入社前の最後の書類、雇用契約書。署名欄に自分の名前を書き損じた。退職届は訂正印で直せると知っているが、契約書も同じでいいのか。

ここは一段慎重にいく。契約書は自分の独断で直さない。まず会社に連絡して、直し方の指示を受ける。これが鉄則だ。理由と分岐を書く。

この記事の要点

  • 契約書は双方の合意文書。一方の独断の訂正跡は疑義の種になる
  • 書き損じたら、直す前に人事へ連絡。訂正印か差し替えかは会社が決める
  • 印字された条件側の誤りは、署名せずに指摘。直すのは会社の仕事だ
  • 連絡で評価は下がらない。入社前のやり取りは事務で、選考ではない

なぜ独断で直さないのか。契約書の性格

書類のミス対応は、書類の性格で決まる。おさらいすると、選考書類は書き直し一択、自分単独の届(退職届など)は正式な訂正作法で直せる退職届の訂正の書き方で書いた通りだ)。

雇用契約書はさらにもう一段階違う。あなたと会社、双方の意思が乗る合意文書だ。この紙は原本が2通作られ、両者が保管し、労働条件の証拠として何年も生きる。そこに片方が勝手に入れた訂正は、後から見た人に「この訂正は両者の合意か? 署名の後に書き換えたのか?」という疑いを起こさせる。

疑いの種を作らないために、訂正の主導権を会社側に渡す。連絡は1本で済む。

「雇用契約書の記入を誤ってしまいました。申し訳ありません。訂正印での対応か、用紙の再発行か、どのようにすればよいかご指示いただけますか」

会社の答えは2つのどちらかだ。訂正印対応(二重線+契約に使った印での訂正。会社側の控えにも同じ処理をする)か、差し替え(新しい用紙の再発行)。どちらでも、会社の指示に乗った訂正なら疑義は残らない。

なお、内定承諾書は契約書より一段軽い書類なので、自分での訂正印対応の余地が広い。その線引きは内定承諾書の書き損じの直し方で書いた。

印字側の誤りを見つけた場合。署名を止めるのが先だ

自分の書き損じより重要なパターンがこちらだ。契約書に印字された条件——基本給、入社日、勤務地、手当——が、オファー面談や内定通知の内容と違う。

やることの順番を間違えないでほしい。

  1. 署名しない。署名は記載条件への合意の証拠だ。「後で直してもらえばいい」と署名してしまうと、誤った条件に合意した形が先に立つ
  2. 自分で手書き訂正しない。印字条件を応募者が書き換えた契約書は、文書として成立しない
  3. 人事へ確認する。「内定通知では◯◯でしたが、契約書の記載が△△となっています。ご確認いただけますか」。誤りなら正しい版が再発行される

単純な事務ミスであることがほとんどだが、まれに「条件が下がった版」を静かに出してくる会社もある。契約書の数字は、全項目を内定通知・オファーレターと突き合わせてから署名する。この照合は疑い深さではなく、契約の基本動作だ。

電子契約での誤入力

雇用契約が電子サインの場合もある。誤入力の扱いはこうだ。

  • 送信前なら、入力し直すだけでいい
  • 送信後は、システム上で自分から取り消せないことが多い。人事へ「入力に誤りがありました」と連絡し、差し戻しか再依頼の処理をしてもらう
  • 電子でも紙でも、送信・提出後の対応は「連絡して指示を仰ぐ」が共通の正解になる

入社書類全般で不備の連絡が会社側から来た場合の返し方は、入社書類の不備連絡への対応が担当だ。

よくある誤解

「契約書を書き損じたと連絡したら、そそっかしい人だと思われて入社前の評価が下がる」。下がらない。選考はもう終わっていて、入社前のやり取りは事務処理だ。人事にとって記入ミスの対応は日常業務で、記憶にも残らない。むしろ独断の訂正跡がある契約書が返ってくる方が、事務としては扱いに困る。

「サインした後に条件の誤りに気づいたら、もう手遅れだ」。手遅れではない。労働条件は契約書だけでなく、求人票・内定通知・労働条件通知書の記載も判断材料になる。署名後でも、他の書面との食い違いを示して訂正を求められる。ただし交渉の手間は署名前の確認より格段に重くなるので、順番はやはり「照合してから署名」だ。

よくある質問

実印と認印を間違えて押しました。押し直しは必要ですか?

契約書の指定(実印指定か認印可か)による。指定と違う印を押した場合は、人事に伝えて指示を受ける。印の重ね押しや独断の押し直しは、印影が汚れて逆に問題になるので、ここも自己判断で動かないのが正解だ。

契約書の控えをもらっていません。求めていいですか?

求めていい。雇用契約書は2通作成して双方が1通ずつ保管するのが原則の運用だ。控えが渡されない場合、「控えを1部いただけますか」と普通に依頼する。労働条件の書面はあなたの権利を守る道具なので、入社日までに必ず手元に置く。

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