独立したいが、貯金がいくらあれば動けるのか分からない。生活費の何ヶ月分か、税金はどうなるのか、周りの独立した人の話は金額がバラバラだ。
目安は3つの合計で出る。独立1年目は、会社員時代の税金を後払いする年だ。この後払いを入れずに計算すると、必ず足りなくなる。
先に一文で。独立の資金は生活費6ヶ月分+初年度に来る税金と保険料の先取り分(年収500万で退職なら約88万)+事業の初期費用10〜50万で、月25万の生活なら260万前後が目安、退職翌月に国保と年金、6月に住民税、翌年3月に所得税、7月と11月に予定納税と続き、収入と支払いが1年ずれる。
この記事の要点
- 資金=生活費6ヶ月+税と保険料の先取り+初期費用
- 年収500万で退職なら、住民税24万・国保42万・年金21.5万=約88万が売上に関係なく来る
- 時系列|翌月に国保・年金、6月に住民税、翌年3月に所得税、7月・11月に予定納税
- 副業で受注実績があれば、生活費は3ヶ月分に縮められる
資金の3つの内訳
| 内訳 | 目安 | 月25万の生活・年収500万で退職の場合 |
|---|---|---|
| 生活費6ヶ月分 | 月の生活費×6 | 150万円 |
| 税金と保険料の先取り分 | 前年年収で決まる | 約88万円 |
| 事業の初期費用 | 10〜50万円 | 20万円 |
| 合計 | 約260万円 |
2つ目を入れ忘れる人が多い。会社員の時は給与から引かれていた住民税と、会社が半分払っていた健康保険が、退職後は自分で、しかも前年の給与を基準に請求される。売上がゼロでも来る。
年収別の先取り分の目安
会社員として退職した年の翌年に来る額(40歳未満・東京23区・扶養なし)。
| 退職前の年収 | 住民税(年) | 国民健康保険(年) | 国民年金(年) | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 300万円 | 約12万円 | 約24万円 | 21.5万円 | 約58万円 |
| 400万円 | 約18万円 | 約33万円 | 21.5万円 | 約73万円 |
| 500万円 | 約24万円 | 約42万円 | 21.5万円 | 約88万円 |
| 600万円 | 約31万円 | 約52万円 | 21.5万円 | 約105万円 |
| 800万円 | 約45万円 | 約72万円 | 21.5万円 | 約139万円 |
国保は退職の翌年3月までは前年(会社員の年収)の給与所得で計算され、翌年4月からはその前年(退職した年の所得)で再計算される。会社都合や特定理由の離職なら、前年の給与所得を30%として国保を計算する軽減がある。国保の見直し方は国民健康保険が高い時の対策の記事で書いた。
時系列。いつ何を払うか
年収500万円で3月末に退職し、4月に独立した場合。
| 時期 | 払うもの | 額の目安 |
|---|---|---|
| 退職翌月(4月) | 国保・国民年金の切り替え手続き(14日以内)。最後の給与から住民税の残り(4・5月分)が一括徴収 | 住民税4万円前後 |
| 4月〜 | 国民年金 月17,920円、国保 月約3.5万円 | 月約5.3万円 |
| 6月 | 前年所得分の住民税の納付書(年4回、6・8・10・翌1月) | 1回約6万円 |
| 翌年3月15日 | 独立初年度の確定申告・所得税の納付 | 初年度の所得次第 |
| 翌年4月 | 国保が初年度の所得で再計算 | 売上が少なければ下がる |
| 翌年6月 | 住民税が初年度の所得で再計算 | 同上 |
| 翌年7月・11月 | 予定納税(前年の所得税が15万円超の場合、3分の1ずつ) | 初年度の所得税次第 |
独立1年目は会社員時代の所得に対する税と保険料、2年目は1年目の所得に対する税と保険料を払う。1年目の売上が少なかった人は2年目に楽になり、1年目から売上が伸びた人は2年目に重くなる。
失業保険と開業届の順番
