退職して、まずやるべき手続きの筆頭が失業保険だ。そして多くの人が、給付と転職活動の関係を誤解している。
もらいながら活動していいのか、ではない。活動しないと、もらえない。
この記事では、給付を受けながら転職活動を進める実務を、順番に書く。先に断っておくと、給付の金額や日数の詳細は離職理由・年齢・加入期間で変わり、制度は改正されることがある。あなたの場合の正確な数字は、管轄のハローワークで必ず確認してほしい。この記事は全体の流れと、つまずきやすい点に絞る。
この記事の要点
- 基本手当は、求職活動をしている人に出る給付だ。活動は義務であり実績になる
- 流れは、離職票→求職申込→待期→(給付制限)→認定日→振込のループ
- エージェント経由の応募も実績として扱われる場合が多い。窓口で確認しろ
- 絶対にやってはいけないのは、働いた分の無申告だ
*この記事の制度情報は2026年8月時点のものだ。金額・条件は変わるから、最新は厚生労働省とハローワークの公式情報で確認してほしい。*
全体の流れ。最初の1ヶ月でやること
手順1。会社から離職票を受け取る。
退職後に会社から届く。届かない場合は会社に催促していい。離職票が届く前でも、ハローワークに相談には行ける。
手順2。ハローワークで求職の申し込みと受給手続きをする。
離職票、マイナンバーの確認書類、本人確認書類、写真、通帳などを持って行く(必要書類は事前に管轄のハローワークのサイトで確認しろ)。この日が全ての起点になる。
手順3。7日間の待期期間。
全員に共通の待期だ。この間は給付の対象にならない。
手順4。離職理由によっては給付制限期間がある。
自己都合退職の場合、待期の後に給付制限期間が置かれるのが原則だ。会社都合(倒産・解雇など)なら給付制限はない。この期間の長さと扱いは制度改正の対象になりやすい部分なので、自分の場合の扱いを窓口で確認すること。
手順5。認定日に活動実績を申告 → 振込、のループ。
原則4週間ごとの認定日に、求職活動の実績を申告する。認定されると数日で指定口座に振り込まれる。このループを、給付日数が尽きるか、就職が決まるまで回す。
求職活動実績の作り方。ここが一番の実務だ
認定日までに、原則として所定回数の求職活動実績が必要になる。実績として代表的なものはこうだ。
- 求人への応募(これが一番確実で強い)
- ハローワークでの職業相談・職業紹介
- ハローワークや許可を受けた機関のセミナー受講
- 資格試験の受験など(扱いは要確認)
求人を検索して眺めただけ、は実績にならないのが原則だ。ここで詰まる人が多い。
実務的なコツを2つ書く。
- 認定日にあわせて職業相談を挟む。窓口での相談は実績になる場合が多く、どうせ行く日に組み込める。相談員の使い方は相談員の当たり外れに書いた
- エージェント経由の活動も申告する。民間エージェント経由の応募や面接も、実績として扱われる場合が多い。扱いは管轄によって案内が異なることがあるので、最初の認定日の前に窓口で確認しておくと、以降が楽になる
*クリックすると公式サイトが開く。登録は経歴の入力のみで、面談の日程はあとから調整できる。*
登録後の流れ|① Web入力で登録(数分) → ② 担当から連絡が入り、面談の日程を決める → ③ 面談はオンラインか電話。紹介と応募はここから始まる
眺めるだけなら、求人サイトで足りる。担当と話す気になった段階が、登録のタイミングだ。面談まで進んで初めて、このサービスの価値が出る。
給付の手続きはハローワーク、応募の弾はエージェント、という分担は普通に成立する。むしろ、地元求人と民間求人の両方が見えるから、判断の質が上がる。全体の使い分けはハローワークと転職エージェントの違いにまとめた。
やってはいけないこと。1つだけ絶対線がある
働いた分の無申告。これだけは絶対にやるな。
給付期間中にアルバイトや手伝いで収入を得ること自体は、直ちに違反ではない。日数や時間によって、減額や支給の先送りなどの扱いになる。問題は申告しないことだ。無申告は不正受給にあたり、発覚すれば返還に加えて、さらに納付を命じられる場合がある。
- 1日でも働いたら、認定日の申告書に正直に書く
- 扱いがどうなるか不安なら、働く前に窓口で聞く
正直に申告して損をする作りにはなっていない。隠して失うものの方が、比較にならないほど大きい。
給付期間を、ただの猶予にしない
