開業届を出す。屋号の欄がある。何か付けるべきなのか、本名のままでいいのか。口座も事業用を作るべきだと聞くが、どこで作れるのか、何が変わるのかが分からない。
屋号は好みで、口座は分ける。それが答えだ。屋号はなくていい。口座は分ける。それだけで帳簿が楽になる。
先に一文で。屋号は義務でなく後から変えられ、法人と誤認させる言葉と他人の商標は使えず、決め方は事業内容が分かる・読める・検索して他にない・ドメインが取れるの4点、事業用の口座とカードを私用と分ければ会計ソフトの連携で帳簿がほぼ自動になり、屋号付き口座は開業届の控えで作れる。
この記事の要点
- 屋号は任意。開業届に書かなくてもよく、後から変えられる
- 使えない言葉|株式会社・法人・銀行など。他人の商標
- 決め方4点|事業内容が分かる・読める・検索して他にない・ドメインが取れる
- 口座とカードは事業専用にする。屋号付き口座は開業届の控えで作れる
屋号は必要か
| 屋号あり | 屋号なし(本名) | |
|---|---|---|
| 開業届 | 屋号欄に書く | 空欄でいい |
| 請求書・名刺 | 屋号+本名 | 本名 |
| 口座 | 屋号付き口座が作れる | 本名の口座を事業専用にする |
| 本名を出したくない場面 | 屋号で対応できる(契約は本名) | 本名になる |
| 変更 | 確定申告書に新しい屋号を書けば変わる | 後から付けられる |
屋号がなくて困ることはない。付ける利点は、口座と、見え方と、本名を出さない場面の3つだ。
使えない言葉
- 株式会社・合同会社・有限会社・法人・Inc.・Co., Ltd.など、法人と誤認させる言葉
- 銀行・信託・保険・証券など、許可が要る業種を示す言葉
- 他人が商標登録している名称(同じ区分の事業で使うと侵害になる)
- 有名企業やブランドと紛らわしい名前
商標は特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)で無料で検索できる。屋号を決めたら、商標と検索結果の2つを確認する。
決め方の4点
- 事業内容が分かる|「◯◯デザイン」「◯◯ライティング」「◯◯工房」。名前だけで何をしているか伝わる
- 初見で読める|英語や造語は、読み方をメールで聞かれる。請求書の宛名で間違われる
- 検索して同じ屋号の同業がいない|取引先が検索した時に別の事業者が出ると、信用に関わる
- 同じ名前のドメインとSNSアカウントが取れる|取れない名前は、後で必ず困る
4つ目を先に確認する人は少ないが、サイトとSNSの名前が屋号と揃っているかどうかで、後の集客の手間が変わる。
開業届への書き方
開業届の屋号欄に書く。読み仮名も書く。開業届の作成ツールを使えば、屋号を入れると書類全体に反映される(開業届の出し方の記事)。屋号を後から変える時は、変更届は不要で、次の確定申告書の屋号欄に新しい名前を書けば足りる。
事業用口座を分ける理由
私用と同じ口座を会計ソフトに連携すると、スーパーの支払いも家賃も取り込まれ、毎月1件ずつ「事業外」に振り分ける手間が出る。事業専用の口座とカードを1つずつ用意して連携すれば、取り込まれる取引はほぼ全部が事業のものになり、入力は月1時間で終わる。
| 分ける対象 | 用意するもの |
|---|---|
| 入金(売上) | 事業用の口座。請求書の振込先にする |
| 支出(経費) | 事業専用のクレジットカード(個人名義でよい) |
| 現金の経費 | 事業用の財布か、立替として記録 |
| 私用への移動 | 事業用口座から私用口座へ「事業主貸」として振り替える |
税務調査でも、口座が分かれていれば説明が早い。経費の線引きの説明も、口座が分かれていることが根拠になる(個人事業主の経費はどこまでかの記事)。
屋号付き口座を作れる銀行
屋号付き口座(名義が「◯◯デザイン ヤマダタロウ」のようになる)は、開業届の控えと本人確認書類を出せば作れる。ネット銀行、信用金庫、一部のメガバンクが対応している。審査に1〜2週間かかる。屋号付きでなくても、本名の口座を事業専用にすれば帳簿の効果は同じなので、急ぐなら本名の口座を1つ増やすだけでいい。
会計ソフトとの連携のしやすさは銀行で差があり、ネット銀行はAPI連携が安定している。連携の設定は個人事業主の会計ソフトの比較の記事で書いた。
ドメイン・SNS・名刺
- ドメイン|屋号と同じ名前を、.com か .jp で取る。年1,000〜3,000円
- SNS|X・Instagram・noteなど、使う予定がなくても同じ名前を確保しておく
- 名刺|屋号・本名・肩書き・連絡先・サイト。屋号を大きく、本名を小さく
- 請求書|発行者欄に「本名(屋号:◯◯)」。振込名義と本名を一致させる(フリーランスの請求書の書き方の記事)
私は独立した時に屋号を付けず、本名で始めた。口座だけは本名の事業専用口座を1つ増やして、カードも1枚分けた。それだけで、確定申告の入力は月に1度の確認で終わっている。屋号は後から、SNSの名前と揃えて付けた。順番はそれで問題なかった。
よくある誤解
「屋号がないと個人事業主として認められない」。認められる。屋号は任意で、開業届も本名だけで出せる。
「事業用口座は屋号付きでないと意味がない」。本名の口座でも、事業専用にすれば帳簿の効果は同じだ。
独立前に会社員のうちにやること
会社員の信用は辞めた瞬間に消える。クレジットカード・賃貸・ローンの契約、副業での受注実績、生活費6ヶ月+税と保険料の後払い分の貯金、健康診断、有給消化と6月以降の退職、企業型DCの移換先、在職中の給付、就業規則の競業避止の10個を1年前から順に進める(独立前に会社員のうちにやること10個の記事)。フリーランス1年目は賃貸の審査に落ちやすく、在職中の契約が最も確実だ(フリーランスは賃貸の審査に通らないのかの記事)。
よくある質問
屋号を2つ以上持てますか?
持てる。事業ごとに屋号を分けても、確定申告は1人分にまとめる。開業届には主な屋号を書く。
事業用口座から生活費を引き出したら経費になりますか?
ならない。事業主貸として帳簿に記録するだけで、経費でも所得でもない。口座を分けていれば、この振替が明確になる。
独立の資料をLINEで無料配布中
屋号の決め方チェック(4点+商標・ドメインの確認)と、口座・カードの分け方の記入表を公式LINEで無料配布している。屋号は後でいい。口座だけは最初に分けよう。

