残業代が付いていない。給与が遅れている。言えば居づらくなる気がして、何も言わずに辞めようとしている。でも辞めたら、その分は諦めるしかないのか。

未払いは3年分請求できる。未払いは3年分請求できる。証拠と順番があれば、退職後でも取れる。証拠の集め方と、請求書の書き方と、労基署・審判の使い分けと、金額別の手段を書く。

先に一文で。未払い賃金は3年分を退職後でも請求でき、証拠(明細・勤怠・ログ・メール)を在職中に集め、額を計算して内容証明で請求し、払われなければ労基署の申告、あっせん、労働審判、訴訟(付加金)と進み、給与の3分の1超が2ヶ月以上未払いなら自分から辞めても会社都合扱いで、倒産なら立替払で8割が出る。

この記事の要点

  • 時効3年(退職金5年)。退職後でも請求できる
  • 証拠は在職中に|明細・勤怠の撮影・PCログ・メール送信時刻・シフト表
  • 順番|内容証明→労基署→あっせん→労働審判→訴訟(付加金)
  • 給与の3分の1超が2ヶ月未払いなら、辞めても会社都合扱い

請求できるもの と 時効

種類時効備考
給与・残業代・深夜/休日手当3年(2020年4月以降の分)退職後でも請求可
賞与(規定で支給が確定しているもの)3年業績連動で裁量のものは難しい
退職金5年規定がある場合
解雇予告手当3年解雇予告手当の計算の記事
有給の買取義務はなく、合意した分だけ

証拠の集め方(在職中に)

証拠取り方
雇用契約書・労働条件通知書・就業規則(賃金規定)コピーか撮影。就業規則は閲覧を求める権利がある
給与明細(3年分)紙は保管、Web明細はPDF保存
タイムカード・勤怠システム毎月スマホで撮影
PCのログイン・ログアウト時刻毎日メモ、可能ならスクリーンショット
業務メール・チャットの送信時刻自分宛てに転送。深夜・休日の送信が残業の証拠
シフト表・業務日報・入退館記録撮影
未払いを求めたやり取りメール・書面で残す

会社の記録が取れなくても、手帳・交通系ICカードの履歴・家族へのメッセージの時刻を組み合わせれば認められることが多い。会社が労働時間を管理していなかったこと自体が、会社に不利に働く。

額の計算

残業代=月給(通勤・家族・住宅手当と賞与を除く)÷月平均所定労働時間×割増率×時間。月給30万なら時間単価1,875円、時間外2,344円、月45時間で10.5万、3年で378万。固定残業代がある場合は、その時間を超えた分と、固定額が計算より少ない差額(残業代の計算方法と早見表の記事)。月ごとに表にして、合計と根拠を請求書に付ける。

会社への請求書(内容証明)

内容証明郵便で送る。書く内容は、①未払いの種類と期間、②月ごとの内訳と合計、③計算の根拠(時間単価・割増率・時間)、④支払期限(2週間程度)と振込先、⑤期限までに払われなければ労基署への申告と法的手続きに進む旨。内容証明での催告は、時効の完成を6ヶ月止める。退職後に送る場合も同じ。

払われない時の順番

段階内容費用・期間
1 労働基準監督署に申告労基法24条・37条違反として是正勧告。匿名可。回収の代行はしない無料
2 労働局のあっせん第三者が間に入る。会社が応じなければ終了無料、1〜2ヶ月
3 労働審判裁判所で3回以内の期日。調停か審判2〜4ヶ月。弁護士は着手金10〜30万+回収の15〜20%
4 訴訟判決。未払い額と同額の付加金と遅延損害金(退職後は年14.6%)を請求できる半年〜1年以上

申告や請求を理由にした不利益な扱い(解雇・減給・配転)は違法で、それ自体が次の請求の対象になる。

金額別の現実的な手段

未払い額手段
10万未満内容証明+労基署の申告まで。弁護士費用が上回る
10〜100万あっせんか労働審判。本人申立てか、司法書士・弁護士
100万超弁護士に頼んで労働審判か訴訟。付加金と遅延損害金込みで請求

給与が遅れている会社にいる時

給与の3分の1を超える額が2ヶ月以上未払いなら、自分から辞めても特定受給資格者(会社都合扱い)になり、給付制限なしで失業保険を受けられる(会社都合と自己都合の違いの記事)。倒産した場合は、未払賃金立替払制度で退職前6ヶ月分の8割(上限88〜296万)を国が立て替える(会社が倒産したらの記事)。未払いの会社に居続ける理由はない。証拠を集めて、辞めて、請求する。

私の1社目は美容業界のブラック企業で、残業代が出ず、休日出勤も当たり前だった。当時は証拠を残さず辞めたので、請求できる額があっても証明できなかった。3年の時効も知らなかった。今なら、辞める前に3ヶ月の明細と勤怠を撮って、内容証明を1通送る。それだけで結果は変わっていた。辞め方の全体は退職後の手続き完全ガイドで書いた。

よくある誤解

「辞めたら未払いは請求できない」。3年分を退職後でも請求できる。退職金は5年。

「証拠がないと無理」。会社の記録がなくても、自分の記録の組み合わせで認められることが多い。会社が管理していなかったこと自体が会社に不利だ。

休日出勤の手当と振替・代休の違い

休日出勤は法定休日1.35倍・法定外休日1.25倍(週40時間超)・深夜は+0.25で、月給30万なら日曜8時間で約2万、土曜8時間で約1.9万。事前の振替休日なら割増なし(週40時間超は1.25)、事後の代休なら割増分0.35が残り、振替も代休もない休日出勤は全額請求できる。計算表は休日出勤の手当はいくらかの記事で書いた。

労働基準監督署に相談するとどうなるか

労基署は未払い賃金・残業・有給拒否・解雇予告手当・安全衛生などの法律違反に立入調査と是正勧告をするが、パワハラ・不当解雇・回収の代行は権限外で労働局と労働審判の領域。相談は匿名でよく申告は名乗って行い、労基署は申告者を明かさず、証拠が揃うほど早く動く。振り分けと手順は労働基準監督署に相談するとどうなるかの記事で書いた。

よくある質問

労基署に申告すると会社にバレますか?

匿名で申告でき、申告者を明かさないよう求められる。ただし未払いの内容から本人が推測されることはある。申告を理由にした不利益な扱いは違法だ。

請求したら会社が「そんな残業は認めていない」と言ってきました

指示や黙認があれば労働時間になる。深夜・休日のメール送信、上司の指示のメール、業務量の記録が黙認の証拠になる。会社が労働時間を管理していなかったなら、管理義務違反として会社に不利に働く。

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証拠の一覧チェックと、月ごとの未払い額の計算欄、内容証明の記入例、労基署から労働審判までの順番を並べた記入表を公式LINEで無料配布している。辞める前に、3ヶ月分の証拠だけは撮っておこう。

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