求人票に「裁量労働制」と書いてある。自由に働けそうにも見えるし、残業代が出ないという意味にも見える。どっちなんだ。

結論から言うと、時間の使い方の自由と引き換えに、労働時間に応じた残業代を手放す仕組みだ。ただし何もかもが一律になるわけではないし、そもそも適用できる業務が決まっている。仕組みから分解する。

この記事の要点

  • 実際の労働時間に関係なく、決めた時間だけ働いたとみなす制度だ
  • 深夜と休日の割増は、裁量労働制でも原則として対象になる
  • 対象になる業務は法令で決まっている。どの職種でも導入できるわけではない
  • みなし残業(固定残業代)とは別の仕組み。求人票では混同されやすい

仕組み。「みなし労働時間」という考え方

まず制度の骨格から。

通常の働き方では、実際に働いた時間に対して賃金が支払われる。法定の労働時間を超えた分には割増賃金(残業代)が発生する。

裁量労働制では、この計算方法が変わる。実際に何時間働いたかにかかわらず、あらかじめ労使で定めた時間だけ働いたものとみなす。

たとえば、みなし労働時間が1日8時間と定められていれば、実際に10時間働いた日も6時間で終えた日も、8時間働いたものとして扱われる。

これが「残業代が出ない」と言われる理由だ。通常の時間外労働に対する残業代は、みなし時間に含まれる形になる。

ただし、一律ではない。深夜と休日は別扱い

ここを知らない人が多いので、はっきり書いておく。

深夜労働(原則22時から翌5時)と休日労働については、裁量労働制でも割増賃金の対象になるのが原則だ。

つまり、「裁量労働制だから何時間働いても、いつ働いても一律」という説明は正確ではない。深夜に及ぶ働き方が常態化しているなら、その分の扱いがどうなっているかを確認する権利がある。

また、健康確保の措置も制度の前提になっている。労働時間の状況を把握し、必要な措置を取ることが会社側に求められる。「裁量労働制だから会社は労働時間を管理しなくていい」というのも、正確な理解ではない。

残業代が出ないことがどこから違法になるかの線引きは残業代が出ないのはどこから違法かに分けて書いた。

対象になる業務は決まっている

どの職種でも導入できる制度ではない。

裁量労働制には専門業務型企画業務型があり、それぞれ対象になる業務が法令で定められている。

  • 専門業務型——研究開発、情報処理システムの分析や開発、デザイナー、コピーライター、記者、一部の士業など
  • 企画業務型——事業の運営に関する企画・立案・調査・分析の業務で、一定の要件を満たすもの

単純に業務量が多い職種や、営業職全般に適用できるものではない。導入には労使協定や労使委員会の決議、本人の同意(企画業務型など)といった手続きも必要になる。

だから、自分の職種が対象として妥当かどうかは確認する価値がある。制度の適用が適切でない形になっている場合、それ自体が問題になる。

みなし残業(固定残業代)とは別の仕組みだ

求人票で最も混同されるのがここになる。この2つは別物だ。

裁量労働制みなし残業(固定残業代)
考え方決めた時間だけ働いたとみなす一定時間分の残業代を先に払う
超過分通常の時間外分は追加されない定めた時間を超えれば追加で発生する
対象業務法令で限定されている職種の限定はない

みなし残業は、定めた時間を超えれば追加の残業代が発生する。「45時間分を含む」なら、46時間目からは別に支払われるのが原則になる。この読み方はみなし残業45時間はやばいのかに書いた。

求人票で「裁量労働制」と書いてあっても、実態がみなし残業の説明である場合がある。どちらなのかを面接で聞き分けてほしい。

求人で確認する4項目

面接で聞くべきことを並べる。

  1. 「みなし労働時間は何時間で設定されていますか」——ここが全ての基準になる
  2. 「深夜と休日の割増はどう扱われますか」——原則として対象になる部分の確認
  3. 「実際の労働時間はどう把握されていますか」——健康確保措置の前提になる
  4. 「配属先の実際の労働時間はどのくらいですか」——制度と実態の差を見る

4つ目が最も重要になる。制度がどうであれ、実際の労働時間が長すぎるなら、それが働き方の実態だ。求人票の読み方全般は求人票の読み方に項目別で書いた。

聞きにくいと感じるなら、間に人を入れる手がある。担当は過去にその企業に人を送っている場合があり、実態を知っていることがある。

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向いている人と、向いていない人

制度そのものは、悪でも善でもない。噛み合うかどうかの問題になる。

向いている人

  • 成果で評価されることを望む人
  • 時間の配分を自分で決めたい人
  • 集中する日と抑える日を自分で組める人

向いていない人

  • 労働時間に応じた対価を明確にしたい人
  • 業務量を自分でコントロールできない立場の人
  • 生活のリズムを一定に保ちたい人

特に2つ目が要点になる。裁量労働制の「裁量」は、仕事の進め方を自分で決められることが前提だ。実際には上から降ってくる業務量で埋まっているなら、裁量がない状態で時間の対価だけを手放していることになる。

そこを見極めるのが、面接での4項目の確認になる。

あわせて検索される疑問に、先に答えておく

裁量労働制なのに、出社時間を細かく指示されます

制度の趣旨からすると違和感がある状態になる。裁量労働制は業務の進め方や時間配分を労働者の裁量に委ねる前提の制度で、始業・終業時刻を厳格に指示するのは、その前提と噛み合わない。ただし、会議の時間を指定する程度は業務上の必要として起こりうる。問題は程度で、実質的に時間を管理されているのに残業代の扱いだけ裁量労働制、という状態なら、労働基準監督署や労働局に相談できる材料になる。

裁量労働制の会社を辞めるとき、不利になりますか

退職の手続き自体は、他の雇用形態と変わらない。就業規則の定めに沿って申し出て、引き継ぎをして辞める。強いて言えば、労働時間の記録が残りにくい制度なので、長時間労働の実態を証明したい場合の材料が集めにくい。在職中から、勤務時間をメモやメールの送信記録で自分の側に残しておくと、後で必要になったときに使える。

転職先を選ぶとき、裁量労働制は避けるべきですか

一律に避ける理由はない。制度が合う人には、時間の使い方の自由が大きな利点になる。判断すべきは制度の名前ではなく、配属先の実際の労働時間と、本当に裁量があるかどうかだ。自分の市場価値を先に測っておくと、条件を比較する基準ができる。

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よくある質問

裁量労働制だと残業代は一切出ないのですか?

通常の時間外分はみなし時間に含まれるが、深夜労働と休日労働は原則として割増の対象になる。一律ではない。

裁量労働制はどんな職種でも導入できますか?

できない。専門業務型と企画業務型があり、対象業務が法令で定められている。手続きの要件もある。

みなし残業(固定残業代)と裁量労働制は同じものですか?

別の仕組みだ。みなし残業は定めた時間を超えれば追加で発生するが、裁量労働制は決めた時間だけ働いたとみなす。

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