インボイスに登録して、2割特例で申告してきた。それが2026年で終わると聞いた。次は簡易課税がいいと言われたが、何がどう違うのか、自分に合うのか、いつまでに何をすればいいのかが分からない。
簡易課税は、経費の少ない仕事ほど有利な計算方法だ。経費が売上の半分以下なら、簡易課税のほうが消費税は少ない。仕組み・比較・届出の期限を書く。
先に一文で。簡易課税は受け取った消費税にみなし仕入率(サービス業50%など)をかけて納税額を出す制度で、経費率が仕入率より低ければ原則課税より納税が少なく、売上5,000万以下で選べ、2027年分から使うなら2026年12月31日までに届出、一度選ぶと2年は戻せない。
この記事の要点
- みなし仕入率|卸売90%・小売80%・製造70%・その他60%・サービス50%・不動産40%
- 売上500万のサービス業|2割特例10万→簡易課税25万→原則課税40万
- 経費率がみなし仕入率より低いなら簡易課税が有利
- 届出は前年末まで。2027年分から使うなら2026年12月31日。2年縛り
3つの計算方法
| 方法 | 納税額の出し方 | 使える人 |
|---|---|---|
| 原則課税 | 受け取った消費税−支払った消費税 | 全員 |
| 簡易課税 | 受け取った消費税−(受け取った消費税×みなし仕入率) | 前々年の課税売上5,000万円以下で届出をした人 |
| 2割特例 | 受け取った消費税×20% | 免税事業者からインボイス登録した人。2026年9月30日までの課税期間 |
2割特例が終わった後は、原則課税か簡易課税のどちらかになる。制度全体はインボイスをフリーランス向けに分かりやすくの記事で書いた。
みなし仕入率の業種別一覧
| 区分 | 業種 | みなし仕入率 | 納める割合(受け取った消費税に対して) |
|---|---|---|---|
| 第1種 | 卸売業 | 90% | 10% |
| 第2種 | 小売業、農林漁業(飲食料品) | 80% | 20% |
| 第3種 | 製造業、建設業、農林漁業(その他) | 70% | 30% |
| 第4種 | 飲食店業、第1〜3種・5・6種以外 | 60% | 40% |
| 第5種 | サービス業、運輸通信業、金融保険業 | 50% | 50% |
| 第6種 | 不動産業 | 40% | 60% |
フリーランスの多く(デザイン・ライティング・開発・コンサル・講師など)は第5種のサービス業で、受け取った消費税の半分を納める。物を仕入れて売る仕事(ネット物販など)は第2種で、2割で済む。
納税額の比較
売上(税抜)ごとの納税額。原則課税は経費率20%(経費の全てに消費税がかかる前提)。
| 売上 | 受け取る消費税 | 2割特例(2026年分まで) | 簡易課税(第5種) | 原則課税(経費率20%) |
|---|---|---|---|---|
| 300万円 | 30万円 | 6万円 | 15万円 | 24万円 |
| 500万円 | 50万円 | 10万円 | 25万円 | 40万円 |
| 800万円 | 80万円 | 16万円 | 40万円 | 64万円 |
| 1,000万円 | 100万円 | 20万円 | 50万円 | 80万円 |
経費率がみなし仕入率(サービス業なら50%)より低ければ、簡易課税が有利。経費率20%のフリーランスなら、原則課税との差は売上500万円で年15万円になる。逆に外注費や仕入れが売上の半分を超える仕事は、原則課税のほうが少ない。
簡易課税の納税分は手取りから消えるので、個人事業主の手取り早見表の記事の数字からこの表の額を引いて読む。
届出の期限と2年縛り
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 出す書類 | 消費税簡易課税制度選択届出書 |
| 期限 | 適用したい年の前年12月31日まで(e-Taxなら年末でも可) |
