給与が遅れた。社長が来ない。取引先から電話が来る。倒産という言葉が頭に浮かぶが、そうなったら給与も失業保険も退職金も消えるのか、何を先にすればいいのかが分からない。

給与の8割と失業保険は国が払う。倒産しても、給与の8割と失業保険は国が払う。順番を知っていれば。失業保険と、未払賃金の立替払と、健康保険と年金と、兆候が見えた時にやることを書く。

先に一文で。倒産による離職は会社都合扱いで失業保険は待期7日ですぐ90〜330日、離職票が出なければハローワークで仮手続き、未払いの給与と退職金は立替払制度で退職前6ヶ月分の8割(上限88〜296万)を国が立て替え、残りは破産手続で優先配当、健康保険と年金は14日以内に切り替え、兆候が見えたら在職中に明細と勤怠の記録を確保する。

この記事の要点

  • 失業保険|会社都合扱い。待期7日ですぐ。90〜330日。離職票なしでも仮手続き
  • 未払い給与|立替払で8割。上限は45歳以上296万・30〜44歳176万・30歳未満88万
  • 健康保険・年金|退職日の翌日に喪失。14日以内に国保と国民年金へ
  • 兆候が見えたら|明細・勤怠・契約書を保存、源泉徴収票と離職票を確保

倒産で受け取れるお金の一覧

お金どこからいくら手続き
失業保険(基本手当)ハローワーク日額×90〜330日離職票(なければ仮手続き)
未払いの給与・退職金労働者健康安全機構(立替払)未払い分の8割、上限88〜296万破産手続開始か労基署の認定+請求書
立替の残り2割と上限超破産手続の配当財産次第破産管財人に労働債権を届け出る
退職金(規定あり)同上規定の額。立替払の対象にもなる同上
有給の残り―(消える)買取は財産次第倒産前に消化する
賞与の未払い立替払の対象外破産手続の配当のみ労働債権として届出

失業保険|会社都合扱いですぐ受け取れる

倒産による離職は特定受給資格者で、給付制限なし、待期7日の後すぐ支給。給付日数は年齢と加入年数で90〜330日で、45歳・加入20年なら330日(会社都合と自己都合の違いの記事)。日額は失業保険の日額早見表の記事で確認する。

離職票が出ない時は、ハローワークで離職票なしの仮手続きができる。会社が雇用保険の資格喪失の届出をしない場合は、本人が被保険者資格の確認を請求する(離職票なしで失業保険を仮手続きする記事)。国保の保険料も、前年所得を30%として計算する軽減が受けられる。

未払賃金立替払制度

項目内容
対象の未払い退職日の6ヶ月前から請求の前日までに支払期日が来た定期賃金と退職金。賞与は対象外
立替の割合未払い額の8割
上限(退職時の年齢)45歳以上|未払い370万まで(立替296万)/30〜44歳|220万まで(176万)/30歳未満|110万まで(88万)
条件会社が1年以上事業を行っていた、破産・民事再生などの手続開始か労基署の事実上の倒産の認定、倒産の6ヶ月前〜2年以内の退職
請求先独立行政法人労働者健康安全機構。倒産の認定から2年以内
必要なもの立替払請求書(破産管財人か労基署の証明)、給与明細・雇用契約書・勤怠記録など未払い額の証拠

法的な倒産手続がない(社長が逃げた、事務所が閉まった)場合は、労働基準監督署に事実上の倒産の認定を申請する。退職から6ヶ月以内に申請する。立て替えられなかった2割と上限超は、破産手続で他の債権より優先される労働債権として届け出る。

健康保険と年金の切り替え

退職日の翌日に健康保険と厚生年金の資格を失う。倒産で会社が資格喪失の届出をしないと、健康保険証が使えない状態が続くので、年金事務所で本人が確認できる。

手続き期限内容
国民健康保険退職から14日以内市区町村。離職理由が倒産なら軽減あり(国民健康保険が高い時の対策の記事
任意継続退職から20日以内会社が保険料を滞納していた期間があると使えないことがある。国保と比べる
国民年金退職から14日以内退職特例で免除申請も可(退職後の年金の切り替え手続きの記事

