朝、客先のビルに入る。社員と違う色の入館証を首から下げて、隅の席に座る。誰の会社の人間なのか、自分でもわからなくなる時がある。

その感覚に名前をつけておく。惨めさの正体は、扱いの差だ。あなたの能力の話ではない。

先に一文で。客先常駐で惨めに感じる原因は席・情報・イベント・評価の4つの差にあり、能力の問題ではないので、感情を否定するより現場での実績を1つ言語化して抜ける準備に入るほうが早い。

この記事の要点

  • 惨めさの正体は4つの差。制度と運用の問題だ
  • 感じ方が弱いのではなく、実際に線が引かれている
  • 今の現場で減らせる消耗もある
  • 抜けるなら、在職中に実績を1つ言語化してから

惨めさの正体は4つの差

1、席と設備の差

隅の席、社員と違う入館証、使えない共有スペース。毎日視界に入るので、じわじわ効く。

2、情報の差

会議に呼ばれない。決まったあとに知らされる。判断の理由がわからないまま作業だけが降りてくる。

3、イベントの差

懇親会、表彰、社内の連絡網。含まれないこと自体は仕方ないが、目の前で行われるのがきつい。

4、評価の差

現場でどれだけ貢献しても、自社の上長は見ていない。評価は自己申告と単価で決まる。

どれも制度と運用の問題であって、能力とは関係がない。感じ方が弱いのではなく、実際に線が引かれている環境にいる。それだけだ。

今の現場で減らせる消耗

抜けるまでに時間がかかる人も多い。その間にできることがある。

  • 記録を残す|担当した工程、検出した不具合、改善した手順。自社の評価が現場を見ていないなら、見せる材料を作るしかない
  • 現場の人と1対1の関係を作る|組織の線は消せないが、個人の関係は作れる。質問できる相手が1人いるだけで、日々の消耗はかなり減る
  • 自社の上長に月1で報告する|聞かれてから答えるのでなく、こちらから出す。単価交渉や案件変更の時に効く
  • 比べる相手を変える|社員と自分を比べても差は埋まらない。半年前の自分と比べるほうが、実際の前進が見える

それでも合わないなら、抜ける準備をする

1、実績を1つ言語化する

これを最優先でやる。「テストを担当した」では通らない。

「◯◯システムの結合テストで不具合を△件検出し、再発防止の確認手順を作成した」

ここまで書ける状態を作ってから動く。ないまま動くと、選考で経験を説明できず、また同じ形態の会社に入ることになりやすい。

2、技術を具体名で棚卸しする

言語、フレームワーク、扱った規模、チーム人数、担当した工程。客先の社名は守秘で出せないことが多いので、業界と規模で書く(「金融系の基幹システム、約30名の開発チーム」)。

3、在職中に動く

辞めてからだと、経験の鮮度も説明の説得力も落ちる。収入が途切れる焦りは、条件の妥協に直結する。

自社開発や事業会社へ移る時の難しさと突破口は未経験から自社開発へ移る難しさの記事、雇用形態の壁を越えた人の動き方は派遣から正社員になれた人の記事で書いた。

会社を選び直す時の基準

同じ常駐でも、会社によって扱いはまったく違う。次を選ぶ時に見るのはここだ。

  • 案件を断れるか|「希望を出せる」でなく「断れるか」
  • 単価の話が通じるか
  • 1人常駐かチーム常駐か|1人配属は孤立しやすい
  • 社員が今どの工程にいるか

見極めの詳細は客先常駐とはの記事で書いた。

私の場合

私は常駐ではなかったが、1社目のブラック企業で「自分は替えの利く人間だ」と思わされ続けた時期がある。あの感覚は能力とは無関係で、環境が作っていたとあとでわかった。

環境を変えたら消えた。それだけの話だった。今しんどいなら、それは環境が原因である可能性のほうがずっと高い。

よくある誤解

「惨めだと感じるのは、プライドが高いから」。違う。扱いの差を認識できているだけだ。むしろ感じないほうが、状況を客観視できていない。

「常駐から抜けられない」。抜けている人は普通にいる。分かれ目は、現場の経験を自分の言葉にできているかどうかだ。

よくある質問

現場を変えてもらうことはできますか?

会社によるが、要望を出すこと自体は普通のことだ。伝え方は不満でなく、身につけたい経験の形で出す。「テスト以外の工程にも関わりたい」と具体的に言うほうが通りやすい。

常駐の経験は転職で不利になりますか?

形態そのもので不利になることは少ない。不利になるのは、工程と規模を説明できない場合だ。大手の開発現場に入っていたなら、それは自社開発の中小より濃い経験として評価されることもある。

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