求人票に「固定給25万円」とある。これは月給と同じ意味なのか。手取りでいくら残るのか。歩合と書いてある会社とどっちが得なのか。

先に全体を言う。固定給は「毎月固定で出る額面」のことで、手取りとは別の数字だ。そして求人票の月給欄には、読み方を知らないと損する仕掛けがいくつかある。定義→手取りとの差→求人票の読み方の順で、全部整理する。

この記事の要点

  • 固定給は成果と無関係に毎月決まって出る給与。歩合給と対の言葉だ
  • 手取りは額面の75〜85%。固定給25万円なら手取り20万円前後になる
  • 求人票の月給には、みなし残業代や手当が混ざっていることがある
  • 見るべきは月給の総額でなく、基本給とみなしの有無だ

固定給とは。3つの言葉の関係で覚える

似た言葉が3つあるので、関係で覚えるのが早い。

  • 固定給|成果に関係なく毎月決まって支払われる部分。歩合給(インセンティブ)と対になる言葉
  • 基本給|固定給の中核。ボーナスや退職金の計算基礎になることが多い、給与の土台部分
  • 月給|毎月支払われる総額。基本給+各種手当(+固定残業代)で構成される

つまり包含関係はこうなる。月給の中に固定給があり、固定給の中核に基本給がある。「固定給25万円」と「基本給25万円」は同じ意味ではない。前者は手当やみなし残業代込みの可能性があり、後者は土台が25万円という意味だ。この差は、ボーナス・残業代・退職金の計算で全部響いてくる。

歩合給との関係も一言で言える。営業職の求人にある「固定給20万円+インセンティブ」は、最低保証20万円で、成果次第で上が伸びる型だ。固定給の額はあなたの生活の底になるから、歩合で伸びる部分でなく、底の高さで毎月の生活が成り立つかを先に見る。

手取りとの違い。額面から2割引かれると覚える

固定給・月給は、どちらも額面の話だ。そこから引かれるものが5つある。

  1. 健康保険料
  2. 厚生年金保険料
  3. 雇用保険料
  4. 所得税
  5. 住民税(前年の所得に対してかかる。新卒1年目は引かれず、2年目から始まる)

引かれた残りが手取りで、目安は額面の75〜85%になる。ざっくり2割引かれると覚えておけば、大きくは外れない。

  • 固定給20万円 → 手取り16万円前後
  • 固定給25万円 → 手取り20万円前後
  • 固定給30万円 → 手取り23〜24万円前後

自分の条件での正確な数字は、手取り計算ツールに年収を入れれば内訳ごと概算できる。年収ベースの手取りの内訳は年収500万の手取りで書いた通りだ。

求人票の数字は全部額面だから、家賃や生活費の計算を額面のままやると、月に4〜6万円の見込み違いが起きる。転職の条件比較は、手取りに換算してからが本番になる。

求人票の月給欄。損する読み方と正しい読み方

ここからが実務の本体だ。求人票の「月給25万円」には、会社によって中身の違いがある。

仕掛け1、みなし残業代(固定残業代)が含まれている。「月給25万円(固定残業代45時間分・6万円を含む)」という書き方だ。この場合、残業ゼロでも45時間分の対価が最初から給与に織り込まれていて、基本給ベースは実質19万円になる。45時間を超えた分は別途支払う義務があるが、超えるまで残業代は1円も増えない。この型の見抜き方と危険水準はみなし残業45時間の求人がやばい理由で詳しく書いた。

仕掛け2、手当で膨らませている。基本給16万円+職務手当5万円+皆勤手当2万円=月給23万円のような構成だ。手当は会社の裁量で減らせる部分が多く、ボーナスの計算基礎(基本給)が薄いという弱点が隠れている。月給が同じでも、基本給の厚い会社の方が年収の総額は上になりやすい。

仕掛け3、幅のある表記の上限を見せている。「月給25万〜45万円」の上限は、経験豊富な中途の枠だ。あなたに提示されるのは下限寄りの可能性が高い。期待値は下限で組む。

正しい読み方は3手で終わる。

  1. 基本給がいくらかを見る(書いていなければ面接で聞く)
  2. 固定残業代の有無と時間数を見る
  3. 手取りに換算して生活費と比べる

面接・オファー面談での確認の言い方

給与の内訳を聞くのは失礼ではない。聞き方の型だけ添えておく。

  • 「月給の内訳を教えていただけますか。基本給と手当の構成を確認したいです」
  • 「固定残業代は含まれていますか。含まれている場合、何時間分でしょうか」
  • 「賞与の算定は基本給ベースでしょうか」

この3つで、月給欄の仕掛けは全部裏が取れる。口頭の回答は、最終的に労働条件通知書の書面で確認するところまでが1セットだ。書面をもらえない場合の対処は労働条件通知書がもらえない時で書いた。

年収交渉をするにしても、土台になるのはこの内訳の理解だ。総額の駆け引きより先に、何が固定で何が変動かを把握した人が、条件の話で損をしない。

年収での比べ方。月給×12にボーナスの読みを足す

求人の比較は最終的に年収ベースになる。ここでも固定給の理解が土台になる。

年収の概算式は、月給×12+賞与だ。そして賞与の求人票表記には信頼度の差がある。

  • 「賞与年2回(計4ヶ月分)」|基本給×4ヶ月が目安になる。ここで基本給の厚さが効く。月給23万円でも基本給16万円なら、賞与は64万円の計算だ
  • 「賞与年2回(業績による)」|金額の読みが立たない。面接で前年実績を聞くしかない
  • 「賞与実績○ヶ月分」|過去の実績であって約束ではない。業績が落ちれば減る

つまり、月給25万円・基本給薄めの会社と、月給23万円・基本給厚めの会社では、年収では後者が勝つことが普通にある。月給の見た目で選ぶと、この逆転を見落とす。

比較の手順としては、①各社の基本給とみなしの有無を揃える、②賞与を基本給ベースで概算する、③年収を手取りに換算する、の3手だ。ボーナスからも税金と社会保険料は引かれる(ボーナスの手取り計算で書いた通りだ)から、年収の額面差がそのまま手取り差になるわけではない点も、最後に押さえておく。

よくある質問

固定給が高い会社と、歩合の上限が大きい会社、どちらを選ぶべきですか?

生活の固定費が固定給で賄えるかを先に見る。固定給が生活費を下回る歩合型は、成果が出ない月に生活そのものが壊れる危うさを抱える。歩合で勝負するのは、固定給の底が生活を支えられる場合の話だ。

試用期間中は固定給が下がると言われました。合法ですか?

試用期間中の減額自体は、求人票や労働条件通知書に明示されていれば直ちに違法ではない。ただし最低賃金は下回れず、明示なしの減額は問題になる。金額と期間を書面で確認しておくべきだ。

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