会社が天引きした社会保険料を納めていなかった場合でも、本人の厚生年金の記録は保護される。ねんきん定期便で記録を確認する。

兆候が見えた時に、在職中にやること

兆候見え方
給与の遅配・分割払い最も強い兆候。2ヶ月続いたら特定受給資格者の要件(賃金の3分の1超が2ヶ月以上未払い)に入る
社会保険料・住民税の未納年金事務所や自治体からの通知、ねんきん定期便の欠落
取引先の入金遅れ、支払いの遅延、賃料の滞納経理の様子、督促の電話
経営者・経理担当の退職、突然の希望退職募集
  1. 証拠を保存する|給与明細・雇用契約書・就業規則・退職金規定・勤怠記録(タイムカード・PCログ・メール)。立替払と労働債権の届出で額の証拠になる
  2. 未払いの請求記録を残す|メールか書面で支払いを求める
  3. 源泉徴収票と離職票を確保する|担当者がいなくなる前に
  4. 有給を消化する|倒産後は消える
  5. 転職活動を始める|倒産・整理解雇による離職は面接で不利にならない

兆候の見分け方は会社が倒産しそうな兆候の記事、証拠の残し方は給与が2ヶ月遅れた時点で、倒産を待たずに辞めても会社都合扱いになる。待つ理由は、退職金の規定と、倒産後の立替払の上限だけだ。

私の1社目は美容業界のブラック企業で、残業代が出ず、給与も安定していなかった。倒産はしなかったが、給与が遅れる会社にいる時に、明細と勤怠を残していなかったことを後で悔やんだ。証拠がなければ、制度があっても額を証明できない。

よくある誤解

「倒産したら未払いの給与は諦めるしかない」。立替払制度で8割、残りは労働債権として優先配当。証拠があれば取り戻せる。

「離職票が出ないと失業保険は受けられない」。ハローワークで仮手続きができる。会社が手続きしなくても、本人の請求で資格を確認できる。

解雇予告手当の計算

解雇予告手当は30日に足りない日数分の平均賃金(直前3ヶ月の賃金総額÷暦日数)で、即日解雇なら30日分、月給30万なら約29.3万。試用期間14日以内や重責解雇(労基署の認定)は例外。受け取っても解雇の有効性は別に争え、解雇は失業保険で会社都合扱いになる。計算表は解雇予告手当の計算方法の記事で書いた。

未払い賃金の請求のやり方

未払い賃金は3年分を退職後でも請求でき、証拠(明細・勤怠の撮影・PCログ・メール送信時刻)を在職中に集め、額を計算して内容証明で請求し、払われなければ労基署の申告、あっせん、労働審判、訴訟(付加金)と進む。給与の3分の1超が2ヶ月以上未払いなら自分から辞めても会社都合扱い。順番と金額別の手段は未払い賃金の請求のやり方の記事で書いた。

労働基準監督署に相談するとどうなるか

労基署は未払い賃金・残業・有給拒否・解雇予告手当・安全衛生などの法律違反に立入調査と是正勧告をするが、パワハラ・不当解雇・回収の代行は権限外で労働局と労働審判の領域。相談は匿名でよく申告は名乗って行い、労基署は申告者を明かさず、証拠が揃うほど早く動く。振り分けと手順は労働基準監督署に相談するとどうなるかの記事で書いた。

よくある質問

会社が消えて誰にも連絡が取れません

労働基準監督署に事実上の倒産の認定を申請する(退職から6ヶ月以内)。認定が出れば立替払を請求できる。ハローワークでは仮手続きで失業保険を進める。

立替払はいつ振り込まれますか?

請求から1〜2ヶ月程度。破産管財人の証明が要る場合は、管財人が確定してからになるので、倒産から半年前後かかることもある。その間の生活費は失業保険で賄う。

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