求人票の「月給25万円〜35万円」という1行。この数字だけで応募先を比べると、ほぼ確実に損をする。同じ月給でも、基本給の額・固定残業代の有無・手当の性質・賞与の算定基礎で、年収は数十万円変わる。

この記事は、給与欄の用語を分解して比べるための入口だ。用語ごとの詳細は専用記事に置いてある。読む順番だけ、ここで決める。

先に一文で。求人票の給与欄は、基本給→固定残業代→手当の性質→賞与の算定基礎→年収例の内訳、の順に分解して読む。月給の総額で比べると、基本給を抑えて手当で見せている会社を高く評価してしまう。

この記事の要点

  • 月給=基本給+手当+固定残業代。比べるのは基本給
  • 固定残業代の時間数と、超過分の扱いを確認する
  • 手当は消えることがあり、賞与の算定に入らないことが多い
  • 年収例は最大値。固定部分の年収を面接で聞く

読む順番

  1. 基本給|土台。賞与・退職金・残業代はここから計算される
  2. 固定残業代|含まれていれば基本給はその分小さい
  3. 手当|職務・住宅・通勤など。性質で分ける
  4. 賞与|算定基礎と実績
  5. 年収例|内訳を分解する
求人票の表記分解すると
月給28万円基本給20万+職務手当3万+固定残業代5万(30時間分)
賞与年2回基本給の◯ヶ月分か、実績は何ヶ月分か
年収例600万円固定部分の年収+賞与の最大+インセンティブの上位

1、基本給と月給

月給が同じでも、基本給が違えば年収は変わる。賞与が基本給の4ヶ月分なら、基本給20万円と25万円で年20万円の差になる。

2、固定残業代(みなし残業)

「月給28万円(固定残業代30時間分・5万円を含む)」なら、30時間までは残業してもしなくても5万円、超えた分は別途支払う義務がある。

3、手当の性質

手当は会社側が調整しやすい部分だ。基本給を抑えて手当で月給を作っている会社は、賞与と退職金で差が出る。

消える手当を年収に入れない。引っ越し・異動・勤続年数で消える手当は、上乗せとして見る。

4、賞与とインセンティブ

賞与は会社の業績の分配、インセンティブは個人の成果の対価。求人票で並んでいても別の仕組みだ。

5、年収例と手取り

年収例は、賞与とインセンティブを最大限に見積もった数字であることが多い。面接で「固定部分だけの年収」と「平均的な社員の支給実績」を聞くと、実態に近づく。

面接で確認する言い方

求人票で分からない部分は、面接かオファー面談で聞く。聞くことは失礼にならない。

「月給の内訳(基本給と手当の額)と、固定残業代が含まれる場合はその時間数を教えていただけますか。賞与の算定は基本給ベースでしょうか」

言い回しの型は面接で給料を聞く丁寧な言い方の記事、希望年収を聞かれた時は希望年収の答え方の記事で書いた。内定後は労働条件通知書で書面を確認する(労働条件通知書の見方の記事)。

2つの求人を比べる例

A社B社
月給28万円28万円
基本給25万円20万円
固定残業代なし30時間分・5万円
手当通勤のみ職務手当3万円
賞与基本給×4ヶ月基本給×4ヶ月
年収436万円416万円

月給は同じ、年収は20万円違う。しかもB社は30時間の残業が前提に組まれている。給与欄の1行を分解するだけで、この差が見える

私が4社目で年収を下げて移った時も、月給でなく基本給と賞与の算定で計算したうえで決めた。下げる額を分かって下げるのと、知らずに下がるのは別の話だ。

よくある誤解

「月給が高い求人が良い求人」。内訳次第だ。手当と固定残業代で月給を作っている会社は、基本給が低く賞与も少ない。

「年収例は入社後の年収」。上位の数字であることが多い。平均的な社員の実績を聞かないと、実態は分からない。

手当の相場と支給割合(公的データ)

通勤手当90.2%・役付84.2%・家族62.3%・住宅45.7%という支給企業割合と、住宅1万8,700円・家族1万7,600円などの平均額は手当の相場と支給割合の記事で一覧にした。求人票の手当欄を平均と比べられる。

年代別の平均給料(公的データ)

厚労省の賃金構造基本統計調査(令和7年)では、フルタイムの平均賃金は月34万600円で、20〜24歳24.3万円・30〜34歳31.2万円・40〜44歳36.4万円・55〜59歳39.6万円、大企業と小企業で8万円、正社員と非正規で12万円の差があった。自分の位置は年代別の平均給料の記事で測れる。

転職の判断に使う公的データの一覧

年代別・業界別・役職別・学歴別・雇用形態別の平均給料、転職で上がる人の割合、転職理由、有給取得率、年間休日、手当の相場を、厚労省の原典ごとに場面別で並べた入口は転職の判断に使う公的データ一覧にある。

残業時間の平均(公的データ)

厚労省の毎月勤労統計調査(2025年分確報)では、フルタイム労働者の残業時間は月平均13.2時間で、運輸・郵便24.1時間が最長、医療・福祉6.7時間が最短だった。固定残業代30時間分はどの業界の平均も上回る。業界別の表と、自分の残業が平均の何倍かの測り方は残業時間の平均の記事で書いた。

平均年収と分布(公的データ)

国税庁の民間給与実態統計調査(令和6年分)では、平均年収は478万円(男性587万・女性333万)、年代別では20代前半277万・30代前半449万・40代前半516万・50代後半572万で、年収500万円超は全体の36.7%、700万円超は17.3%、1,000万円超は6.2%だった。真ん中の人は400万円台前半にいる。自分の年収が上位何%かは平均年収と分布の記事で測れる。

退職金の平均と制度がある会社の割合(公的データ)

厚労省の就労条件総合調査(令和5年)では、退職給付制度がある企業は74.9%(30〜99人は70.1%、宿泊・飲食は42.2%)、勤続20年以上の大卒の平均退職給付額は定年1,896万円・自己都合1,441万円、退職一時金のみの会社は1,623万円で年金と併用の会社は2,261万円だった。勤続年数別・学歴別の表は退職金の平均の記事で書いた。

2025年の賃上げ率(公的データ)

厚労省の賃金引上げ等の実態に関する調査(令和7年)では、賃金を引き上げた企業は91.5%、改定額は月1万3,601円・改定率4.4%で、5,000人以上は5.1%・100〜299人は3.6%、建設5.9%が最高で医療・福祉2.3%が最低、労働組合がある企業はない企業より0.8ポイント高かった。自分の昇給を規模と業界の平均と比べる手順は2025年の賃上げ率の記事で書いた。

よくある質問

給与欄に「経験・能力を考慮」としか書かれていません

幅が広い求人は、面接で自分の位置を聞く。「私の経験ですと、どのあたりを想定いただけそうでしょうか」で足りる。答えが曖昧なら、労働条件通知書が出るまで承諾しない。

求人票の年収と、労働条件通知書の年収が違いました

労働条件通知書が優先される。求人票は募集時の目安で、契約の内容ではない。差が大きければ承諾前に理由を聞き、納得できなければ辞退していい。

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