50代が見えてきた。会社には役職定年の制度がある。ある年齢で役職を外れ、年収が下がることは分かっている。
分かっているのに、何も手を打てていない。この状態の人が一番多い。制度の仕組みと、下がる前後にできることを、順番で書く。
この記事の要点
- まず自社の規程で、年齢と減額の扱いを正確に把握する
- 効くのは3つ。規程の把握・固定費の組み直し・経験の棚卸しだ
- 棚卸しは、役職の看板がある今のうちにやる方が圧倒的に軽い
- 動くなら40代。50代半ばを過ぎると選択肢は明確に細る
まず自社の規程を正確に見る
役職定年は法律の制度ではなく、会社ごとの社内制度だ。だから「一般的にはこう」という情報より、自社の規程が全てになる。
確認するのは3点。
- 何歳で役職を外れるのか(55歳前後が多いが、会社による)
- 年収はどう変わるのか(役職手当の消滅・基本給の扱い・賞与の算定)
- その後のポジションはどうなるのか(専門職・後進の支援・元の部署に残るのか)
多くの人が「だいたい55歳くらいで下がるらしい」という曖昧な認識のまま、数年を過ごす。曖昧なままだと、備えも曖昧になる。規程は就業規則や賃金規程に書かれているし、人事に聞いても答えが返る。数字を確定させることが、全ての手の起点になる。
下がる前提で、固定費を組み直す
年収が2〜3割下がる想定なら、その水準で回る家計に先に作り替えておく。下がってから慌てて削るのと、下がる前に組み直しておくのとでは、精神的な負荷がまるで違う。
やることは3つ。
- [手取り計算ツール](/tools/salary-calculator)で、下がった後の想定年収の手取りを出す
- その手取りで固定費が収まるかを見る。住宅ローン・教育費・保険が主な変数になる
- 収まらないなら、削る順番を先に決めておく
特に保険と通信費は、下がる前でも削れる領域だ。この時期は住宅ローンの残債と教育費のピークが重なりやすいから、転職・退職前後のお金の整理で書いた点検の観点も一緒に当てておくといい。
経験の棚卸しは、看板があるうちにやる
ここが一番大事だ。役職を外れてからでは、着手が重くなる。
理由は2つある。1つは実務的な理由で、役職者としての実績(マネジメント規模・意思決定の範囲・改善した数字)は、その立場にいる今の方が具体的に言語化できるからだ。数年経つと、記憶が薄れて数字が出せなくなる。
もう1つは心理的な理由だ。役職を外れた後は、多かれ少なかれ気持ちが沈む。沈んだ状態から棚卸しを始めるのは、想像以上にきつい。
棚卸しの中身は、40代スキルなしは嘘だという記事で書いた手順がそのまま使える。20年働いた人間に「何もない」はありえない。あるのに、言語化されていないだけだ。
社内で残る道と、外へ出る道
備えた上で、選択肢は2つある。どちらも正解になり得る。
社内に残る道。役職を外れた後の働き方を、自分から組み直す。専門職として手を動かす側に戻る、後進の育成に軸足を置く、社内の改善を主導する。役職の重圧から解放されて、かえって働きやすくなる人は実際にいる。管理職になりたくない人への記事で書いた通り、役職=幸福ではない。
外へ出る道。経験を持ち込める場所へ移る。中小企業の管理職、専門性を活かした職種、業界内の別ポジション。年収が下がる前提の社内より、経験を評価してくれる場所の方が条件がいいケースはある。
判断のために、まず外の反応という事実を持ってほしい。
*クリックすると公式サイトが開く。経歴を登録して待つ形なので、こちらから応募する手間はない。*
登録後の流れ|① 経歴を登録する(後から追記できる) → ② 公開範囲を設定する(現職企業をブロックできる) → ③ 企業からのオファーを待つ。届いたものだけ見ればいい
自分の経験がどの職種から求められているかを数字で知りたいなら、測定型から入る手もある。
*クリックすると公式サイトが開く。質問に答えると想定年収と、あなたの経歴を求める企業からのスカウトが見られる。*
登録後の流れ|① 質問に答えて経歴を登録する(10分弱) → ② 想定年収が表示される → ③ 経歴に興味を持った企業からスカウトが届く
測った上で「今の会社に残る方がいい」という結論になるなら、それは立派な判断だ。見ずに残るのは判断ではなく、ただの現状維持になる。
動くなら何歳か。正直な現実
年齢の話を、はっきり書く。
- 40代——経験を持ち込む転職が成立しやすい。管理職経験は中小企業では特に需要がある
- 50代前半——選択肢は絞られるが、専門性と実績があれば道はある。求人の見つけ方が変わる
- 50代半ば以降——正社員の転職市場は明確に細る。業務委託・顧問・嘱託など、雇用の形自体を変える発想が必要になる
つまり、役職定年が見えてから動き始めるのでは、選択肢の面で遅い。この記事にたどり着いた時点が40代なら、まだ全部の選択肢がある。書類が通らない場合の直し方は40代の書類が通らない理由にまとめた。
かつての部下が上司になる状況そのものへの対処は、年下の上司がやりにくいときの距離の取り方に分けて書いた。
