求人票の月給30万円。悪くない数字に見えた。だがその下に小さく書いてある。「固定残業代(45時間分・8万円)を含む」。

これはやばい求人なのか、普通なのか。答えは、計算すれば見える。この記事は、みなし残業45時間の求人を数字で見抜く手順を書く。感覚で怪しむのではなく、電卓で判定できるようになってほしい。

この記事の要点

  • 45時間は法律の原則上限と同じ時間数。それを毎月織り込む意味を考えろ
  • 月給からみなし分を引いた基本給で比較する。見かけの月給に騙されるな
  • 超過分の支払い実態と、実際の平均残業時間。確認すべきはこの2つだ
  • みなし制度がある=ブラックではない。時間数と運用で判定する

45時間という時間数が持つ意味

みなし残業(固定残業代)の制度自体は合法で、まともな会社も使っている。問題は時間数だ。

残業月45時間は多いのかで書いた通り、45時間は36協定の原則上限にあたる。つまり、みなし45時間の求人は、法律が例外なしに許す残業の最大値を、最初から毎月の給与に織り込んでいることになる。

会社側の言い分は「実際にそこまで働かせるとは限らない。多めに払っているだけ」だ。それが本当の会社も存在する。だが逆に、45時間まで残業させても人件費が1円も増えない給与体系は、残業を抑える経営上の動機を消す。どちらの会社なのかは、この後の計算と確認で見分ける。

目安を書いておくと、みなし時間が20時間以下なら一般的な範囲、30時間で注意、45時間は要確認の水準だと私は見ている。45時間で即アウトではないが、無確認で入っていい数字でもない。

計算1。基本給を逆算する

最初の計算は、月給の分解だ。月給からみなし残業代を引いた額が、あなたの実質的な基本給になる。

月給30万円(固定残業代45時間分・8万円込み)なら、基本給相当は22万円。この22万円が、あなたの労働の本体価格だ。

なぜこの分解が大事か。賞与も退職金も、多くの会社で基本給をベースに計算されるからだ。「賞与4ヶ月分」が基本給22万円ベースなら88万円。みなしなし・月給26万円の会社の4ヶ月分は104万円。月給の見かけは30万の会社が勝っているのに、年収では逆転が起きる。

比較の手順はこうなる。

  1. 求人票の月給から、固定残業代の金額を引く(金額の記載がない求人は、それ自体が危険信号)
  2. 出てきた基本給ベースで、他の求人と並べ直す
  3. 賞与の算定基礎が基本給か月給かを確認し、年収ベースで比較する

計算2。時給に換算する

もう1つの計算は時給換算だ。月給30万円で毎月45時間残業する生活の時給を出す。

所定160時間+残業45時間=月205時間。30万円÷205時間=時給約1,463円。一方、みなしなしの月給26万円・残業10時間の会社なら、26万+残業代約2万円で28万円÷170時間=時給約1,647円。

月給が4万円低い会社の方が、時給では上。さらに自由時間は月35時間多い。この計算をやると、みなし45時間の求人の「月給30万」が何を売り物にしているのかが見える。買っているのはあなたの時間であって、高い月給ではない。

面接で確認する2つの質問

計算で警戒水準だと分かったら、面接で2つだけ確認する。

質問1、「実際の平均残業時間はどのくらいですか」。みなし45時間で実残業が15時間なら、多めに払うホワイトな運用だ。実残業も40時間超なら、織り込み通りの長時間労働になる。答えの具体性も見る。即答できない・部署によるとしか言わない会社は、把握していないか、言えない数字だ。

質問2、「みなし時間を超えた分の支払い実績はありますか」。超過分の支払いは法律上の義務だが、申請しにくい運用の会社が実在する。「超えることはほぼないので」という答えは、質問1との整合で嘘が見える。実残業40時間と言いながら超過が発生しないのは、数字が合わない。

