転職先の求人が年俸制で、ボーナスなしと書いてある。月給は今より高いが、ボーナスがないのは損なんじゃないか。

答えは一点で出る。名目は無視して、年間総額だけを比べろ。年俸制の分割方法の話にすぎないことがほとんどだ。

先に一文で。年俸制のボーナスなしは違法でも異常でもなく、年俸の分割方法の違いにすぎない。損得は年間総額の比較だけで決まる。

この記事の要点

  • 賞与の支給は法律の義務ではない。ボーナスなしは違法ではない
  • 年俸制は12分割(ボーナスなし)か14〜16分割(一部を賞与形式)かの違いだ
  • 比較は常に年間総額で行う。月額の高さに惑わされない
  • ボーナスなしは退職時期の自由度が高いという利点もある

年俸制の仕組み。分割方法が違うだけ

年俸制は、1年間の給与総額を先に決める制度だ。決めた年俸をどう配るかは会社によって違う。

  • 12分割|年俸600万なら月50万。ボーナスなし
  • 16分割|年俸600万なら月37.5万+夏冬に75万ずつ。ボーナスありに見える

どちらも受け取る総額は600万で同じだ。つまり「年俸制でボーナスなし」は、損得の情報ではなく、配り方の情報にすぎない。月給の高さもボーナスの有無も、単体では何も語らない。

損得の判定。年間総額の一点比較

現職と転職先を比べる時の正しい式はこれだけだ。

現職|月給×12+賞与実績+各種手当の年額

転職先(年俸制)|年俸額+年俸に含まれない手当があればその年額

注意点は3つある。

  1. 賞与は実績で数える。現職の賞与を「規定では4ヶ月分」で数えず、直近の実額で数える。規定と実績の差が大きい会社は多い
  2. 手当の中身を見る。年俸に住宅手当や残業代が含まれるのか、別枠なのかで実質が変わる。残業代の扱いは特に重要で、年俸制でも残業代は出るのが原則だ
  3. 月給の見た目に注意。12分割の月給は16分割より高く見える。月額同士の比較は無意味で、常に年額へ戻す

固定給と手取りの関係の基本は固定給とは何かで書いた。

ボーナスなしの実務的な影響

年間総額が同じでも、配り方の違いが効く場面が3つある。

ローン・審査系。住宅ローンなどの審査は年収ベースなので影響は小さいが、月々の返済計画は月給の額で組むことになる。12分割は月のキャッシュフローが安定する分、むしろ組みやすい。

退職時期の自由度。ボーナスあり企業の退職は支給月との駆け引きが発生する(ボーナスをもらってから辞めるタイミングで書いた通りだ)。12分割の年俸制は、いつ辞めても取りこぼしがない。この身軽さは働く側の利点だ。

業績変動の受け方。賞与は会社業績のバッファとして減らされやすい。12分割の年俸制は期中の減額がされにくい代わりに、翌年の年俸改定交渉に業績が直接乗る。改定のタイミングと基準は入社前に確認しておくべき項目だ。

求人票でここを確認する

年俸制の求人で入社前に確認すべきは4点になる。

  • 年俸に残業代(みなし分)が含まれるか、含まれるなら何時間分か
  • 改定の頻度と基準(年1回か、評価との連動式か)
  • 賞与・インセンティブが年俸の外にあるか(外にあれば上振れ余地だ)
  • 社会保険・税引き後の月の手取り額。額面の月給が大きいと手取りの想像がずれやすい。手取り計算ツールに入れれば数秒で出る(無料・登録不要)

よくある誤解

「ボーナスなしの会社は、社員への還元意識が低い」。配り方と還元額は別の話だ。16分割で賞与を演出する会社より、12分割で総額が高い会社の方が実質の還元は上になる。演出に反応せず、総額で判定する。

「年俸制は成果主義だから、給料が不安定だ」。年俸制はむしろ期中の額が固定される制度で、月々の安定性は高い。変動が来るのは年1回の改定時に集約される。不安定さの正体は制度でなく、改定基準の不透明さなので、そこを入社前に聞く。

入社時にサインオンボーナス(一時金)がつくオファーの場合は、返還条項の確認が先だ。サインオンボーナスの返還義務で書いた。

よくある質問

年俸制の会社で、業績が良かったら年度の途中で上がりますか?

期中の増額は原則ない。上振れはインセンティブや決算賞与が年俸の外に設定されている場合に限られる。だから求人票の「賞与あり」が年俸の内数か外数かの確認が重要になる。

転職で年俸制になったら、税金や保険料の扱いは変わりますか?

変わらない。所得税も社会保険料も年間の支給額に対して掛かる仕組みで、月給制か年俸制かで損得は生じない。変わるのは毎月の天引き額の見た目だけだ。

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