「賞与は支給日に在籍している者に支給する」。この一文を読んだことがあるかどうかで、退職の手取りが数十万円変わる。

支給日在籍規定の仕組みと、就業規則のどこを見るか、退職日との順番の組み方まで、実務だけを書く。

この記事の要点

  • 支給日在籍規定は、支給日にいるかどうかで賞与の有無を決める定めだ
  • 判例上も一般に有効。査定期間を働いていても、支給日前退職は受け取れない可能性が高い
  • 見る場所は賃金規程の賞与条項・就業規則本則・退職手続きの条項の3つ
  • 順番の正解は、着金確認→退職の切り出しだ

支給日在籍規定の仕組み。なぜ「働いた分」がもらえないのか

賞与は、査定期間(例えば4〜9月)の働きに対して支払われる。なら期間を全部働けばもらえるはずだ——この直感が、規定の前では通らない。

支給日在籍規定は、受給の条件を「査定期間の勤務」ではなく「支給日の在籍」に置く定めだ。そして日本の裁判例では、この形の規定は一般に有効と扱われてきた。賞与には過去の対価だけでなく、将来への期待や在籍の奨励という性格も含まれる、という理屈になる。

納得がいくかは別として、実務の前提はこうなる。

  • 規定がある会社では、支給日の前日に退職すると、半年働いた分の賞与がゼロになりうる
  • 規定の有無と支給日を知らずに退職日を決めるのは、数十万円をコイントスに賭ける行為だ

用語の整理も1つ。この規定は法律の条文ではなく会社ごとの定めだから、あるかないか、どう書かれているかは自分の会社の規程でしか確認できない。賞与そのものの基礎は用語辞典の賞与の項にまとめてある。

確認する場所。3つの条項を順に見る

社内ポータルか人事部で、次の3つを確認する。閲覧を求めるのは在籍社員の当然の権利で、退職の予兆として身構えられる行為ではない。

1、賃金規程(給与規程)の賞与条項。本丸はここだ。支給日在籍の定めの有無、支給日(「◯月◯日」か「別途定める日」か)、支給対象期間の記載を見る。賞与の詳細は就業規則の本則ではなく、別冊の賃金規程に置かれていることが多い。

2、就業規則本則の賞与に関する条項。賃金規程への委任の書き方と、支給の原則を確認する。

3、退職手続きの条項。退職の申し出は何日前までか(30日前・1ヶ月前など会社により幅がある)。この日数と支給日の位置関係で、あなたの動ける日程が決まる。

見つからない・読んでも曖昧、という場合は、規程の該当箇所を人事に確認する。口頭の「たぶん大丈夫」を根拠に日程を組まないこと。規程の条文だけが根拠になる。

順番の組み方。着金確認より先に口を開かない

規定を確認したら、日程の組み立てはこうなる。

  1. 支給日を固定点にする。支給日在籍が条件なら、退職日は支給日より後に置く
  2. 着金を確認してから、退職を切り出す。支給日と着金日がずれる会社もある。振り込まれた事実を見てから動くのが最も確実だ
  3. 切り出しから退職日までの期間は、就業規則の申し出期限+引き継ぎで逆算する

切り出しが支給日より前になる日程は、規定上の資格はあっても、賞与の裁量部分への心証リスクを抱える。避けられるなら避ける。ボーナスをもらってから辞める段取りの全体はボーナスもらってすぐ辞めるのは卑怯かに逆算カレンダーつきで書いた。冬の賞与に特化した日程は冬のボーナスをもらって12月に辞めるが担当だ。

規定がない・例外がある場合

最後に、変則パターンも押さえておく。

  • 規定が見当たらない場合。支給日在籍の定めがなければ、査定期間の勤務に応じた支払いを求める余地が出る。ただし争いになりやすい領域だから、まず人事に取り扱いを確認し、必要なら労働局の相談窓口を使う
  • 支給日が「別途定める」形式の場合。毎年の社内通知で確定する。過去の支給月の実績を先輩や明細で確認して、余裕を持った日程を組む
  • 会社都合の退職・定年の場合。扱いが別に定められていることがある。該当するなら規程の例外条項まで読む

そもそもいまの賞与額の決まり方(査定の締め)を知りたい人は冬のボーナスの査定はいつ決まるかへ。規定は敵ではない。読んだ人だけが使える取扱説明書だ。読まずに辞める人が置いていく数十万円を、あなたは持って出ればいい。

よくある質問

支給日在籍規定とは何ですか?

支給日に在籍する社員にのみ賞与を払う定めだ。判例上も一般に有効で、支給日前の退職は受け取れない可能性が高い。

就業規則のどこを確認すればいいですか?

賃金規程の賞与条項・就業規則本則・退職手続きの条項の3つだ。賞与の詳細は別冊の賃金規程にあることが多い。

退職を先に伝えると賞与は減らされますか?

在籍していれば資格はあるが、裁量部分への心証リスクは残る。着金確認→切り出しの順番が最も安全だ。

あわせて検索される疑問に、先に答えておく

支給日の直後に辞めるのは問題になりませんか

規定の面では何の問題もない。支給日在籍という条件を満たして受け取り、就業規則の手続きに沿って退職を申し出るなら、それは制度の正しい利用だ。賞与は査定期間の労働への対価であって、将来の忠誠の前払いではない。印象面の不安への向き合い方は別記事に書いたが、結論だけ言えば、支給直後の退職者を会社は毎年見ており、あなたが初めての例ではない。

内定先への入社日と支給日が重なりそうです。どちらを優先すべきですか

金額と関係の両方を見て決める。賞与が数十万円なら、入社日を2週間〜1ヶ月ずらす交渉の価値は十分ある。転職先には「現職の引き継ぎを丁寧に終えたい」という説明で通ることが多く、賞与の話を出す必要はない。逆に、入社日が動かせない事情(欠員補充の緊急枠など)があるなら、賞与を諦めて関係を取る判断もある。数字にして並べれば、感情ではなく損得で決められる。

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