最後に、金の話から一歩だけ踏み込む。
給付期間は、収入の心配を減らした状態で使える時間だ。この時間の使い道は、応募だけではない。
- 職業訓練を受ける。訓練の受講で給付の扱いが変わる場合もある(延長の仕組みなど。適用条件は窓口で確認)。訓練の中身は職業訓練は転職で有利になるのかに書いた
- 学び直しの制度を調べる。次の仕事のためにスキルを足すなら、教育訓練給付金という別の制度もある
焦って決めた転職先で数ヶ月後にまた辞めるのが、一番の損失だ。給付は、焦らないための道具として使ってほしい。応募先の検討で迷ったら、在職中・退職後それぞれの動き方を転職活動は在職中と退職後どっちがいいで整理してある。
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給付金側の入金の時期は教育訓練給付金はいつもらえるのかに時系列で書いた。
給付をもらいながらの活動で、よくある誤解を3つ潰す
実務の相談で繰り返し出てくる誤解を、先回りで潰しておく。
誤解1。「就職が決まると損だから、ゆっくり活動した方がいい」。
逆だ。所定給付日数を一定以上残して早期に就職すると、再就職手当という一時金の対象になり得る。残日数が多いほど支給率が上がる作りで、早く決まった人が損をしない形になっている。「もらい切ってから決める」は、金銭面でも合理的とは限らない。要件と支給率は窓口で確認してほしい。
誤解2。「認定日は行けなかったら終わり」。
無断で行かないのはまずいが、面接や病気など正当な理由がある場合は、事前連絡と証明で認定日の変更が認められる場合がある。面接日と認定日が重なったら、黙って諦めずにまず電話だ。
誤解3。「実績は数さえ揃えばいい」。
形式的にはそうだが、もったいない。どうせ必要な実績なら、本命の応募と、口だけでも興味のある分野の相談に使う方が、同じ工数で得るものが多い。実績作りのための消化試合を、市場調査の時間に変えるという発想だ。
給付の期間で、金の不安を数字に変えておけ
給付期間中に1つだけ勧めたい作業がある。生活費の下限の計算だ。
失業して初めて、自分の生活の固定費を直視する人は多い。家賃、保険、通信、食費。月いくらあれば生きられるのかの数字を、この機会に確定させておく。
この数字が決まると、転職活動の質が変わる。求人の給与を見た時に、「なんとなく不安」ではなく「下限より上か下か」で判定できるようになるからだ。焦って条件の悪い求人に飛びつく事故も、この数字が防いでくれる。
数字を持った上で、次の職場の給与相場を知りたければ、地元の相場はハローワークの検索端末で、全国の相場はミイダスのような診断型で測れる。下限と相場の2つの数字が揃えば、あなたの転職活動は感情ではなく計算で進められる。
退職前の人は、退職タイミングシミュレーターで受給開始の目安とボーナスの位置を先に確認しておくといい。
金額と時期そのものを先に知りたい人は、失業保険はいくら・いつからもらえるのかに計算の土台と時系列を書いた。健康保険の切り替えは退職後の健康保険の3択が本編になる。
ここまでのまとめ
・基本手当は、求職活動をしている人に出る給付だ。活動は義務であり実績になる
・流れは、離職票→求職申込→待期→(給付制限)→認定日→振込のループ
・エージェント経由の応募も実績として扱われる場合が多い。窓口で確認しろ
転職活動の期間と方法の実態(公的データ)
厚労省の転職者実態調査(令和2年)では、転職活動を始めてから辞めるまでは1〜3ヶ月未満が28.8%で最多、辞めてから次に就職するまでは離職期間なし26.1%+1ヶ月未満27.6%で半数超、使った方法は求人サイト39.4%・ハローワーク34.3%・縁故26.8%・エージェント14.8%、準備を何もしなかった人が66.1%だった。年代別の表は転職活動の期間と方法の実態の記事で書いた。
職業別の有効求人倍率(公的データ)
厚労省の一般職業紹介状況(令和7年度)では、ハローワークの職業別の有効求人倍率は建設躯体7.72倍・土木6.21倍・介護3.84倍・営業2.13倍・看護2.04倍が高く、一般事務0.34倍・デザイナー0.17倍が低い。求人月給は情報処理34.7万円・建築土木34.3万円・営業28.1万円・介護22.9万円・一般事務22.2万円で、入りやすさと給料は別の軸になる。一覧は職業別の有効求人倍率の記事で書いた。