| 2027年分から使う場合 | 2026年12月31日まで |
| やめる時 | 簡易課税制度選択不適用届出書。やめたい年の前年末まで |
| 縛り | 選んでから2年間は原則課税に戻せない |
| 例外 | 2割特例を使った翌年に簡易課税を選ぶ場合は、その年中の届出で適用できる特例がある |
2割特例を使っている人が2027年分から簡易課税にする場合、2026年中に届出を出す。判断は11〜12月に、翌年の経費と設備投資の見込みを出してからする。大きな買い物(パソコン・機材・車)で支払う消費税が増える年は、原則課税のほうが少なくなることがある。
簡易課税が不利になる場合
- 外注費・仕入れが売上の半分を超える(第5種の場合)
- 翌年に高額の設備投資がある
- 輸出など、受け取る消費税がない売上が多い
- 赤字で、支払った消費税のほうが多い年(原則課税なら還付)
2年縛りがあるので、翌年だけでなく翌々年の見込みも見る。
複数の業種がある場合
物販(第2種)とサービス(第5種)の両方の売上がある場合、原則は業種ごとに区分して計算する。1つの業種が売上の75%以上なら、その業種のみなし仕入率を全体に使える特例がある。区分していないと、最も低いみなし仕入率が全体に適用されて不利になるので、帳簿で売上を業種別に分けておく。
手間の違い
原則課税は、支払った経費のうち消費税がかかるものを区分し、インボイスを保存する手間がある。簡易課税は受け取った消費税だけで計算でき、支払い側のインボイスの保存が納税額の計算には不要になる。会計ソフトの設定を簡易課税にすれば、申告書は自動で作られる。
私はインボイスに登録して2割特例で申告してきた。取引先が法人で、経費が売上の2割前後なので、2027年分からは簡易課税の第5種にする。納税が売上の2%弱から5%に上がる分は、単価の交渉に乗せる。届出は2026年の年末に、翌年の経費の見込みを出してから出す予定だ。
よくある誤解
「簡易課税は簡単だから得」。得かどうかは経費率で決まる。経費率がみなし仕入率より高いなら、原則課税のほうが納税は少ない。
「届出はいつでも出せる」。適用したい年の前年末までで、出した後は2年戻せない。年内の判断になる。
帳簿と経費の実務
会計ソフトはfreee・弥生・マネーフォワードのどれも65万控除に対応し、簿記を知らない人はfreee、経験者か初年度を安くしたい人は弥生、法人化を見据える人はマネーフォワードが向く(個人事業主の会計ソフトの比較の記事)。経費の線は「売上を得るために使ったと説明できるか」の1つで、家賃と電気代は事業割合3〜5割で按分し、経費を増やすと手取りは減る(個人事業主の経費はどこまでかの記事)。
独立・副業・お金の全体像
副業の申告→独立の資金と手続き→初年度の税と保険→稼ぎ方と手取り→将来の積立の5段階で、今いる段階の記事だけ読めばいい。全体は独立・副業・お金の完全ガイドにまとめた。
請求書と屋号・口座の実務
請求書は宛名・発行者・番号・発行日・内容・金額(税抜/消費税/税込)・支払期日・振込先・登録番号の9項目で完成し、源泉徴収の仕事は税抜額×10.21%を引いた差引額を書く(フリーランスの請求書の書き方の記事)。屋号は任意で後から変えられ、口座とカードを事業専用に分けるだけで帳簿がほぼ自動になる(屋号の決め方と事業用口座の記事)。
よくある質問
売上が1,000万円以下でも簡易課税は使えますか?
使える。5,000万円以下が条件で、下限はない。インボイス登録で課税事業者になった売上300万円の人も対象だ。
簡易課税でも請求書にインボイスの記載は要りますか?
要る。簡易課税は自分の納税額の計算方法で、取引先があなたの請求書で仕入税額控除をするには登録番号入りのインボイスが必要だ。
独立の資料をLINEで無料配布中
経費率と業種から、2027年分の消費税を原則課税と簡易課税で比べる記入表(届出の期限カレンダーつき)を公式LINEで無料配布している。2026年の年末までに、どちらかを決めよう。

