会社を辞めてフリーランスになった。健康保険と年金の切り替えは済ませたが、それ以外に何か入るべき保険があるのか、営業の電話で勧められる保険が必要なのかが分からない。

会社員が持っていた保障を並べると、消えるものが見える。会社員が持っていた保障は6つ。独立で残るのは2つだけだ。消えた4つの代わりを、月いくらで埋めるかを書く。

先に一文で。フリーランスの保険は必須の国民健康保険と国民年金に、任意の労災特別加入(年3〜9万)・所得補償保険(月1万前後)・賠償責任保険(フリーランス協会の年会費1万に付帯)を足した5種類で、会社員の傷病手当金・労災・賠償・退職金の代わりをこの3つと小規模企業共済で埋める。

この記事の要点

  • 必須2つ|国民健康保険(任意継続・国保組合も可)と国民年金
  • 消える保障|傷病手当金・厚生年金の上乗せ・労災・雇用保険・会社の賠償・退職金
  • 任意3つ|労災特別加入・所得補償保険・賠償責任保険
  • 生命保険・医療保険は会社員と同じ基準。扶養なしなら後回し

会社員の保障と、独立で消えるもの

会社員の保障内容独立後代わり
健康保険(医療費3割)病院の窓口負担残る(国民健康保険)
傷病手当金病気で休んだ時、給与の3分の2を最長1年6ヶ月消える所得補償保険
厚生年金老齢・障害・遺族の上乗せ消える(国民年金は残る)小規模企業共済・iDeCo・付加年金
労災保険仕事中のケガ・病気の治療費と休業補償消える労災の特別加入
雇用保険失業保険・育休給付・教育訓練給付消える貯金(代替の保険はない)
会社の賠償責任保険業務上の損害賠償消える賠償責任保険(フリーランス協会など)
退職金退職時の一時金消える小規模企業共済

残るのは医療費の3割負担と国民年金だけだ。国保が高いことより、傷病手当金がないことのほうが、独立後の生活には効く。国保の額と対策は国民健康保険が高い時の対策の記事で書いた。

必須の2つ

1、国民健康保険|退職翌日から14日以内に市区町村で手続き。退職後20日以内なら会社の健康保険の任意継続(最長2年)も選べ、年収500万円以上や扶養家族がいる人は任意継続が安いことが多い。業種によっては国保組合(文芸美術・建設など)が定額で安い。

2、国民年金|同じく14日以内に手続き。2026年度は月17,920円。売上が少ない年は未納にせず免除・猶予を申請する。付加年金(月400円)を一緒に申し込むと、2年で元が取れる上乗せになる(フリーランスの老後資金の記事)。

任意の3つ

3、労災保険の特別加入|2024年11月から、フリーランス(特定受託事業者)は業種を問わず加入できるようになった。仕事中や通勤中のケガ・病気の治療費が全額出て、休業4日目から給付基礎日額の8割が補償される。保険料は自分で選ぶ給付基礎日額(3,500〜25,000円)×365日×料率0.3%で、日額1万円なら年約1.1万円、日額2万円なら年約2.2万円と、思っているより安い。加入は特別加入団体(フリーランス協会など)を通す。現場仕事・移動が多い仕事・機材を扱う仕事は入る

4、所得補償保険|病気やケガで働けない期間、月額で決めた保険金を受け取る。会社員の傷病手当金の代わりで、免責期間(7日など)と補償期間(1〜2年、または60歳まで)で保険料が変わる。30代で月20万円の補償、免責7日、補償1年の場合、月1万円前後が目安。労災は仕事中のケガだけなので、私傷病(仕事と関係ない病気)を補うにはこちらになる。貯金が生活費1年分あるなら不要で、ないなら入る。

5、賠償責任保険|納品物の不備、納期遅れ、情報漏えい、著作権侵害などで取引先に損害を与えた時の賠償を補う。フリーランス協会の一般会員(年会費1万円)に、賠償責任保険(最大1億円など)が自動で付帯し、所得補償と労災特別加入も割引で入れる。取引先が法人で、契約書に損害賠償の条項がある仕事なら入る。契約書の見方は業務委託契約書のチェック項目の記事で書いた。

月いくらかかるか

保険月額の目安(30代・東京)
国民健康保険(所得300万)約3万円
国民年金+付加年金18,320円
労災特別加入(日額1万円)約900円
所得補償保険(月20万補償)約1万円
賠償責任保険(フリーランス協会経由)約830円(年会費1万円)
合計約6万円