都道府県別の有効求人倍率(公的データ)
厚労省の一般職業紹介状況(令和7年度)では、都道府県別の有効求人倍率は全国1.21倍で、東京1.73倍・福井1.67倍・石川1.56倍が高く、神奈川0.85倍・兵庫0.96倍・沖縄0.96倍が低い。正社員だけでは全国1.01倍で北陸3県が1.4倍以上、神奈川は0.64倍になる。受理地ベースの読み方と地方で転職する時の使い方は都道府県別の有効求人倍率の記事で書いた。
退職後の住民税の額と払い方
退職後の住民税は前年の年収の5〜6%(年収500万で年約24万)が6月から翌5月に来て、1〜5月退職なら最後の給与から一括徴収、6〜12月退職なら一括か納付書(年4回)を選ぶ。年収別の目安表と、届かない時の確認先、払えない時の分割は退職後の住民税はいくらかの記事で書いた。
失業保険の日額早見表(2026年8月改定)
失業保険の日額は退職前6ヶ月の月給÷30に50〜80%をかけた額で、月給20万で5,036円・30万で6,307円・40万で6,744円、上限は29歳以下7,450円・30〜44歳8,270円・45〜59歳9,110円。月給別・年齢別の表と、自己都合・会社都合の合計の目安は失業保険の日額早見表の記事で書いた。
失業保険をもらいながら働く時の線
受給中の副業・アルバイトは週20時間未満で申告すれば認められ、1日4時間以上働いた日は手当が後ろに繰り越され、4時間未満の日は収入−1,354円+日額が賃金日額の80%を超えた分だけ減額される。業務委託やブログ収入も申告対象で、開業届を出すと止まり、隠すと3倍返しになる。判定と減額の式は失業保険をもらいながら副業・アルバイトはできるかの記事で書いた。
早く決まった人の再就職手当
受給中に早く就職すると、残日数×日額×70%(残3分の2以上)か60%を一括で受け取れる。給付日数90日で残60日・日額6,000円なら25.2万円。条件は待期後・残日数3分の1以上・1年超の雇用・雇用保険加入など7つで、自己都合の給付制限中の1ヶ月は紹介経由が条件になり、フリーランス開業も対象だ。計算例と申請の期限1ヶ月は再就職手当はいくらもらえるかの記事で書いた。
会社都合と自己都合の違い
会社都合は待期7日ですぐ支給で給付日数90〜330日、自己都合は給付制限1ヶ月(2025年4月〜)で90〜150日。35歳・加入10年・日額6,000円なら36万の差で、国保の軽減も付く。残業45時間超3ヶ月・未払い・パワハラ・退職勧奨は自分から辞めても会社都合扱いになり、離職票の理由が違えばハローワークで異議を出す。表と例は会社都合と自己都合の違いの記事で書いた。
失業保険が出ない人の訓練+月10万
求職者支援制度は、基本手当を受けられない人が無料の職業訓練を受けながら月10万円+通所手当を受け取れる制度。雇用保険に入っていなかった人、加入期間が足りない人、受け終わった人、フリーランスを廃業した人が対象で、本人収入 月8万円以下・世帯収入 月30万円以下・資産300万円以下・全訓練日の出席が要件。詳しくは求職者支援制度の記事で書いた。
求職活動実績は何が認められるか
失業の認定は原則4週間に1回で、その間に原則2回以上の求職活動実績が要る。実績になるのは、求人への応募(1社1回)、ハローワークの職業相談、セミナーの受講、資格試験の受験、エージェントとの面談。求人を見ただけ・検索しただけ・知人に頼んだだけは実績にならない。足りない時は窓口での職業相談が最も確実だ。線引きは求職活動実績は何が認められるのかの記事で書いた。
よくある質問
失業保険をもらいながら転職活動してもいいのですか?
いいどころか、それが制度の前提だ。基本手当は求職活動をしている人に出る給付で、活動しないともらえない。
求職活動の実績にはどんなものが認められますか?
求人への応募、職業相談、セミナー受講などが代表的だ。エージェント経由の応募も扱われる場合が多い。最終判断は管轄のハローワークの案内なので、認定日の前に確認しろ。
アルバイトをしたら失業保険は止まりますか?
日数や時間で減額・先送りなどの扱いが変わる。一番危険なのは無申告で、不正受給になると返還に加えて納付を命じられる場合がある。必ず申告しろ。
転職の資料をLINEで無料配布中
退職後の手続きチェックリストをLINEで無料配布している。給付は猶予ではなく、判断の質を守る道具だ。




