固定残業代30時間分が給料に入っている。でも今月は残業が5時間だった。もらいすぎな気がして、なんとなく席を立てない。
その罪悪感は要らない。制度の中身が逆だ。
先に一文で。固定残業代は残業した分を払う仕組みでなく、あらかじめ払っておく仕組みなので、時間内に終わらせて定時で帰るのは制度上まったく問題なく、会社が損をするわけでもない。
この記事の要点
- 固定残業代は「先に払う」もの。働かなくても支払われる
- 減額はできない。労働条件の不利益変更にあたる
- 会社が損することもない。歓迎される側だ
- 帰りにくいのは制度でなく空気の問題。切り分ける
制度の中身が逆
「30時間分の残業代が入っている」を、「30時間働く義務がある」と読んでしまう人が多い。違う。
固定残業代は、実際に残業したかどうかに関わらず支払われる。時間内に業務が終わったなら帰る。それが制度の前提だ。逆に30時間を超えたら、超過分は別途支払う義務が会社にある(みなし残業とはの記事)。
つまり社員側から見ると、早く終わらせるほど時給換算では得になる。
減額はできない
「今月は残業が少なかったから、固定残業代を減らす」。これは通らない。
固定残業代は毎月定額で払う約束として労働契約に組み込まれている。実際の残業が少なかったことを理由に一方的に減額するのは、労働条件の不利益変更にあたる。
もし給与明細でそうした処理をされているなら、労働条件通知書と突き合わせて確認する。実際に減額されているなら、労働基準監督署に相談する材料になる。
会社は損していない
「会社は30時間分払ってるのに5時間しか働かせられない、損だ」。そう思う必要もない。
企業が固定残業代を採用する目的は2つだ。
- 給与計算の手間を減らす|毎月の残業時間を集計して個別計算する負担が消える
- 人件費を読みやすくする|月ごとの変動が小さくなる
社員が早く終わらせることは、想定内どころか歓迎される。同じ成果が短い時間で出るなら、会社にとっても効率がいい。むしろ毎月きっちり30時間使い切る働き方のほうが、生産性の面では評価されにくい。
帰りにくいのは、空気の問題だ
ここを切り分けたい。制度上は問題ないのに帰れないなら、原因は職場の空気であって、あなたの認識不足ではない。
動き方は3つある。
1、成果を先に見せる
「本日の分は完了しています。◯◯は明日の午前に着手します」。帰る宣言でなく、進捗の報告として言う。これだけで角が立たなくなる。
2、帰る日を固定する
毎日は難しくても、「水曜は定時」と決めて宣言しておくと、周囲の期待値がそこで固まる。私も会社員時代、これで通した時期がある。
3、記録を残す
やった仕事と時間をメモしておく。「早く帰っている人」でなく「早く終わらせている人」だという材料になる。
評価が下がると言われたら
「定時で帰る人は評価しない」と明言する上司がいたら、それは制度でなく個人の方針だ。そしてその職場は長期的に消耗する。
私が1社目で潰れかけたのは、まさにこの空気の中にいたからだった。残業代も出ない、休日も出る、それが当たり前だという場所では、制度の話をしても意味がない。
定時で帰れる職場の探し方は定時で帰れる仕事の記事で書いた。固定残業の時間数が45時間を超えている会社は、そもそも長時間労働を前提に組まれている(みなし残業45時間はやばいのかの記事)。
よくある誤解
「もらいすぎた分は返すべき」。返す義務はない。契約通りの支払いであって、過払いではない。
「残業しないと固定残業代がなくなる」。労働契約の内容なので、会社が一方的に外すことはできない。変更するには本人の同意が要る。
よくある質問
定時で帰り続けたら、次の契約更新で固定残業代を外されませんか?
契約社員などで更新のたびに条件を提示し直す場合、理論上はありうる。ただし外すなら基本給や手当で調整するのが通常で、単純に総額を下げる提案なら断る余地がある。提示されたら、その場で同意せず持ち帰るのが正しい。
周りが全員残っている中で帰るのが気まずいです
「気まずさ」は制度で解決しない。それでも、帰る理由を毎回説明しないことがコツになる。説明を続けると、説明が要る行為だと周囲に認識される。挨拶だけして出るのが、結果的に一番早く定着する。
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