雇用以外の形で経験を売る選択肢は、プロフェッショナルハブの評判に分けて書いた。
退職勧奨や早期退職に直面した場合は、50代でリストラされた、その後の道に動く順番を書いた。
ここまでのまとめ
・まず自社の規程で、年齢と減額の扱いを正確に把握する
・効くのは3つ。規程の把握・固定費の組み直し・経験の棚卸しだ
・棚卸しは、役職の看板がある今のうちにやる方が圧倒的に軽い
あわせて検索される疑問に、先に答えておく
役職定年後にモチベーションが保てるか不安だ
多くの人が直面する問題で、正直、完全な処方箋はない。ただ1つ言えるのは、役職を自分の価値の全部にしていた人ほど、外れた時の落差が大きいということだ。だから今のうちに、役職以外の軸(専門性・社外の関係・家庭・副業)を1つ作っておくことが、実は最大の備えになる。肩書きが1本しかない状態が、一番もろい。
役職定年の年齢を引き上げる会社もあると聞いた
人手不足を背景に、制度を見直す企業は出てきている。だが、自社がそうなる保証はない。制度が変わることに期待して備えを先送りするのは、一番リスクが高い賭けになる。備えておいて制度が変わったなら、それは純粋な得だ。
役職を外れると部下だった人が上司になる。耐えられるか
構図としてはよくある話だが、実際に経験すると想像以上に堪える人がいる。ここは相性と組織文化によるとしか言えない。ただ、先にその場面を想定しておくかどうかで、受け止め方はかなり変わる。想定していない人ほど、当日に感情が振り切れる。心の準備は、実は具体的な備えの1つなんよ。
正社員以外の形で専門性を売る道を検討するなら、案件・顧問業務を扱う窓口もある。
*クリックすると公式サイトが開く。専門性を活かした案件紹介の窓口で、無料で面談できる。*
登録後の流れ|① 経歴を登録する(数分) → ② 面談で専門領域と希望する関わり方を伝える → ③ 案件・顧問業務の紹介を受けられる
登録するなら、面談の日程まで進める前提で登録してほしい。登録だけして放置すると、何も動かない。担当と話して初めて、書類も求人も前に進む。
役職別の平均給料(公的データ)
厚労省の賃金構造基本統計調査(令和7年)では、部長級63万5,800円・課長級52万9,200円・係長級39万9,200円・非役職者31万500円で、平均年齢は係長45.4歳・課長49.5歳・部長53.1歳だった。昇進で上がる額と転職で上がる額の比べ方は役職別の平均給料の記事で書いた。
退職金の平均と制度がある会社の割合(公的データ)
厚労省の就労条件総合調査(令和5年)では、退職給付制度がある企業は74.9%(30〜99人は70.1%、宿泊・飲食は42.2%)、勤続20年以上の大卒の平均退職給付額は定年1,896万円・自己都合1,441万円、退職一時金のみの会社は1,623万円で年金と併用の会社は2,261万円だった。勤続年数別・学歴別の表は退職金の平均の記事で書いた。
退職金の税金
退職金は退職所得控除(勤続20年まで年40万、20年超は年70万)を引いた残りの半分にだけ分離課税され、勤続20年で1,000万なら約15万、勤続30年で2,000万なら約40万で済む。受給に関する申告書を出さないと20.42%が源泉徴収される。勤続年数×金額の早見表は退職金の税金の早見表の記事で書いた。
65歳までは義務、70歳までは努力義務
高年齢者雇用安定法により、65歳までの雇用確保措置(定年の引上げ・定年の廃止・継続雇用制度のいずれか)は会社の義務で、2025年4月に経過措置が終わって希望者全員が対象になった。70歳までの就業確保措置は努力義務で、定年引上げ・定年廃止・継続雇用・業務委託・社会貢献事業の5つから選ぶ形になる。働けることと条件が維持されることは別だ。中身は65歳まで働けるのは義務、70歳までは努力義務の記事で書いた。
働きながら年金をもらうと減るのか
在職老齢年金は、基本月額(老齢厚生年金の月額)と総報酬月額相当額の合計が基準額を超えると、超えた分の2分の1にあたる老齢厚生年金が停止される仕組み。2025年の年金制度改正法で基準額が50万円から62万円に上がり、2026年4月から適用されている。減るのは老齢厚生年金だけで、老齢基礎年金は減らない。線は働きながら年金をもらうと減るのかの記事で書いた。
よくある質問
役職定年とは何ですか?年収はどのくらい下がりますか?
一定年齢で管理職が役職を外れる社内制度だ。55歳前後が多く、下がり幅は2〜3割程度が語られる。自社の規程で確認するのが先だ。
役職定年に備えて何をしておけばいいですか?
規程の把握・固定費の組み直し・経験の棚卸しの3つだ。特に棚卸しは、役職の看板があるうちにやる方が軽い。
役職定年の前に転職すべきですか?
全員がすべきではないが、外の選択肢を見る価値は全員にある。動くなら40代。50代半ばを過ぎると明確に細る。
経験の棚卸しシートをLINEで無料配布中
管理職経験を市場の言葉に翻訳するシートを、公式LINEで無料配布している。看板があるうちに、中身を言語化してほしい。



