場合、受け取りの時期が違うだけで、取引としては対等だ。むしろ若いうちに受け取って自分で運用できる分、合理的とすら言える。

やばい型。退職金がなく、給与水準は世間並みかそれ以下で、その分の説明が何もない。単純に、支払いの総量が少ない会社だ。

見分け方は単純で、同業同職種の求人と、月給・賞与を並べて比べる。退職金なしの会社の給与が同水準なら、生涯の受取で差が付く側にいる。

差額の大きさを、ざっくり掴んでおく

厳密な計算は制度と勤続年数によるが、規模感だけ持っておいてほしい。

退職金の相場は、勤続20〜30年でまとまった百万円単位から千万円台に届くことがある水準だ。この額が、ある会社とない会社の生涯の差になる。月給に数万円乗っている程度では、長期勤続では埋まらない差になり得る。

逆に言えば、数年で転職する前提の働き方なら、退職金の差は小さい。退職金は勤続年数で伸びる制度だから、短期での差額は限定的だ。あなたの働き方の前提によって、この項目の重みは変わる。

正直に書くと、私はキャリアの前半、退職金をほぼ気にしていなかった。転職を重ねる働き方では効かない制度だからだ。ただ、1社に長くいる前提の人にとっては話がまるで違う。自分がどちらの前提かを先に決めると、この問題の重さが決まる。

退職金なしの会社にいる人の自衛

いまの会社に退職金がないなら、やることは1つだ。

会社がやらない積み立てを、自分でやる。

  • 企業型DCがあるなら、まず中身を確認する(退職金の代わりにこれを置いている会社もある)
  • iDeCoやNISAで、退職金相当を自分で積み立てる。税制の優遇がある分、ただの貯金より効率がいい
  • 積立額の目安は、退職金がある会社との月給差+α

制度の詳細は金融機関や公式の情報で確認してほしい。ここで言いたいのは1つで、退職金なしの会社にいることは、老後資金の準備を会社任せにできないという意味だ。気づいた時期が早いほど、複利の分だけ有利になる。

転職の判断材料としての退職金

求人を見る時の扱い方も書いておく。

  • 退職金の有無だけで会社を切らない。月給・賞与込みの総額で比べる
  • 求人票に書いていなければ、面接で聞いていい。「退職金制度の有無と、確定拠出年金などの制度があれば教えてください」。失礼な質問ではない
  • 年収の額面が同じなら、退職金ありの方が生涯では上。この原則だけ覚えておく

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あわせて検索される疑問に、先に答えておく

退職金なしの会社では、自分で何をどれだけ積み立てればいいのか

置き換えの目安として、大企業の退職金の平均水準(勤続20〜30年で1,000万超の水準が語られることが多い)を自力で作るなら、月2〜3万円を20〜30年、利回りのつく形(iDeCo・NISA)で積み立てる計算になる。会社に退職金がない分、その月2〜3万円は貯蓄ではなく給与の一部(後払い分の自己管理)だと捉えるのが正しい。iDeCoなら掛金が全額所得控除になるから、退職金なしの人ほど税制メリットの恩恵が大きい。

面接で退職金の有無を聞いてもいいのか

オファー面談の段階なら、聞くのが当然の項目だ。退職金の有無・確定拠出年金(企業型DC)の有無と会社掛金・賞与の実績。この3点は生涯の受取額を数百万単位で左右する条件で、確認しない方がどうかしている。聞き方は「長く働く前提で、老後まわりの制度を確認させてください」で角は立たない。月給と年収だけ見て入社を決めるのは、値札の半分しか見ていないのと同じだ。DCの仕組みは確定拠出年金の用語解説にまとめてある。

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ここまでのまとめ

退職金は法律の義務ではない。制度がない会社は普通に存在する

見るべきは有無ではなく、無い分が月給・賞与に乗っているかだ

退職金ありと無しの差は、長く勤めるほど大きくなる

退職金の平均と制度がある会社の割合(公的データ)

厚労省の就労条件総合調査(令和5年)では、退職給付制度がある企業は74.9%(30〜99人は70.1%、宿泊・飲食は42.2%)、勤続20年以上の大卒の平均退職給付額は定年1,896万円・自己都合1,441万円、退職一時金のみの会社は1,623万円で年金と併用の会社は2,261万円だった。勤続年数別・学歴別の表は退職金の平均の記事で書いた。

自分で作る退職金と老後の積立

会社員の退職金がないフリーランスは、小規模企業共済(月7万まで全額控除、廃業時に退職所得として受け取る)で自分の退職金を作る。節税額の早見表とデメリットは小規模企業共済とはの記事、年金の差と積立の順番はフリーランスの老後資金の記事で書いた。

退職金の税金

退職金は退職所得控除(勤続20年まで年40万、20年超は年70万)を引いた残りの半分にだけ分離課税され、勤続20年で1,000万なら約15万、勤続30年で2,000万なら約40万で済む。受給に関する申告書を出さないと20.42%が源泉徴収される。勤続年数×金額の早見表は退職金の税金の早見表の記事で書いた。

貯金の中央値(公的データ)

家計の金融行動に関する世論調査2025の金融資産は、単身30代が中央値100万・平均501万、40代が100万・859万、二人以上は30代311万、40代500万で、ゼロの世帯が単身519%。平均は少数の世帯が引き上げるので、自分の位置は中央値と年収帯で見る。年代×年収の表は貯金の中央値と平均のデータ記事で書いた。

年金の平均受給額(公的データ)

令和6年度の老齢年金の平均月額は厚生年金150,289円(男性169,967円・女性111,413円)、国民年金59,310円で、厚生年金の19%は10万未満・19%が20万以上。令和8年度の満額は70,608円、モデル年金は237,279円。年収500万×40年なら月約16.2万で、独立後の期間は基礎年金の7.1万しか積み上がらない。年収別の早見表は年金は平均いくらもらえるかのデータ記事で書いた。

iDeCoの上限が月6.2万円に上がる

2026年12月分の掛金から、会社員のiDeCo上限は2.3万→6.2万(企業年金ありは合算6.2万、公務員5.4万、自営業7.5万)になり、加入は70歳未満まで延びる。節税は掛金×(所得税率+10%)で、年収500万なら年4.2万→11.2万、800万なら8.4万→22.6万。60歳まで引き出せないので、貯金6ヶ月分と数年内の大きな支出を先に見る。年収別の表はiDeCoの上限引上げと節税額の早見表の記事で書いた。

会社が倒産した時のお金

倒産による離職は会社都合扱いで失業保険は待期7日ですぐ90〜330日、離職票が出なければ仮手続き、未払いの給与と退職金は立替払制度で退職前6ヶ月分の8割(上限88〜296万)を国が立て替える。健康保険と年金は14日以内に切り替え、兆候が見えたら在職中に明細と勤怠を保存する。順番は会社が倒産したらの記事で書いた。

よくある質問

退職金なしは違法ですか?

違法ではない。退職金は法律で義務づけられた制度ではなく、会社が就業規則で定めるかどうかの問題だ。制度のない会社は一定の割合で存在する。

退職金なしの会社は避けるべきですか?

一律には言えない。その分を月給や賞与に乗せている会社なら合理的な取引だ。やばいのは、退職金がなく給与水準も普通で、説明が何もない会社だ。

退職金がない場合、自分でどう備えればいいですか?

企業型DCやiDeCo、NISAなどの制度を使って、退職金相当額を自分で積み立てる形になる。始める時期が早いほど有利になる。

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