内定が出て、雇用契約書が送られてきた。どこを見ればいいのか。全部読むべきなのは分かるが、素人が読んで危険に気づけるものなのか。

先に言い切る。見るべきは9項目で、確認は全てサインの前に終わらせる。サイン後の交渉は難度が跳ね上がる。順に潰していけば15分で終わる作業だ。

雇用契約書とは、給与や勤務地などの労働条件について、あなたと会社の合意を証拠として残す書面である。

この記事の要点

  • 確認はサインの前が全て。署名後の交渉は難しくなる
  • 最優先は給与の内訳。固定残業代の有無と時間数を見る
  • 契約期間・変更範囲・退職規定まで見れば、危険はほぼ拾える
  • 求人票との食い違いは、書面のどちらが正しいかをその場で確認する

前提。この書類の位置づけを30秒で

雇用契約書は、あなたと会社の労働条件の合意を証拠として残す書面だ。似た書類との関係は、用語辞典の雇用契約書労働条件通知書で整理した通り、通知書は会社からの一方的な交付義務、契約書は双方の合意という違いがある。

大事なのは1点だけ。サインした内容が、入社後のあらゆる話し合いの土台になるということだ。「面接ではこう言われた」は、書面の前ではほぼ無力になる。だから確認の時間は、サインの前にしか存在しない。

確認9項目。優先順に潰す

1、基本給の額。月給の総額でなく、基本給がいくらかを見る。賞与・退職金の計算基礎になる土台だ。

2、固定残業代(みなし残業代)の有無。あるなら何時間分・いくらと明示されているかを確認する。「月給25万円(固定残業代45時間分6万円を含む)」なら、実質の基本給は19万円だ。明示のない固定残業代は、それ自体が違法性を帯びる。月給欄の読み解きは固定給とは何かで詳しく書いた。

3、手当の内訳と支給条件。通勤・住宅・役職など、どの手当がどの条件で出るか。条件を満たさないと消える手当は、年収の見積もりから外す。

4、契約期間。無期か有期か。有期なら更新の有無の記載まで見る。正社員のつもりで契約社員の契約書が出てくる事故は、実際に起きている。

5、試用期間。長さ(3〜6ヶ月が通常)と、期間中の給与・待遇の差の有無。

6、勤務地と職種の変更範囲。いまの法制度では、将来の配置転換の範囲まで明示するルールになっている。「会社の定める場所」という広い書き方なら、全国転勤がありうる契約だと読む。

7、所定労働時間と休日。始業終業の時刻、年間休日数、週休の形。求人票の「完全週休2日」と契約書の記載が一致しているかを見る。

8、退職の規定。退職の申し出期限(○ヶ月前など)。民法より長い期限が書かれていても法的には民法が優先されるが、揉め事の種としては先に知っておくべきだ。

9、副業の可否。禁止か届出制か。副業を考えているなら、ここで確認しておく。

危険な記載の型。この3つが出たら止まる

9項目を見る中で、出てきたらサインを保留すべき記載の型も知っておいてほしい。

  • 金額のない固定残業代|「業務手当は時間外労働の対価とする」とだけあり、何時間分いくらか不明。残業代計算の土台を曖昧にする書き方だ
  • 求人票と違う数字|求人票の月給・休日と契約書の記載が食い違う。この場合は契約書の方が優先されてしまうから、サイン前に「求人票と異なりますが、どちらが正しいですか」と確認し、正しい方を書面に反映させてもらう
  • 損害賠償の予定|「途中退職の場合は違約金○万円」のような記載は、労働基準法16条が禁じる賠償予定に当たる可能性が高い。この記載がある会社は、入口から法律を守る気がない

確認や修正の依頼は失礼ではない。書面を読んでから署名する人間は、会社から見ても入社後に揉めない相手だ。まともな会社なら丁寧に答える。

よくある誤解。「契約書がないと働けない」

逆方向の誤解も潰しておく。雇用契約自体は口頭でも成立するため、契約書がない=雇用が無効、ではない。ただし、労働条件通知書の交付は会社の義務で、書面が何もないまま働き始めるのは、条件の証拠ゼロで入社することを意味する。通知書すらもらえない場合の対処は労働条件通知書がもらえない時で書いた。

もう1つ、内定通知書と労働条件の書面の関係が曖昧な人は内定通知書と労働条件通知書の違いも併せて見てほしい。書類の名前が何であれ、条件が書面で確認でき、控えが手元に残ることが本体だ。

サイン前の最終動作。控えを確保する

全項目を確認したら、最後に1つ。署名した契約書の控え(またはコピー・PDF)を必ず受け取る。その場でもらえなければ「控えをいただけますか」と言えばいい。

入社後に「話が違う」が起きた時、あなたを守るのはこの控えだけだ。確認15分と控えの1枚で、入社後の交渉力はまるで変わる。契約書は儀式の紙ではなく、あなたの働く条件の唯一の証拠なんよ。

よくある質問

その場でサインを求められました。持ち帰ってもいいですか?

持ち帰っていい。「内容を確認したいので、○日までにお返しします」で通る。即日のサインを強要する会社は、読まれると困る何かがある可能性を疑っていい。

契約書の内容は交渉で変えられますか?

給与や条件そのものの交渉は内定承諾前が本番だが、記載の誤り・求人票との食い違い・曖昧な表現の明確化は、サイン前なら普通に修正を依頼できる。誤りの修正を渋る会社は、その対応自体が判断材料になる。

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