この2つは、聞いて減点される質問ではない。むしろ数字で確認してくる候補者に丁寧に答える会社は、運用がまともな会社だ。答えの質そのものが判定材料になる。

口コミで裏を取る。最後の照合

面接の答えは、外の声と突き合わせて初めて確定する。残業の実態と、みなし超過分の支払いは、口コミに書かれやすい定番の不満だからだ。

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転職会議でみなし残業の実態を確かめる

見るキーワードは「残業代」「固定残業」「定時」あたりだ。求人票の建前、面接の回答、口コミの実態。3点が一致する会社を選ぶ。1点でも大きくずれる会社は、入社後もずれ続ける。

なお、みなし残業の制度の仕組みそのものは用語辞典のみなし残業と固定残業代に整理してある。SES求人でみなし45時間を見かけた人は、業界固有の事情も含めてやばいSESの見分け方を読んでほしい。

まとめ。判定のフローを1枚で

  • みなし45時間は、法律の原則上限を織り込んだ数字。無確認で入ってはいけない
  • 月給からみなし分を引いた基本給で比較する。賞与・退職金への波及で年収の逆転が起きる
  • 時給換算すると、月給の見かけの高さの正体が分かる
  • 面接で実残業と超過分の支払い実績を聞き、口コミで裏を取る
  • 3点照合が一致すればみなし制度でも問題ない。ずれる会社は避ける

求人票は、読む技術があれば会社の本音を語り出す。電卓を持って求人を読め。それだけで、入ってから気づく後悔の大半は入る前に潰せるんよ。

給与欄以外の項目も含めた読み方は求人票の読み方を項目ごとに解説した記事にまとめてある。

みなし残業とよく混同される制度については、裁量労働制の実際に違いをまとめた。

あわせて検索される疑問に、先に答えておく

みなし残業20時間の求人なら安心か

45時間よりはるかに健全な部類だが、確認の型は同じだ。実際の平均残業がみなし時間を大きく超えていないか、超過分が払われているか。20時間のみなしで実残業40時間・超過分未払いなら、45時間みなしより悪質になる。時間数は入口の判定で、運用の確認が本体だ。この2段を省略しない。

内定をもらってから固定残業の詳細を聞くのは失礼か

失礼ではなく、むしろオファー面談は労働条件を確定させるための場だ。固定残業代の時間数・金額・超過分の支払い、この3点を確認して書面(労働条件通知書)に反映してもらう。ここで渋る会社は、入社後も曖昧にする会社だと判定できる。条件確認の場での質問を嫌がる会社に、入ってから条件を守らせるのはもっと難しいんよ。

みなし残業の会社に入ってしまった。今からできることは

まず、自分の実残業とみなし時間の差を毎月記録する。超過が常態なら、超過分の請求権が毎月発生している。その証拠の残し方と動き方は残業代が出ないのはどこから違法かに書いた。転職を考える場合は、次の求人選びでこの記事の計算を使えば、同じ轍は踏まない。一度目は会社の責任、二度目は選び方の問題になるから、見抜く目だけは持ち帰ってほしい。

ここまでのまとめ

・45時間は法律の原則上限と同じ時間数。それを毎月織り込む意味を考えろ

・月給からみなし分を引いた基本給で比較する。見かけの月給に騙されるな

・超過分の支払い実態と、実際の平均残業時間。確認すべきはこの2つだ

そもそも、みなし残業とは何か

用語だけ確認したい人のために短く置く。みなし残業(固定残業代)は、一定時間分の残業代をあらかじめ月給に含めて支払う仕組みだ。ポイントは3つで、①含まれる時間数と金額が明示されていなければならない(求人票・雇用契約書で確認する)②みなし時間を超えて働いた分は、追加で残業代が支払われる義務がある③みなし時間分は、働かなくても支給される。つまり制度そのものは違法ではなく、問題になるのは超過分を払わない運用と、みなし時間が長すぎる(実態として長時間労働が前提の)設定の方だ。

求人票の「固定残業代含む」を読むところから

時間数だけを見て判断すると、基本給の低さを見落とす。何時間分か・基本給はいくらか・超過分はどうなるかの3点の確認手順はみなし残業とはの記事で書いた。

時間内に終わったら帰っていいのか

固定残業代がある会社で、残業が少なかった月に罪悪感を持つ人は多い。制度としては先に払っているものなので、時間内に終わったなら帰って構わない。理由と、帰りにくい空気への対処はみなし残業でも定時で帰っていいのかの記事で書いた。

