体を壊して休職中だが、このまま退職することになりそうだ。傷病手当金は退職したら打ち切りなのか。生活費の頼みの綱なのに。
先に言い切る。2つの条件を満たせば、退職後も続けてもらえる。そして一番多い失敗は、退職日に出勤してしまうことだ。制度を正確に書く。
この記事の要点
- 継続給付の条件は2つ。継続1年以上の加入と、退職時点の受給状態だ
- 支給は同じ傷病について、支給開始から通算1年6ヶ月の範囲で続く
- 退職日の出勤は、継続給付の権利を消すおそれがある最重要の注意点だ
- 失業手当とは同時に受けられない。回復後に切り替える段取りがある
前提。傷病手当金の基本を30秒で
傷病手当金は、業務外の病気やケガで働けない期間、健康保険から支給される所得補償だ。支給額はおおむね給与(標準報酬月額ベース)の3分の2で、連続3日の待期の後、4日目以降の労務不能の日について支給される。用語の整理は用語辞典の傷病手当金にも置いた。
在職中の受給は分かりやすい。問題は退職後で、ここに継続給付という仕組みがある。
継続給付の2条件。両方が要る
退職後も受け続けるための条件は2つで、両方を満たす必要がある。
条件1、退職日までに、健康保険の被保険者期間が継続して1年以上ある。転職直後の人はここで引っかかることがある。前の会社と合わせて空白なく続いていれば通算できる扱いがあるため、際どい人は保険者(健康保険組合・協会けんぽ)に確認する。
条件2、退職日の時点で、傷病手当金を受給しているか、受給できる状態にある。受給できる状態とは、労務不能で待期3日を満たしていることだ。退職日にこの状態が切れていると、継続給付の入口が閉じる。
この2つが揃えば、支給開始日から通算1年6ヶ月の枠の中で、退職後も同じ傷病についての給付が続く。かつては暦の1年6ヶ月だったが、いまは通算の扱いで、途中で復帰した期間があっても支給日数として残る形になっている。
最重要の注意。退職日に出勤しない
継続給付を消す失敗の代表が、退職日の出勤だ。
最終日だからと挨拶に出社し、それが勤務として扱われると、退職日時点で労務不能ではなかったと判定され、条件2が崩れて退職後の給付がまるごと受けられなくなるおそれがある。長期の給付の権利が、最後の1日の律儀さで消える。これほど割に合わない失敗はない。
だから、療養で休んでいる人の退職日はこう扱う。
- 退職日は休んだまま迎える。出勤しない
- 挨拶は電話・メール・手紙で。義理は別の形で果たせる
- 貸与物の返却や書類は郵送で。退職代行を使う場合の流れと同じく、郵送で完結できる
- どうしても出社が必要な事情があるなら、事前に保険者へ扱いを確認してから動く
よくある誤解。「失業手当と両方もらえる」
退職後のお金として、失業手当(雇用保険の基本手当)を思い浮かべる人も多い。ここの整理を正確に。
傷病手当金と失業手当は、同時には受けられない。失業手当は「働ける状態で求職している人」への給付で、傷病手当金は「働けない人」への給付だから、前提が食い違うためだ。
正しい段取りはこうなる。働けない間は傷病手当金を受け、その間、失業手当は受給期間の延長を申請しておく。延長の手続きをすれば、本来1年の受給期間を先送りでき、回復して働ける状態になってから失業手当に切り替える道が残る。この延長申請を忘れると、療養が長引いた場合に失業手当の権利が時効で消えていく。ハローワークへの延長申請は、退職後の手続きリストに必ず入れておくことだ。
手続きの実務。申請は事後・医師の証明つき
継続給付の申請は、在職中と同じく保険者への申請書提出で進む。書式には医師の意見欄(労務不能の証明)があり、実際に休んだ期間について事後に申請する形が基本だ。退職後は会社の証明欄が不要になる期間が生じるなど、書き方が変わる部分もあるため、加入していた保険者の案内に沿って進めるのが確実になる。
なお、退職後の健康保険をどうするか(任意継続か国保か)は、継続給付の受給とは別の話として選べる。空白期間の保険の選び方は転職の空白期間の社会保険で書いた。
制度の細部(金額の計算・支給調整・最新の運用)は、協会けんぽ・健康保険組合の公式情報が最終の拠り所だ。この記事は骨組みの整理で、あなたの個別の判定は必ず保険者に確認してほしい。
療養中の人へ。制度はあなたを責めない
最後に、制度の話の外側を一言だけ。傷病手当金を受けて辞めることに、後ろめたさを感じる人がいる。この給付は、保険料を払ってきたあなたの権利であって、施しではない。働けない期間の生活を支えるために作られた仕組みを、作られた通りに使うだけの話だ。
心身の症状で判断力が落ちている時期は、手続きの細部が重く感じる。頼れる家族がいれば書類の準備を手伝ってもらい、症状との向き合い方と休職からの復帰の考え方で書いた通り、回復を最優先に置く。お金の心配を制度で軽くして、治すことに集中する。それがこの制度の使われ方として、一番正しい姿なんよ。
よくある質問
退職後に病状が悪化した場合や、別の病気になった場合もカバーされますか?
継続給付は、退職時点で受けていた同じ傷病についての給付だ。退職後に新しく生じた別の傷病は対象にならない。同じ傷病の悪化かどうかの判定は医学的な話になるため、主治医と保険者への確認が要る。
傷病手当金の受給中にアルバイトをしてもいいですか?
労務不能が支給の前提のため、働けば支給が止まる・返還を求められるリスクが生じる。短時間でも収入を伴う労働は、事前に保険者へ確認せずにやるべきではない。
療養退職の手続きリストをLINEで無料配布中
継続給付の条件チェックと、失業手当の延長申請を含む手続き一覧を、公式LINEで無料配布している。最後の1日を休み切ることも、あなたの権利を守る立派な手続きだ。

