入社書類の誓約書を読んだら、引っかかる条項がある。サインしたくない。だが拒否したら内定が消えるのではないか。
先に構図を言う。署名の強制はされない。だが全文拒否は現実的でない。実務の正解は、条項単位の確認と相談だ。読む場所と危険な記載の型まで書く。
入社誓約書とは、就業規則の順守や秘密保持などを、入社する本人が会社に対して誓う一方通行の書面である。
この記事の要点
- 全文への署名拒否は事実上、入社見送りにつながりうる
- 正解は拒否宣言でなく、条項の確認と修正の相談だ
- 違約金・賠償予定の条項は、署名しても法的に無効になる
- 質問は失礼でない。曖昧なまま署名する方が後で高くつく
前提。誓約書の位置づけを30秒で
入社誓約書は、就業規則の順守・秘密保持・経歴の真実性などをあなたが会社に誓う書面だ。雇用契約書(双方の合意)と違って一方通行の誓いで、多くの会社が入社書類の1つとして用意している。
法的には、誓約書がなくても雇用契約は成立するし、署名を物理的に強制されることもない。ただし会社には採用の自由があるから、全文への署名拒否を貫けば、入社の話自体が流れるリスクは現実にある。だから戦い方は全文拒否ではない。条項を読み、引っかかる場所だけ潰す。これが実務の型になる。
読むべき条項。5つに絞って見る
誓約書で目を通すべきは、この5系統だ。
1、秘密保持。在職中・退職後の機密情報の扱い。一般的な内容なら普通に署名していい。範囲が「業務上知り得た一切の情報」のように広すぎる場合は、趣旨を確認する。
2、競業避止(退職後の同業への転職制限)。期間・地域・職種の範囲を見る。無限定に近い広い制限は、職業選択の自由との兼ね合いで無効と判断されやすいが、署名前に範囲を確認しておく価値は高い。
3、損害賠償。「会社に損害を与えた場合は賠償する」という一般条項は通常の内容だ。金額があらかじめ決まっている記載(違約金)は別物で、次の節で書く。
4、経歴の真実性。提出書類に虚偽がないことの誓い。事実を書いている限り問題ないが、これがあるからこそ、経歴は盛らずに出すのが唯一の安全策になる。
5、副業・SNSの制限。副業の禁止・届出義務、SNS発信のルール。副業を考えている人は、ここを読み飛ばすと入社後に詰む。
危険な条項。署名しても無効になる型
萎縮する前に、書いてあっても法的に無効になる型を知っておいてほしい。
- 途中退職の違約金|「3年以内に退職した場合は○○万円を支払う」。労働基準法16条(賠償予定の禁止)に反し、署名しても無効だ
- 研修費用の全額返還義務|実質的に退職の自由を縛る設定は無効とされやすい(本人の自由意思での貸付など、有効になる組み方も一部あるため、記載があれば内容の確認が要る)
- 無限定の競業避止|期間も範囲も代償もない転職禁止は、無効と判断されやすい
大事なのは2段構えの理解だ。これらの条項は無効になりうる。同時に、無効を主張する争いは入社後のあなたの負担になる。だから、明らかにおかしい条項を見つけたら、署名前に確認するのが一番安い解決になる。違約金の条項を平気で入れてくる会社は、雇用契約書の確認ポイントで書いた危険な記載の型と同じで、入口から法律への態度が出ている。
確認の仕方。拒否でなく質問の形にする
引っかかる条項への動きは、質問の形にするのが全てだ。文例を置く。
- 「誓約書の第○条について、趣旨を確認させてください。○○という理解で合っていますか」
- 「競業避止の範囲ですが、期間と対象の職種を具体的に教えていただけますか」
- 「この条項は、△△の場合も対象になるのでしょうか」
質問は権利の行使ですらなく、ただの確認作業だ。これで態度を硬化させる会社なら、その反応自体が判断材料になる。回答に納得できなければ、修正の相談、それでも動かなければ署名するか入社自体を考え直すか、という順番で決めればいい。
よくある誤解も1つ潰しておく。「署名したら全条項に一生縛られる」は違う。無効な条項は署名後も無効だし、有効な条項も合理的な範囲でしか機能しない。誓約書は呪いの契約ではなく、大半は常識的な内容の確認書だ。読んだ上で署名すれば、恐れる書類ではない。
署名後にやること。控えの確保だけ
署名すると決めたら、最後の動作は1つ。控え(コピーか写真)を残す。誓約した内容を自分が参照できない状態が、一番ばかばかしい。副業の届出義務や秘密保持の範囲は、入社後の行動の線引きに使う実用情報だからだ。
身元保証書側で保証人に困っている場合は身元保証書を頼む人がいない時、入社書類の全体は入社書類は何が必要か一覧が担当だ。書類は読んで、聞いて、控えて、署名する。この順番だけ守れば、誓約書はただの通過点なんよ。
よくある質問
誓約書の提出前に弁護士に見てもらうのは大げさですか?
競業避止の範囲が生活に直結する職種(同業での独立を視野に入れている等)なら、大げさではない。自治体の無料法律相談や労働局の相談窓口でも、条項の読み方程度は確認できる。
新卒の時に署名した誓約書と内容が違います。転職では普通ですか?
会社ごとに書式が違うのは普通だ。特に中途採用は秘密保持と競業避止が厚くなる傾向がある。前職との比較でなく、目の前の条項の中身で判断すればいい。
誓約書の控えをくれない会社があります。どうすればいいですか?
署名の前にスマホで全ページを撮影しておけば実用上は足りる。控えの交付を渋る運用自体が管理の雑さのサインだから、撮影の一手間は保険として惜しまないことだ。
誓約書の確認チェックリストをLINEで無料配布中
読むべき5条項と質問文例を、公式LINEで無料配布している。読まずにサインする1分の省略が、数年の縛りに化けることがある。


