内定が出て、労働条件通知書が届いた。あるいは、届かないまま入社日が近づいている。そもそもこれは何の書類で、どこを見ればいいのか。

位置づけから言う。これは、入社前に条件を確認できる唯一の公式文書だ。確認すべき8項目と、危ない記載の見抜き方を書く。

先に一文で。労働条件通知書は会社に交付義務のある条件明示の書類で、契約期間・勤務地と業務の変更範囲・労働時間・休日・賃金の内訳・固定残業代・昇給・退職の8項目を、承諾前に求人票と面接の説明と照らして確認する。

この記事の要点

  • 交付は会社の義務。もらえないこと自体が危険信号になる
  • 雇用契約書との違いは、通知(一方向)か契約(双方の合意)か
  • 必ず見る8項目。特に変更範囲と固定残業代の内訳
  • 求人票・面接の説明との食い違いは、承諾前に確認する

何の書類か。雇用契約書との違い

  • 労働条件通知書|会社が労働者へ条件を明示する書類。労働基準法で交付が義務づけられている。一方向の通知で、署名は必須ではない
  • 雇用契約書|双方が合意した証として署名・押印する契約書。作成自体は法律上の義務ではない
  • 実務では「労働条件通知書兼雇用契約書」として1枚にまとめる会社も多い

名称はどうでもよく、条件が書面(またはメール等)で手元に残っているかが本質だ。口頭の説明だけで入社するのは、言った言わないの温床になる。

必ず確認する8項目

  1. 契約期間|期間の定めの有無。有期なら更新の基準まで
  2. 就業場所と業務内容|そしてそれぞれの変更の範囲。近年は変更範囲の明示が求められるようになった項目で、「会社の定める場所・業務」とだけ書かれていたら、転勤や職種転換の可能性を面接で確認しておく
  3. 始業・終業時刻|残業の有無、フレックスや裁量労働の適用
  4. 休憩・休日・休暇|年間休日数、有給の付与
  5. 賃金|決定方法と内訳、締め日と支払日
  6. 固定残業代|時間数と金額の明示があるか。「月給30万円(固定残業代含む)」だけの記載は不十分だ
  7. 昇給に関する事項
  8. 退職に関する事項|定年、自己都合退職の手続き、解雇の事由

危ない記載のパターン

  • 固定残業代の内訳がない|何時間分でいくらか不明。超過分が払われるかも読めない
  • 月給の内訳がない|基本給・手当・固定残業代の区別が書かれていない。賞与や退職金の算定に響く
  • 変更範囲が無限定|「会社の定めるところによる」だけ。転勤・職種転換が青天井になり得る
  • 求人票と数字が違う|一番の危険信号。入口の情報の信頼度そのものが疑わしくなる

食い違いを見つけた時の確認の手順は通知書と条件が違う時の記事で書いた。承諾の前に確認するのが鉄則で、承諾後は交渉の力が落ちる。

もらえない場合

「入社後に渡します」は、順番が逆だ。交付は義務で、条件を見てから承諾するのが筋になる。請求の仕方と、出さない会社の危険度の読み方は通知書がもらえない時の記事で書いた。オファー面談があるなら、その場が一番自然な請求のタイミングになる。

なお、雇用契約書に署名する前の確認ポイントは雇用契約書の確認ポイントの記事が担当だ。

よくある誤解

「通知書に署名したら、条件は一切変えられない」。労働条件の不利益な変更には、原則として労働者の同意が必要だ。署名は条件を確認した証であって、将来の一方的な変更まで認めたことにはならない。

「メールで送られてきたものは正式な通知書ではない」。労働者が希望した場合、電磁的方法(メール等)での明示も認められている。紙かデータかでなく、必要な項目が明示されているかで判断する。

よくある質問

派遣やアルバイトでも交付されますか?

雇用形態にかかわらず、労働者を雇う場合の明示義務がある。パート・アルバイトには、昇給の有無や相談窓口など追加で明示すべき事項もある。もらっていないなら請求していい。

入社後に内容を確認したら、面接の説明と違っていました

まず書面と説明の食い違いを記録し、人事に確認を求める。事実の相違が大きい場合は、労働条件の相違を理由とした即時の契約解除も法的に可能な場合がある。動き方は条件が違う時の記事で書いた。

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