最後の給料の振込額を見て、目を疑った。普段より数万円、下手すると10万円近く少ない。辞めた人間への嫌がらせなのか。

落ち着いて明細を開こう。最後の給料が少なくなる正当な理由は5つあり、大半はこのどれかで説明がつく。ただし、まれに違法な控除が混ざっていることもある。見分け方まで含めて、明細の読み方を書く。

この記事の要点

  • 減る理由は5つ。日割り・保険料2ヶ月分・住民税一括・欠勤控除・手当停止
  • まず明細の支給側(日割り日数)と控除側(保険料・税)を突き合わせる
  • 罰金・損害・研修費などの控除は、賃金全額払いの原則に反する疑いが濃い
  • 計算根拠の説明を求めるのは正当な権利。記録の残る形で聞く

理由1、基本給の日割り

月の途中で退職すると、基本給は在籍日数での日割りになる。会社の規程により、暦日で割るか、所定労働日数で割るかが違い、同じ15日退職でも会社によって金額が変わる

明細では、支給欄の基本給が普段より少ない形で表れる。計算式は就業規則の賃金規程に書いてあるので、「どの式で割ったか」を確認するのが第一歩だ。日割りの計算方法の詳細は退職月の給料の日割り計算で書いた。

理由2、社会保険料が2ヶ月分引かれる

一番驚かれるのがこれだ。社会保険料は前月分を当月の給料から引く運用が多い。月末退職の場合、退職月とその前月の2ヶ月分が最後の給料にまとめて乗ることがある。

健康保険と厚生年金を合わせると、給料の約15%が1ヶ月分。2ヶ月分なら約30%が保険料だけで消える計算になり、手取りの激減の主犯になりやすい。明細の控除欄で、健康保険・厚生年金の額が普段の2倍になっていないかを見る。2倍なら、この運用だ。

なお月末の1日前退職だと最終月の社会保険料の扱いが変わるという細かい話もあり、退職日の設定で手取りが動く。

理由3、住民税の一括徴収

住民税は前年の所得への課税を、6月〜翌5月の12回に分けて天引きしている。1〜5月の退職では、5月までの残り分を最後の給料から一括徴収するのが原則だ。たとえば1月末退職なら、2〜5月の4ヶ月分がまとめて引かれる。

6〜12月の退職なら、一括か普通徴収(自分で払う)かを選べる。明細の住民税が普段の数倍になっていたら、月数を数えてみる。計算が合えば正当な徴収で、翌月以降の請求が来ない分、後で楽になっているとも言える。

理由4と5、欠勤控除と手当の停止

理由4、欠勤・遅刻の控除。最終月に欠勤があれば、その分は引かれる。有休で処理したはずの日が欠勤扱いになっていないかは要確認だ。有休消化中の日が欠勤として引かれていたら、それは明確な誤りなので指摘する。

理由5、手当の停止・日割り。通勤手当(定期代の返還調整)、住宅手当、役職手当などが最終月は日割りや停止になることがある。特に通勤手当は、6ヶ月定期で前払いされていた場合、未使用期間の返還として控除が発生し、見た目の減額が大きくなる。

違法な控除の見分け方。ここだけは戦う

5つの理由で説明がつかない控除が明細にあったら、目を細めて見る。

  • 罰金・ペナルティ(急に辞めた罰、など)
  • 研修費・制服代の返還(同意のない一方的な控除)
  • 損害賠償の相殺(ミスの弁償を給料から勝手に引く)

これらは賃金の全額払いの原則に反する疑いが濃い。本人の自由意思による明確な同意なく、会社が一方的に賃金から差し引くことは原則できない。明細の内訳の説明を書面で求め、納得できなければ労働基準監督署に相談する。控除でなく振込自体が止まっている場合は給料が振り込まれない時の対処、手渡しを口実に呼び出される場合は取りに来いと言われた時の対処が担当だ。

会社への確認の仕方。記録に残る形で

明細を見ても分からなければ、確認する。聞き方はこれで足りる。

「◯月分給与について、基本給の日割り計算の方法と、控除欄の◯◯の内訳・根拠をご教示ください」

メールで聞けば、回答も記録に残る。計算根拠の説明を求めるのは、疑うことではなく確認する権利だ。まともな会社なら普通に答えるし、答えを渋る会社ほど、答えられない控除をしている可能性が上がる。

回答に納得できない場合の相談先は、労働基準監督署(無料)が基本になる。持って行くのは、雇用契約書・就業規則(賃金規程)・過去数ヶ月の明細・最後の明細・確認のやり取りだ。

よくある質問

最後の給料で、ボーナスの返還を求められました

支給済みの賞与の返還請求は、規程に明確な定めがあるケースを除き通らないことが多い。「もらい逃げだから返せ」という感情論に応じる義務はない。規程のどの条文に基づく請求かを書面で求め、根拠が示されなければ断っていい。

退職金が思ったより少なかったのですが、これも同じ考え方ですか?

退職金は賃金と違って法律上の支給義務がなく、会社の規程がすべての世界だ。規程の計算式(勤続年数・自己都合係数など)と照らして確認する。自己都合退職は係数で減額される規程が多く、少なく感じる主因はそこにある。規程と計算が合わない場合だけ、争う話になる。

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