65歳から年金をもらいながら働くと、年金が減ると聞いた。だから働く時間を抑えている。でも、いくらまでなら減らないのかを、正確に知らない。
基準が上がった。基準は62万円に上がった。もう働く時間を抑えなくていい。計算式と、減らない月給の線と、繰下げとの関係を書く。
先に一文で。在職老齢年金は基本月額(老齢厚生年金の月額)と総報酬月額相当額の合計が基準額を超えると超えた分の2分の1が停止される仕組みで、2025年の年金制度改正法により基準額が50万円から62万円に上がり2026年4月から適用、支給停止の対象は50万人から30万人に減る。
この記事の要点
- 判定は基本月額+総報酬月額相当額。超えた分の2分の1が停止
- 基準額は50万円 → 62万円(2026年4月から)
- 20万人が新たに全額受給できるようになる(対象者は50万人→30万人)
- 減るのは老齢厚生年金だけ。老齢基礎年金は減らない
- 注意|加給年金は全額停止で止まる/繰下げても停止分は増えない
計算の仕組み
| 使う額 | 中身 |
|---|---|
| 基本月額 | 老齢厚生年金の月額(加給年金額を除く) |
| 総報酬月額相当額 | その月の標準報酬月額+直近1年間の標準賞与額の合計を12で割った額 |
基本月額+総報酬月額相当額 が 62万円を超えると、超えた額の2分の1に相当する老齢厚生年金が停止される。
いくらまでなら減らないか
| 老齢厚生年金の月額 | 総報酬月額相当額の上限(減らない線) |
|---|---|
| 8万円 | 54万円 |
| 10万円 | 52万円 |
| 12万円 | 50万円 |
| 15万円 | 47万円 |
| 18万円 | 44万円 |
老齢厚生年金が月10万円の人なら、総報酬月額相当額52万円まで1円も減らない。賞与を含めた年収に直すと、620万円前後まで減らない計算になる。
改正前の50万円基準では、同じ人は総報酬月額相当額40万円で減り始めていた。12万円分の余裕ができたことになる。
基準額の推移
| 年度 | 基準額 |
|---|---|
| 2005年度(制度開始) | 48万円 |
| 2022年度 | 47万円 |
| 2024年度 | 50万円 |
| 2026年度 | 62万円 |
62万円は2024年度価格で、賃金変動に応じて改定される。実際の額は日本年金機構の最新の公表を確認する。
「62万円」は、年金を受給しつつ50代の平均的な賃金を得て継続的に働く人を念頭に置いて設定された水準だ。
減るのは老齢厚生年金だけ
| 年金 | 影響 |
|---|---|
| 老齢厚生年金 | 停止の対象 |
| 老齢基礎年金 | 減らない |
| 加給年金 | 老齢厚生年金が全額停止されると止まる(一部停止なら支給される) |
厚生年金の期間が短く、基礎年金が中心の人は、そもそも影響が小さい。自分の内訳はねんきん定期便の見方の記事で確認する。平均額は年金は平均いくらもらえるかのデータ記事で書いた。
繰下げ受給との関係
老齢厚生年金を繰り下げている期間中、在職老齢年金の仕組みで支給停止される部分は、繰下げによる増額の対象にならない。
つまり、働きながら繰り下げても、停止される分は増えないので、繰下げの効果が薄まる。
| 組み合わせ | 中身 |
|---|---|
| 厚生年金も基礎年金も繰下げ | 停止される分は増えない |
| 厚生年金は繰り下げず、基礎年金だけ繰下げ | 基礎年金の繰下げには在職老齢年金の影響がない |
繰上げ・繰下げの損得は年金の繰上げと繰下げはどちらが得かの記事で書いた。
在職定時改定
65歳以上で厚生年金に加入して働き続けると、毎年10月に、それまでに納めた分が年金額に反映されて増える(在職定時改定)。退職を待たずに増えるので、働き続けるほど年金も増えていく。
判断の材料は4つ
- 今の賃金(標準報酬月額と賞与)
- 老齢厚生年金の見込額(ねんきんネット)
- 健康状態
- いつまで働くつもりか
ねんきんネットで見込額を出して、総報酬月額相当額と足して62万円を超えるかを確認する。超えないなら、在職老齢年金を理由に働く時間を抑える必要はない。
65歳までの雇用は会社の義務、70歳までは努力義務だ(65歳まで働けるのは義務、70歳までは努力義務の記事)。65歳以降に辞める場合の失業給付は一時金になる(65歳以上の高年齢求職者給付金の記事)。
老後の家計と合わせて見る
65歳以上の夫婦の無職世帯は、収入25.4万円に対して支出26.4万円で毎月4.2万円の赤字、単身は毎月3.0万円の赤字が平均だ(老後の生活費はいくら足りないかのデータ記事)。働き続けて年金が減らないなら、その分がそのまま赤字を埋める。
私の場合
私はフリーランスで、厚生年金に加入していない期間が続いている。在職老齢年金は、厚生年金に加入して働く人の話なので、独立している人には直接効かない。ただ、会社員時代に積んだ厚生年金の分は残る。どの制度が自分に効くのかは、その時点でどの被保険者なのかで決まる。制度が変わるたびに、自分の立場から見る(2025年の年金制度改正法で何がいつ変わるかの記事)。
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よくある誤解
「働くと年金が全部止まる」。止まるのは老齢厚生年金の一部(超えた分の2分の1)で、基礎年金は減らない。
「繰り下げれば全部増える」。在職老齢年金で停止される部分は、繰下げの増額の対象にならない。
よくある質問
厚生年金に加入しないで働けば減りませんか?
在職老齢年金は厚生年金の被保険者が対象。加入要件を満たさない働き方(週20時間未満など)なら適用されないが、その分の年金は増えない。
自営業の収入は判定に入りますか?
入らない。判定に使うのは標準報酬月額と標準賞与額で、厚生年金に加入していない収入は対象外だ。
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