年金の制度が変わると聞くが、いつ何が変わるのかが分からない。ニュースは断片的で、自分に関係するのがどれなのかも分からない。

改正は1本ではない。改正は1本じゃない。施行日が7つに分かれている。厚生労働省が示す施行期日どおりに、全部1枚に並べる。

先に一文で。2025年6月成立の年金制度改正法は原則2026年4月1日施行で在職老齢年金の基準額が50万→62万に上がり、2026年10月に保険料負担の特例、2027年9月から標準報酬の上限引上げ、2027年10月から企業規模要件の段階的撤廃、2028年4月に遺族厚生年金の見直し、賃金要件の撤廃とiDeCoの年齢引上げは政令待ちだ。

この記事の要点

  • 原則の施行日は2026年4月1日。在職老齢年金は50万 → 62万
  • 2026年10月|短時間労働者の保険料負担の特例(3年間)
  • 2027年9月〜|標準報酬月額の上限が65万 → 68万 → 71万 → 75万
  • 2027年10月〜|企業規模要件が35人超 → 20人超 → 10人超 → 撤廃(2035年10月)
  • 2028年4月|遺族厚生年金の見直し
  • 政令待ち|賃金要件(月8.8万円)の撤廃、iDeCoの70歳未満への引上げ

施行日カレンダー

施行日変わること
2026年4月1日(原則)在職老齢年金の支給停止基準額 50万円 → 62万円
2026年10月1日短時間労働者の保険料の負担割合を軽くする特例(3年間)
2027年9月1日標準報酬月額の上限 65万円 → 68万円
2027年10月1日企業規模要件 50人超 → 35人超
2028年4月1日遺族厚生年金の見直し、子に係る加算額の引上げと配偶者加給年金の見直し
2028年9月1日標準報酬月額の上限 → 71万円
2029年9月1日標準報酬月額の上限 → 75万円
2029年10月1日企業規模要件 → 20人超、個人事業所の非適用業種の解消
2032年10月1日企業規模要件 → 10人超
2035年10月1日企業規模要件 → 10人以下(撤廃)
公布から3年以内の政令で定める日短時間労働者の賃金要件(月8.8万円)の撤廃iDeCoの加入可能年齢の上限を70歳未満へ

1. 在職老齢年金(2026年4月から62万円)

働きながら年金を受け取ると、賃金と老齢厚生年金の合計が基準を超えた分について、老齢厚生年金の支給が減る仕組みがある。この基準額が上がった。

年度支給停止基準額
2005年度(制度開始)48万円
2022年度47万円
2024年度50万円
2026年度62万円

厚生労働省の資料では、この見直しで20万人が新たに老齢厚生年金を全額受給できるようになるとされている(支給停止者は50万人から30万人へ)。「62万円」は、年金を受給しつつ50代の平均的な賃金を得て継続的に働く人を念頭に置いて設定された。

60代で働き方を抑えていた人は、抑える必要がなくなる可能性がある65歳まで働けるのは義務、70歳までは努力義務の記事)。

2. パート・アルバイトの適用拡大

要件変更
賃金要件(月8.8万円)撤廃が決定。施行日は政令待ち(最低賃金の状況を踏まえ、2025年6月から3年以内)
企業規模要件2027年10月 35人超 → 2029年10月 20人超 → 2032年10月 10人超 → 2035年10月 撤廃
個人事業所の非適用業種2029年10月に解消(農業、林業、漁業、宿泊業、飲食サービス業等。既存事業所は経過措置)
保険料の負担割合2026年10月から3年間の特例(標準報酬8.8万円で労働者負担 50%→25% など)

詳細はパートの社会保険はいつから変わるのかの記事、壁の全体像は年収の壁の一覧2026の記事で書いた。

3. 遺族厚生年金(2028年4月)

  • 18歳未満の子のない20〜50代の配偶者は原則5年の有期給付の対象に
  • 60歳未満の男性を新たに支給対象に(男女差の解消)
  • 配慮措置|5年経過後の給付の継続、死亡分割制度有期給付加算の新設、収入要件の廃止、中高齢寡婦加算の段階的見直し
  • 子に支給する遺族基礎年金について、支給停止の規定を見直し

詳しくは遺族年金と2028年改正の記事で書いた。

4. 標準報酬月額の上限(2027〜2029年)

時期上限
現在65万円
2027年9月68万円
2028年9月71万円
2029年9月75万円

上限に張り付いている人は保険料が増え、その分だけ将来の年金も増える。月収65万円を超えている人は、手取りの計画に入れておく(年収別の手取り早見表の記事)。最高等級の者が被保険者全体に占める割合に基づいて改定できるルールも導入された。

5. 私的年金(iDeCo・企業年金)

項目変更
iDeCoの加入可能年齢の上限70歳未満へ引上げ(公布から3年以内の政令で定める日)
企業年金の運用見える化(厚生労働省が情報を集約し公表)

iDeCoの使いどころはNISAとiDeCoはどちらを先に使うかの記事、2027年からの拠出限度額はiDeCoの2027年改正の記事で書いた。

6. 将来の基礎年金の給付水準の底上げ

衆議院の修正で追加された部分。次期財政検証において、基礎年金と厚生年金の調整期間の見通しに著しい差異があり、基礎年金の給付水準の低下が見込まれる場合に、基礎年金と厚生年金のマクロ経済スライドによる調整を同時に終了させるために必要な法制上の措置を講ずるものとされた。

現時点で確定した給付の増額ではなく、将来の判断についての規定だ。今の年金の水準は年金は平均いくらもらえるかのデータ記事で確認する。

自分に関係するのはどれか

立場見るところ
扶養内で働くパート賃金要件の撤廃(政令待ち)、企業規模要件、2026年10月の保険料の特例
60代で働きながら年金2026年4月から62万円。働く時間を抑える必要が減った
月収65万円超の会社員標準報酬の上限引上げ(2027年9月から段階的に)
配偶者がいる人遺族厚生年金の見直し(2028年4月)
50代以降でiDeCoを続けたい加入可能年齢の70歳未満への引上げ(政令待ち)
独立している人個人事業所の適用業種の拡大(2029年10月)

私の場合

私はフリーランス4年目で、国民年金の第1号被保険者だ。今回の改正で直接効くのは、iDeCoの加入可能年齢の引上げと、個人事業所の適用業種の拡大のほうになる。会社員の時に厚生年金を積んだ期間と、独立してからの期間では、将来の額が大きく違う(ねんきん定期便の見方の記事)。制度が変わるたびに、自分がどの立場で影響を受けるのかを見る。ニュースの見出しだけでは判断できない。

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よくある誤解

「2026年10月からパートの賃金要件がなくなる」。撤廃は決まったが施行日は政令待ち。2026年10月に始まるのは保険料の負担割合の特例だ。

「改正で年金が増える」。給付水準の底上げは、将来の判断についての規定で、確定した増額ではない。

よくある質問

在職老齢年金の62万円はいつの価格ですか?

2024年度価格。2026年度までの賃金変動に応じて改定される。実際の額は日本年金機構の最新の公表を確認する。

賃金要件の撤廃はいつになりそうですか?

「全国の最低賃金が1,016円以上となることを見極めて」とされている。2026年10月からの最低賃金は最も低い県でも1,085円なので、条件自体は満たされている状態にある。

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