会社員の時に給与から引かれていた社会保険料(年収400万で月約4.9万円、会社負担分を含めれば月約9.8万円)と比べると、自分で全部揃えても月6万円前後だ。高いのは国保で、任意の3つは合わせて月1.2万円ほどになる。

入らなくていい保険

  • 民間の医療保険|国保の高額療養費制度で、月の医療費は所得に応じて8〜9万円前後が上限になる。貯金があれば不要
  • 貯蓄型の生命保険|掛金の控除は小規模企業共済とiDeCoのほうが大きい。保障は掛け捨てで、積立は共済とiDeCoで分ける
  • 営業の電話で勧められる保険|必要な5つは上に書いた。それ以外は、何の保障が消えたかを説明できない限り入らない

扶養家族がいる場合は、掛け捨ての生命保険(収入保障型)を1つ足す。国民年金の遺族基礎年金は子がいる配偶者にしか出ないので、その差を埋める。

私は独立した年に国保と国民年金の切り替えだけをして、他の保険は入っていなかった。傷病手当金がなくなったことに気づいたのは、体調を崩して1週間仕事ができなかった時だ。会社員なら給与の3分の2が出ていた。今は所得補償を入れ、労災は2024年の対象拡大で加入した。順番は、消えた保障を書き出すところからでいい。

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所得補償保険と収入保障保険は、会社ごとに免責期間と補償期間の組み合わせが違い、同じ月20万の補償でも保険料が2倍違うことがある。一覧にして比べるなら、FPに無料で出してもらうのが早い。その場で契約せず、比較表だけ持ち帰る使い方でいい。

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よくある誤解

「フリーランスは労災に入れない」。2024年11月から業種を問わず特別加入できる。年1〜2万円で、治療費全額と休業補償が付く。

「保険は多いほど安心」。必要なのは消えた保障の代わりだけだ。医療保険と貯蓄型生命保険は、高額療養費と共済・iDeCoで代替できる。

傷病手当金の額

傷病手当金は標準報酬月額÷30×3分の2が日額で、月給30万なら月約20万・40万なら約27万、待期3日の後4日目から通算1年6ヶ月、非課税なので手取りで見れば給与の8割近くになる。月給別の早見表と申請の手順は傷病手当金はいくらもらえるかの記事で書いた。

国民年金が払えない年は免除にする

国民年金の免除は前年所得で判定され(単身で全額免除67万以下〜4分の1免除177万以下)、全額免除でも年金額に2分の1が反映されるが、未納は年金額にも資格期間にも入らず障害・遺族の保障も失う。退職した年は退職者の特例で本人の前年所得を除いて判定でき、追納は10年以内。申請の順番は国民年金の免除はフリーランスでも使えるかの記事で書いた。

独立・副業・お金の全体像

副業の申告→独立の資金と手続き→初年度の税と保険→稼ぎ方と手取り→将来の積立の5段階で、今いる段階の記事だけ読めばいい。全体は独立・副業・お金の完全ガイドにまとめた。

独立前に会社員のうちにやること

会社員の信用は辞めた瞬間に消える。クレジットカード・賃貸・ローンの契約、副業での受注実績、生活費6ヶ月+税と保険料の後払い分の貯金、健康診断、有給消化と6月以降の退職、企業型DCの移換先、在職中の給付、就業規則の競業避止の10個を1年前から順に進める(独立前に会社員のうちにやること10個の記事)。フリーランス1年目は賃貸の審査に落ちやすく、在職中の契約が最も確実だ(フリーランスは賃貸の審査に通らないのかの記事)。

産休の出産手当金はいくらか

産休98日の出産手当金は標準報酬日額の3分の2で、月給30万なら約65万、40万なら約87万。非課税で社会保険料は免除され、出産育児一時金50万は別に出る。退職後も1年以上の加入・産休中の退職・退職日に出勤しないの3条件で受け取れ、国保の人には出産手当金がない。月給別の早見表と育休給付との1年の合計は産休の手当はいくらもらえるかの記事で書いた。

よくある質問

フリーランス協会には入ったほうがいいですか?

賠償責任保険が要る人(取引先が法人)なら、年会費1万円で賠償・所得補償の割引・労災特別加入の窓口が揃うので、単体で入るより安い。個人客だけの仕事なら急がない。

会社員時代の傷病手当金は、退職後も受け取れますか?

退職前から受給していて、条件を満たせば退職後も継続できる。条件は退職後の傷病手当金の条件の記事で書いた。

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