給与明細を見れば、文句を言える立場ではないと分かっている。周りからは「稼いでるんだからいいじゃん」と言われる。だからこのきつさを、誰にも言えない。
年収600万前後の人の相談には、共通の特徴がある。冒頭に必ず言い訳が付く。「恵まれているのは分かっているんですが」と一言置いてから、本題が始まる。まとめるとこうなる。
「年収は600万ほどで、同年代より多いと思います。ただ残業が常態化していて、平日は家に寝に帰るだけです。土曜も月2回は仕事です。恵まれているのに辞めたいと思う自分は、贅沢なのでしょうか。転職したら年収が下がるとも聞くので動けません」
先に答えを言う。
額面の議論をやめて、時給に直せ。それだけで、この悩みの解像度は一気に上がる。
この記事の要点
- 年収600万の価値は、労働時間で割った時給で初めて判定できる
- 月の総労働時間が250時間を超えているなら、額面の割に時給は高くない
- 同じ600万で労働時間の短い会社は実在する。下げる覚悟はまだ早い
- 「恵まれているのに辞めたい」は贅沢ではなく、交換条件の見直しだ
年収600万を、時給に直してみる
計算は単純だ。年収を、年間の総労働時間で割る。
ざっくりやってみる。所定労働が月160時間、残業が月60時間、休日出勤が月2回で16時間。月の総労働はおよそ236時間。年間で2,800時間を超える。
600万をこれで割ると、時給に直して2,100円前後になる。
一方、同じ600万を残業月20時間の環境で稼いでいる人の時給は、およそ2,800円。同じ額面で、時間単価は3割以上違う。
あなたが売っているのは、労働という商品だ。額面は売上で、時給が単価だ。単価を見ずに売上だけで恵まれていると判定するのは、商売としては雑な計算なんよ。
まず自分の数字でこの計算をやってほしい。スマホの電卓で2分で終わる。
きつさと年収の交換が、成立しているかを見る
時給が出たら、次はこの問いに進む。そのきつさは、何かと交換できているか。
交換が成立している例
- 数年後の役職や専門性に、いまの負荷が積み上がっている
- 繁忙に期限があり、終わりが見えている
- この経験が市場で高く売れることが分かっている
交換が破綻している例
- 5年後も同じ働き方をしている先輩しかいない
- 負荷が評価にも昇給にも反映されていない
- 睡眠と健康を削って、その分を通院と回復に払っている
破綻している場合、あなたは600万で時間と健康を売り続けていることになる。これは贅沢な悩みではない。条件の悪い取引を続けているという、実務の問題だ。
なお、眠れない・食欲がない・涙が出るといったサインが出ているなら、取引の見直しより先に医療機関だ。ここに紹介する商品はない。健康は、どの年収とも交換してはいけない資産だ。
下げる覚悟の前に、同じ600万で楽な市場を探す
「辞めたら下がる」という思い込みで止まっている人が多い。順番が違う。
先に、同じ年収帯で労働時間の短い求人が存在するかを確かめる。存在するなら、下げる覚悟は不要になる。
年収600万の経歴は、転職市場で普通に交渉材料になる帯だ。まずタレントスクエア 年収診断で自分の相場を測っておくといい。いまの600万が市場の相場より安く売っている状態なら、移るだけで時給が上がる可能性すらある。無料で、その場で結果が出る。
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具体的に動くなら、この年収帯の転職は伴走型に相談する価値がある。アサインは20代〜30代のハイクラス志向に寄せたエージェントで、年収を維持しながら働き方を変えたいという注文に、求人の中身で答えてくれる型だ。登録も相談も無料。
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合わなければ断ればいい。断り方は断り文面45選に置いてある。
それでも決められない人へ
正直なところを書く。
この相談への答えは、私の中でも一枚岩ではない。きつさに耐えて700万の壁を越えに行く判断も、600万のまま時間を取り戻す判断も、どちらも見てきたし、どちらにも後悔している人と満足している人がいる。
だから、他人の正解をコピーしないでほしい。
私自身は4回目の転職で、年収を下げて時間と場所を取った。その選択の顛末は[4回目の転職で年収を下げた日の話](/articles/nenshu-sagete-seikai-datta)に書いた。上を目指す側の道は年収600万から700万の壁を越える方法にある。両方読んで、自分の電卓で決めてほしい。
求人票の年収表記の読み方は求人の年収レンジの読み方も参考になる。
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よくある質問
年収600万は恵まれている方ですか?
給与所得者の分布で見れば上位側に入る。ただし恵まれているかどうかは、その600万を何時間の労働と引き換えに得ているかで変わる。額面の位置と生活の質は別の問題だ。
きついのに辞めたら年収が下がりそうで動けません。
同じ年収帯で労働時間の短い会社は実在する。下げる覚悟の前に、時給換算で今より条件のいい求人を探すのが先だ。
年収を維持したまま楽になる転職は可能ですか?
可能性はある。きつさの原因が業界の商習慣や会社の体制にあるなら、同職種で環境を変えるだけで労働時間が変わる。
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時給換算のシートや条件整理のテンプレをLINEで無料配布している。「恵まれているのに」という前置きを、今日で外してほしい。




