取引先から業務委託契約書が送られてきた。10ページあって、全部読んでも何が問題なのか分からない。サインしていいのか、直してもらうべき場所があるのか。
相手が作った契約書は、相手に有利に書かれている。それが普通だ。契約書は相手が作る。直すのは10ヶ所だけでいい。
先に一文で。業務委託契約書は業務の範囲・報酬と税・支払期日(60日以内)・検収・著作権・秘密保持・損害賠償の上限・中途解約・再委託・競業避止の10項目を見て、直す優先順は損害賠償の上限→中途解約時の報酬→競業避止の範囲で、契約書がなくても条件の明示は発注者の義務なのでメールで文字にしてもらう。
この記事の要点
- 10項目。直す優先順は損害賠償の上限・中途解約・競業避止
- 支払期日は納品から60日以内。翌々月末払いは超えることがある
- 検収は期限とみなし検収を入れる。放置されると支払いが始まらない
- 契約書なしでも、条件の明示は発注者の義務。メールの往復で足りる
10項目のチェック表
| 項目 | 確認すること | 受注側に不利な例 | 直し方 |
|---|---|---|---|
| 1、業務の範囲 | 何をどこまで。修正回数 | 「甲が必要と認める業務」と広く書かれている | 業務を列挙し、修正は2回までなどと書く |
| 2、報酬と税 | 税込か税抜か。源泉徴収の有無 | 税込表記で消費税分が実質値引き | 税抜額+消費税と明記する |
| 3、支払期日 | 納品から何日か | 月末締め翌々月末(最長62日) | 60日以内(月末締め翌月末など)にする |
| 4、検収 | 期限とみなし検収 | 検収の期限がなく、放置されると支払いが始まらない | 納品後10営業日以内に連絡がなければ検収済みとする |
| 5、著作権 | 譲渡か許諾か。人格権 | 全ての著作権を無償で譲渡、人格権も不行使 | 譲渡なら報酬に含める旨を書く。実績としての公開を認める条項を足す |
| 6、秘密保持 | 範囲と期間 | 期間が無期限、範囲が「一切の情報」 | 契約終了後2〜3年、公知の情報は除く |
| 7、損害賠償 | 上限の有無 | 上限なし。間接損害・逸失利益を含む | 報酬額を上限にし、直接損害に限る |
| 8、中途解約 | 予告期間と既にした仕事の報酬 | 甲はいつでも解約でき、報酬は払わない | 30日前予告と、解約までの仕事の報酬支払いを書く |
| 9、再委託 | 可否 | 一切禁止 | 事前承諾があれば可、にする |
| 10、競業避止 | 範囲と期間 | 契約中と終了後2年、同業の仕事を全て禁止 | 競合の具体名か、期間を契約中のみに限る |
7と8と10に不利な条項があれば、直してもらう。1〜6は、書かれていなければ足す。
直してもらう時の言い方
修正の依頼は、条項の番号と、直した文案をセットで送る。
「第◯条の損害賠償について、上限を本契約の報酬額とし、直接損害に限る形に修正をお願いできますでしょうか。文案は次のとおりです。」
理由を長く書かない。文案を出すと、相手は承認するだけで済むので通りやすい。3ヶ所以上あるなら、優先順の高い1〜2ヶ所に絞って出し、残りは次の契約更新で出す。
請負と準委任の違い
| 請負 | 準委任 | |
|---|---|---|
| 報酬の対象 | 成果物の完成 | 業務の遂行(時間・工数) |
| 完成しなかった時 | 報酬を請求できない | 遂行した分は請求できる |
| 例 | サイト制作・ライティング・デザイン | コンサル・運用代行・常駐 |
| 印紙 | 必要(2号文書) | 不要 |
契約書の冒頭で「請負」か「準委任」かが決まる。成果物の完成に責任を負いたくない仕事(運用・相談・常駐)は準委任にする。請負で書かれていると、相手の都合で完成しなかった時に報酬を請求できない形になる。
印紙
| 契約 | 印紙 |
|---|---|
| 請負契約書(1回の契約) | 契約金額に応じて200円〜(100万円以下200円、200万円以下400円、300万円以下1,000円、500万円以下2,000円…) |
| 継続的な取引の基本契約書(3ヶ月超・更新あり) | 4,000円(7号文書) |
| 準委任契約書 | 不要 |
| 電子契約(クラウドサイン等) | 不要 |
印紙は契約書を作った側(通常は発注者)が負担することが多いが、両者で折半と書かれていることもある。電子契約なら不要なので、印紙の話が出たら電子契約を提案する。
契約書がない場合
契約書がないこと自体は違法ではない。ただし2024年11月からのフリーランス新法で、発注者は取引条件を文字で明示する義務を負う。契約書がない仕事は、次の5点をメールで送り、相手に返信してもらう。
- 業務の内容
- 報酬(税抜・消費税・源泉徴収の有無)
- 納期
- 支払期日
- 修正の回数
返信があれば、それが契約の証拠になる。新法の内容はフリーランス新法を分かりやすくの記事、支払われなかった時の回収はフリーランスの報酬未払いの記事で書いた。
私は独立した年、損害賠償の上限がない契約書にそのままサインした。納品物の不備で取引先の売上が落ちたら、報酬の何倍でも請求される形だった。実際には何も起きなかったが、気づいたのは2件目の契約書を弁護士に見せた時だ。それ以降、7と8と10だけは必ず直してもらっている。断られたことは一度もない。
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よくある誤解
「相手のひな形は直せない」。相手に有利に書かれているのが普通で、直すのも普通だ。文案を添えて出せば、多くは通る。
「契約書がないと仕事を受けてはいけない」。契約書がなくても契約は成立する。ただし条件を文字にしておく。それは発注者の義務でもある。
独立・副業・お金の全体像
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請求書は宛名・発行者・番号・発行日・内容・金額(税抜/消費税/税込)・支払期日・振込先・登録番号の9項目で完成し、源泉徴収の仕事は税抜額×10.21%を引いた差引額を書く(フリーランスの請求書の書き方の記事)。屋号は任意で後から変えられ、口座とカードを事業専用に分けるだけで帳簿がほぼ自動になる(屋号の決め方と事業用口座の記事)。
よくある質問
契約書を弁護士に見てもらう費用は?
1通あたり1〜3万円が目安。フリーランス・トラブル110番なら無料で相談できる。最初の1通を見てもらえば、2通目からは自分で10項目を確認できる。
業務委託の報酬から源泉徴収されるのはどんな仕事ですか?
原稿料・デザイン料・講演料など、所得税法で定められた報酬は10.21%が源泉徴収される。契約書の報酬欄に源泉徴収の有無を書いておくと、振込額で揉めない。手取りの計算は業務委託の手取り計算の記事で書いた。
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業務委託契約書の10項目チェック表(不利な例と直し方の文案つき)を公式LINEで無料配布している。10ページの契約書も、見る場所は10ヶ所でいい。

