辞めたいのに、上司の顔を見ると言い出せない。退職代行という言葉は知っているが、何をしてくれるのか、違法ではないのか、自分が使っていいものなのかが分からない。
仕組みを分解する。退職代行にできるのは、退職の意思を伝えること。それ以上ができるかは、誰が運営しているかで決まる。
先に一文で。退職代行とは本人に代わって会社へ退職の意思を伝えるサービスで、違法ではないが、条件の交渉ができるのは労働組合と弁護士だけ、料金は2〜5万円台、自分で言い出せる人には要らず、言い出せずに消耗している人には有効な道具になる。
この記事の要点
- できるのは「伝えること」。交渉は運営主体で変わる
- 民間・労働組合・弁護士の3種類。料金と権限が違う
- 違法ではない。ただし民間が交渉すると違法になる
- 使うべき人は、言い出せずに心身が削られている人
退職代行とは何か
本人に代わって会社へ退職の意思を伝え、その後の連絡(書類のやり取り、私物の返却、貸与品の返送)を取り次ぐサービスだ。
退職の意思表示は本人がすれば有効で、伝える手段として第三者を使うこと自体に法的な問題はない。民法上、期間の定めのない雇用契約は、退職の申し出から2週間で終了する。会社の承認は要らない。
3種類ある。できることが違う
| 運営 | 料金の目安 | できること |
|---|---|---|
| 民間業者 | 2万円台 | 退職の意思を伝える。連絡の取り次ぎ |
| 労働組合 | 2万5千〜3万円前後 | 上に加えて、退職日・有給消化などの交渉(団体交渉権) |
| 弁護士 | 5万円前後〜 | 上に加えて、未払い賃金の請求、損害賠償への対応、法的な代理 |
線はここだ。会社と条件を交渉する行為は法律事務にあたり、弁護士でない民間業者が行うと弁護士法違反になる。だから民間業者は「伝える」までしかできない。
有給を消化してから辞めたい、退職日をずらしたい、未払いの残業代がある。こうした交渉が要るなら、労働組合か弁護士を選ぶ。3つの違いの詳細は退職代行の弁護士・労働組合・民間の違いの記事で書いた。
依頼から退職までの流れ
- 相談|LINEかメールで状況を伝える。多くは無料
- 契約と支払い|料金を払い、雇用形態・会社の連絡先・希望する退職日を伝える
- 実行日の設定|多くは翌日の朝に会社へ連絡する
- 会社への連絡|代行側が退職の意思を伝える。本人は出社しない
- 書類のやり取り|退職届を郵送、貸与品を返送、離職票などを受け取る
実行日以降、本人が会社と直接やり取りする必要は原則ない。会社から本人に電話が来ることはあるが、出る義務はない。対応は退職代行を使ったのに会社から電話が来た時の記事で書いた。
使うべき人、使わなくていい人
使うべき人
- 退職を切り出せないまま、心身が削られている
- 過去に退職を伝えて、引き止めや叱責で撤回させられた
- 上司との接触自体が怖い、出社できない
- 会社が退職届を受け取らない、無視する
使わなくていい人
- 自分で伝えられる。気まずいだけ
- 円満に辞めて、取引先や同僚との関係を残したい
- 退職後に同じ業界で近い人と仕事をする可能性が高い
気まずさだけなら、自分で伝えたほうが安く早い。私の1社目はブラック企業で、退職を伝えるのに相当な覚悟が要ったが、それでも自分で言った。言えるなら言う。言えない状態まで追い込まれているなら、道具を使う。その線引きでいい。
会社側はどう受け取るか
「逃げた」と見られるのではないか、と心配する人は多い。実際には、会社の人事にとって退職代行からの連絡は珍しくなくなっていて、淡々と手続きが進むことがほとんどだ。損害賠償を請求されるという話も、業務を故意に妨害したような例外を除けば現実には起きない。
選び方
料金より先に、次の3点で選ぶ。
- 運営主体|交渉が要るかどうかで、民間・労働組合・弁護士を決める
- 返金規定|退職できなかった場合に全額返金があるか
- 連絡回数の制限|会社とのやり取りに回数制限や追加料金があるか
具体的な比較は退職代行の選び方の記事で書いた。
*クリックすると公式サイトが開く。LINEの友だち追加から相談でき、その場で申し込む必要はない。*
相談後の流れ|① LINEかメールで無料相談する → ② 料金と流れの説明を受ける → ③ 依頼する場合のみ、指定した日に会社への連絡を代行してもらう
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よくある誤解
「退職代行を使うと退職金や離職票がもらえない」。もらえる。退職の手段が何であれ、会社の支払い義務と書類の交付義務は変わらない。
「即日で辞められる」。法律上は申し出から2週間で契約が終わる。即日退職に見えるのは、その2週間を有給消化か欠勤で埋めているからだ。有給が残っていない場合は、会社と合意できれば即日、できなければ2週間の欠勤扱いになる。
デメリットと、使う前に知っておくこと
デメリット
- 会社との関係は切れる。同じ業界で近い人と仕事をする可能性があるなら、影響が出ることはある
- 費用がかかる。自分で言えば0円で済む
- 民間業者を使うと、有給消化や退職日の交渉はできない
- 引き継ぎをしないまま辞める形になりやすく、後任や同僚に負担がかかる
アルバイトでも使えるか|使える。雇用形態は問わない。ただしアルバイトなら店長への一言で済むことが多く、費用と釣り合うかは考える。
逮捕や損害賠償の話|退職代行を使ったこと自体で逮捕される、損害賠償を請求される、ということは現実には起きない。会社側が持ち出せるのは、故意の業務妨害やデータの持ち出しといった別の問題があった場合だけだ。「懲戒解雇にする」と言われても、退職の意思表示から2週間で契約は終わるので、その後に懲戒処分はできない。
業者を選ぶ時に見る点|料金より、運営主体(民間・労働組合・弁護士)と返金規定を先に見る。SNSで名前をよく見る業者が自分に合うとは限らない。
諭旨退職と言われた場合
懲戒解雇より一段軽い処分で、自分から辞めた形にするものだ。応じる前に確認する根拠・退職金・離職票の3点は諭旨退職とはの記事で書いた。
よくある質問
正社員以外(契約社員・パート)でも使えますか?
使える。ただし有期契約の途中で辞める場合、やむを得ない事由が必要とされることがあるので、契約期間と残り月数を相談時に伝える。
親や家族に連絡が行きますか?
会社が緊急連絡先に電話することはありうる。代行側から「本人への連絡は代行を通してほしい」と伝えてもらい、家族にも事前に一言入れておくと慌てない。
転職の資料をLINEで無料配布中
退職の切り出し方テンプレート(自分で言う場合の台本と、言えない時の判断基準つき)を公式LINEで無料配布している。道具を使うかどうかは、言えるかどうかで決めていい。