退職後すぐ開業届を出すと、失業保険(基本手当)の受給資格がなくなる。自己都合退職は2ヶ月の給付制限(2025年4月以降は条件により1ヶ月)の後に受給が始まるので、受給を終えてから開業届を出すか、受給せずに最初から開業するかを決める。受給中に事業を始めると不正受給になる。再就職手当(開業でも対象になる場合がある)を含めた順番はフリーランスが開業届を出さない場合の記事で書いた。
資金を減らす3つの方法
1、副業で受注実績を作ってから独立する|売上の見込みが立っていれば、生活費は3ヶ月分でいい。副業からフリーランスに移る人は48万人いて、独立の入口として普通の順番だ(副業とフリーランスの割合の記事)。
2、退職の時期を選ぶ|1〜5月に退職すると住民税の残りが一括徴収されて手元の現金が減る。6月以降の退職なら、住民税は普通徴収で分割になる。
3、初期費用を最小にする|パソコンとネット回線があれば始められる仕事なら、初期費用は10万円以下。名刺・サイト・ロゴは売上が出てからでいい。
資金が足りない時の借入
日本政策金融公庫の新規開業資金は、担保・保証人なしで借りられる制度で、自己資金の要件は撤廃されている(2024年4月以降)。金利は年2〜3%台で、事業計画書と面談が要る。独立前に副業の実績と事業計画を作っておくと、審査に通りやすい。カードローンや消費者金融で運転資金を借りるのは、金利が10倍違うので避ける。
私は育休明けに退職してフリーランスになった。副業の収入が給与を超える月が出てからの独立だったので、生活費の心配は小さかったが、退職翌年の6月に来た住民税と、その前から来ていた国保の額は、売上と関係なく請求される重さとして残っている。売上の見込みと、後払いの額は別々に計算する。
開業の書類は無料で作る
開業届と青色申告承認申請書は、質問に答えるだけで作れるツールがある。税務署の書式を自分で埋めるより、記入漏れが出ない。
*クリックすると公式サイトが開く。開業届と青色申告承認申請書を無料で作成できるサービスで、e-Taxへの提出まで進められる。*
利用の流れ|① 屋号・住所・事業内容を入力する(10分) → ② 開業届と青色申告承認申請書が作成される → ③ e-Taxか印刷して税務署へ出す
よくある誤解
「貯金が生活費1年分あれば安心」。生活費だけの計算に、前年の税と保険料の後払い(年収500万で約88万)が乗る。1年分あっても、その計算を入れていなければ足りなくなる。
「売上が立たなければ税金もかからない」。独立1年目に来る住民税と国保は、会社員時代の所得に対するものだ。売上ゼロでも来る。
フリーランスの保険と契約の守り
会社員の保障6つのうち独立で残るのは医療費3割と国民年金だけで、消える傷病手当金・労災・賠償の代わりは労災特別加入(年1〜2万)・所得補償(月1万前後)・賠償責任保険(フリーランス協会)で埋める(フリーランスに必要な保険5種類の記事)。2024年11月のフリーランス新法で発注者には条件の書面明示と60日以内の支払いが義務になり(フリーランス新法を分かりやすくの記事)、契約書は損害賠償の上限・中途解約・競業避止の3ヶ所を直す(業務委託契約書のチェック項目の記事)。
ここまでのまとめ
・資金=生活費6ヶ月+税と保険料の先取り+初期費用
・年収500万で退職なら、住民税24万・国保42万・年金21.5万=約88万が売上に関係なく来る
・時系列|翌月に国保・年金、6月に住民税、翌年3月に所得税、7月・11月に予定納税
予定納税と簡易課税
独立2年目の6月には、1年目の所得税が15万円以上なら予定納税(3分の1ずつを7月と11月に前払い)の通知が来る(予定納税とはの記事)。インボイスの2割特例が2026年分で終わった後は、経費率が50%未満のサービス業なら簡易課税(受け取った消費税の50%)が原則課税より少なく、2027年分から使うなら2026年12月31日までに届出を出す(簡易課税制度とはの記事)。
帳簿と経費の実務