給与欄の全体を分解して読む

基本給→固定残業代→手当→賞与→年収例の順に分解する手順は、求人票の給与欄の読み方 完全ガイドにまとめた。用語ごとの記事はそこから辿れる。

残業時間の平均(公的データ)

厚労省の毎月勤労統計調査(2025年分確報)では、フルタイム労働者の残業時間は月平均13.2時間で、運輸・郵便24.1時間が最長、医療・福祉6.7時間が最短だった。固定残業代30時間分はどの業界の平均も上回る。業界別の表と、自分の残業が平均の何倍かの測り方は残業時間の平均の記事で書いた。

残業代の計算と月給別の早見表

残業代は月給(通勤・家族・住宅手当と賞与を除く)÷160時間×1.25倍で、月給30万なら1時間2,344円、月45時間で10.5万、60時間超は1.5倍。固定残業代は額と時間を明細で確認し、超えた分と差額は請求でき、未払いは3年分請求できる。月給別の表と手順は残業代の計算方法と早見表の記事で書いた。

労働基準監督署に相談するとどうなるか

労基署は未払い賃金・残業・有給拒否・解雇予告手当・安全衛生などの法律違反に立入調査と是正勧告をするが、パワハラ・不当解雇・回収の代行は権限外で労働局と労働審判の領域。相談は匿名でよく申告は名乗って行い、労基署は申告者を明かさず、証拠が揃うほど早く動く。振り分けと手順は労働基準監督署に相談するとどうなるかの記事で書いた。

残業の上限(月45時間・年360時間)

残業は36協定がなければゼロ、結んでも原則は月45時間・年360時間。特別条項でも年720時間・単月100時間未満・複数月平均80時間以内・月45時間超は年6回までが絶対の上限で、超えれば罰則の対象になる。3ヶ月連続45時間超なら自分から辞めても会社都合扱いだ。判定の手順は残業の上限は月45時間・年360時間の記事で書いた。

その業務委託は偽装請負かもしれない

偽装請負かどうかは契約書の名前でなく実態で判断され、①依頼を断る自由②業務の遂行方法への具体的な指揮命令③場所と時間の拘束④代替性の有無⑤報酬が時間単位か、の5要素と補強要素で総合的に見られる。労働者と判断されれば、残業代(原則3年分)・有休・社会保険・解雇の制限・労災がまとめて適用される。判定はその業務委託は偽装請負かもしれないの記事で書いた。

会社の不正を通報して守られるのか

公益通報者保護法は通報先を①事業者(内部通報)②行政機関③報道機関等に分けて保護の条件を変えており、内部通報は「不正があると思料すること」で足りる。2026年12月1日施行の令和7年改正で、通報後1年以内の解雇・懲戒は公益通報を理由とすると推定され(立証責任の転換)、通報を理由の解雇・懲戒には直罰(法人は3,000万円以下の罰金)、フリーランスも保護の対象に入る。中身は会社の不正を通報して守られるのかの記事で書いた。

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応募前に求人票で見分けるなら求人票でブラック企業を見分ける5つのサインだ。

基本給と手当の割合で損をする仕組みは基本給が低くて手当が多い会社のデメリットだ。

よくある質問

みなし残業45時間の求人はやばいですか?

時間数だけで即アウトではないが、要確認の水準だ。法律の原則上限を毎月織り込む意味を、実残業と超過分の支払い実態で確かめてから判断する。

みなし残業45時間を超えた分の残業代は出ますか?

法律上は支払い義務がある。ただし運用は会社次第だから、面接で支払い実績を聞き、口コミで裏を取るのが現実的だ。

みなし残業代を含む月給はどう比較すればいいですか?

みなし分を除いた基本給ベースで比較する。賞与・退職金は基本給連動が多く、年収で見ると見かけの月給の高さが逆転することがある。

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