内定先から「試用期間中は社会保険に入れません」と言われた。あるいは「試用期間は残業代が出ません」。そういうものなのか、それとも言われた側がおかしいのか。
線を引いておく。試用期間でも減らない権利が4つ、差をつけていいものが2つある。この線を知っているだけで、入社前に会社の運用が読める。
先に一文で。試用期間中でも社会保険の加入・残業代・有給の付与・最低賃金の4つは正社員と同じで、本採用と差をつけていいのは給料の額と賞与の扱いの2つだけであり、それ以外を「試用期間だから」と削る会社は法律の外にいる。
この記事の要点
- 社会保険は初日から加入。試用期間を理由に外せない
- 残業代は正社員と同じ。出ないのは違法
- 有給は入社6ヶ月で付与。試用期間の長さは関係ない
- 給料と賞与は差をつけていい。ただし事前の明示が要る
変わらない4つ
1、社会保険と雇用保険
健康保険・厚生年金・雇用保険の加入要件は、試用期間かどうかで変わらない。フルタイムで2ヶ月を超えて働く見込みがあれば、入社初日から加入が義務になる。
「本採用になったら入れる」という運用は、保険料の会社負担を先送りしているだけだ。未加入と分かったら総務に確認し、応じなければ年金事務所に相談する。さかのぼって加入させることもできる。
2、残業代
時間外労働には割増賃金の支払い義務がある。試用期間でも同じで、出ないのは違法だ。「研修中は勉強だから無給」も通らない。残業代が出ない場合の動き方は残業代が出ないのは違法かの記事で書いた。
3、有給休暇
入社から6ヶ月継続して働き、出勤率が8割以上なら、10日の有給が付与される。試用期間の長さは関係ない。試用期間が6ヶ月なら、その終了と同時に有給が発生する。試用期間3ヶ月の会社で、入社6ヶ月後に有給が付かなければ、規程を確認する。
4、最低賃金
試用期間中に減額の特例を受けるには都道府県労働局の許可が要り、実際に許可を取っている会社はごく少ない。最低賃金を下回る試用期間の給料は、ほぼ違法と考えていい。
差をつけていい2つ
1、給料の額
本採用より低い額を設定することは合法だ。ただし条件がある。
- 求人票と労働条件通知書に、試用期間中の額が明記されている
- 最低賃金を下回らない
- 本採用後の額と、切り替わる時期が示されている
「試用期間中は月給22万、本採用後25万」のように、両方の数字が書面にあることが前提になる。書面にないなら、面接かオファー面談で確認する。
2、賞与
試用期間中は賞与の支給対象外、または按分という規程は多い。査定期間の途中で入社した場合の扱いは会社ごとに違う。初回の賞与がどう計算されるかはボーナスが満額もらえない入社1年目の記事で書いた。
求人票で確認する4点
- 試用期間の長さ(3〜6ヶ月が一般的。1年は長い)
- 試用期間中の給料(本採用と同額か、差があるか)
- 社会保険の加入時期(「入社時」以外の記載があれば要確認)
- 延長の可能性(規程に延長の条項があるか)
4つ目は見落とされやすい。試用期間が延長されると、給料の差がある会社ではその分だけ収入が減る。延長を言われた時の対処は試用期間の延長を言われた時の記事で書いた。
試用期間中に辞める場合
試用期間中でも、退職の手続きは正社員と同じだ。退職の意思表示から2週間で契約は終わる。試用期間だから即日辞められる、という特例はない(逆に、会社側が試用期間を理由に簡単に解雇できるわけでもない)。
合わないと感じて辞めるかどうかの判断は試用期間で合わないと感じた時の記事、会社側からの解雇の実際は試用期間でクビになる実際の記事で書いた。
私の1社目は美容業界のブラック企業で、残業代がない、休日に出る、が当たり前の場所だった。当時は「そういうもの」だと思っていたが、単に法律の外にいただけだ。試用期間の扱いは、その会社の運用が最初に見える場所になる。
よくある誤解
「試用期間はアルバイト扱い」。違う。雇用契約は入社時点で成立していて、試用期間は本採用の可否を判断する期間にすぎない。労働者としての権利は初日からある。
「試用期間中は有給を使えない」。付与されていれば使える。付与は入社6ヶ月後なので、試用期間3ヶ月の間は付与前で使えないだけだ。前倒しで付与する会社なら、試用期間中でも使える。
よくある質問
試用期間中の給料が求人票と違います
労働条件通知書と突き合わせる。通知書に書かれた額と違えば、会社に確認して差額を請求できる。通知書自体に試用期間中の額が書かれていなかった場合は、求人票の額を根拠に確認する。
試用期間が終わったのに本採用の連絡がありません
多くの会社は、何も言われなければ自動的に本採用に移行する。ただし給料が切り替わるタイミングを確認しておかないと、試用期間中の額のまま続くことがある。期間が終わる月に、総務へ「本採用後の条件に切り替わる時期を教えてください」と一言聞いておく。
転職の資料をLINEで無料配布中
労働条件通知書のチェックリスト(試用期間・社会保険・残業代・有給の確認欄つき)を公式LINEで無料配布している。入社前に4点を確認しておけば、「そういうものだと思っていた」はなくなる。