会計ソフトはfreee・弥生・マネーフォワードのどれも65万控除に対応し、簿記を知らない人はfreee、経験者か初年度を安くしたい人は弥生、法人化を見据える人はマネーフォワードが向く(個人事業主の会計ソフトの比較の記事)。経費の線は「売上を得るために使ったと説明できるか」の1つで、家賃と電気代は事業割合3〜5割で按分し、経費を増やすと手取りは減る(個人事業主の経費はどこまでかの記事)。
国民年金が払えない年は免除にする
国民年金の免除は前年所得で判定され(単身で全額免除67万以下〜4分の1免除177万以下)、全額免除でも年金額に2分の1が反映されるが、未納は年金額にも資格期間にも入らず障害・遺族の保障も失う。退職した年は退職者の特例で本人の前年所得を除いて判定でき、追納は10年以内。申請の順番は国民年金の免除はフリーランスでも使えるかの記事で書いた。
独立・副業・お金の全体像
副業の申告→独立の資金と手続き→初年度の税と保険→稼ぎ方と手取り→将来の積立の5段階で、今いる段階の記事だけ読めばいい。全体は独立・副業・お金の完全ガイドにまとめた。
請求書と屋号・口座の実務
請求書は宛名・発行者・番号・発行日・内容・金額(税抜/消費税/税込)・支払期日・振込先・登録番号の9項目で完成し、源泉徴収の仕事は税抜額×10.21%を引いた差引額を書く(フリーランスの請求書の書き方の記事)。屋号は任意で後から変えられ、口座とカードを事業専用に分けるだけで帳簿がほぼ自動になる(屋号の決め方と事業用口座の記事)。
失業保険の日額早見表(2026年8月改定)
失業保険の日額は退職前6ヶ月の月給÷30に50〜80%をかけた額で、月給20万で5,036円・30万で6,307円・40万で6,744円、上限は29歳以下7,450円・30〜44歳8,270円・45〜59歳9,110円。月給別・年齢別の表と、自己都合・会社都合の合計の目安は失業保険の日額早見表の記事で書いた。
独立前に会社員のうちにやること
会社員の信用は辞めた瞬間に消える。クレジットカード・賃貸・ローンの契約、副業での受注実績、生活費6ヶ月+税と保険料の後払い分の貯金、健康診断、有給消化と6月以降の退職、企業型DCの移換先、在職中の給付、就業規則の競業避止の10個を1年前から順に進める(独立前に会社員のうちにやること10個の記事)。フリーランス1年目は賃貸の審査に落ちやすく、在職中の契約が最も確実だ(フリーランスは賃貸の審査に通らないのかの記事)。
失業保険をもらいながら働く時の線
受給中の副業・アルバイトは週20時間未満で申告すれば認められ、1日4時間以上働いた日は手当が後ろに繰り越され、4時間未満の日は収入−1,354円+日額が賃金日額の80%を超えた分だけ減額される。業務委託やブログ収入も申告対象で、開業届を出すと止まり、隠すと3倍返しになる。判定と減額の式は失業保険をもらいながら副業・アルバイトはできるかの記事で書いた。
早く決まった人の再就職手当
受給中に早く就職すると、残日数×日額×70%(残3分の2以上)か60%を一括で受け取れる。給付日数90日で残60日・日額6,000円なら25.2万円。条件は待期後・残日数3分の1以上・1年超の雇用・雇用保険加入など7つで、自己都合の給付制限中の1ヶ月は紹介経由が条件になり、フリーランス開業も対象だ。計算例と申請の期限1ヶ月は再就職手当はいくらもらえるかの記事で書いた。
よくある質問
法人で独立する場合の資金は?
設立費用(株式会社で約20〜25万円、合同会社で約6〜10万円)が加わり、社会保険は会社として加入するので、役員報酬を決めた時点から保険料が発生する。法人化の判断時期は法人化のタイミングの記事で書いた。
資金が貯まるまでの期間はどう決めますか?
3つの内訳を出し、今の貯金との差額を月の貯蓄額で割る。差額100万円で月5万円なら20ヶ月。その間に副業で受注実績を作れば、生活費の月数を減らせるので、期間は短くなる。
独立の資料をLINEで無料配布中
独立の資金を3つの内訳と時系列で出す記入表(年収別の先取り分と、退職月ごとの住民税の扱いつき)を公式LINEで無料配布している。売上の見込みと、後払いの額を分けて計算しよう。


