老後2,000万円問題という言葉だけが残っている。実際には毎月いくら足りないのか、自分の年金でどこまで埋まるのか、何年分を用意すればいいのかが分からない。

夫婦で月4.2万、単身で3.0万足りない。夫婦で毎月4.2万、単身で3.0万足りない。30年なら1,500万と1,080万だ。家計調査2025の実額と、年金との差と、埋める順番を書く。

先に一文で。家計調査2025で65歳以上の夫婦無職世帯は可処分所得221,544円に対し消費支出263,979円で月42,434円の赤字、単身は118,465円に対し148,445円で月29,980円の赤字、30年で夫婦1,527万・単身1,079万の不足になり、埋める手段は退職金・繰下げ受給・65歳以降の就労・iDeCoと共済・支出の見直しだ。

この記事の要点

  • 夫婦の高齢無職世帯|収入25.4万、支出26.4万。毎月4.2万の赤字
  • 単身の高齢無職世帯|収入13.1万、支出14.8万。毎月3.0万の赤字
  • 30年で夫婦1,527万、単身1,079万。25年なら1,273万と899万
  • 持家率95.5%の平均値。賃貸なら家賃6〜10万が上乗せ

65歳以上の無職世帯の家計(2025年平均)

項目夫婦のみの無職世帯単身無職世帯
実収入254,395円131,456円
うち社会保障給付(年金など)228,614円120,212円
非消費支出(税・社会保険料)32,850円12,990円
可処分所得221,544円118,465円
消費支出263,979円148,445円
毎月の不足−42,434円−29,980円
平均消費性向119.2%125.3%
世帯主の平均年齢77.6歳77.8歳

出典|総務省 家計調査報告(家計収支編)2025年平均。持家率は二人以上の高齢無職世帯で95.5%。

不足の総額

期間夫婦単身
20年(85歳まで)1,018万円720万円
25年(90歳まで)1,273万円899万円
30年(95歳まで)1,527万円1,079万円

老後2,000万円問題は2017年のデータ(夫婦で月約5.5万円の赤字)を30年に伸ばした数字で、2025年の実額では赤字幅が縮んで1,500万円前後になっている。ただしこれは持家率95.5%の平均で、賃貸なら家賃(月6〜10万円)がそのまま上乗せになり、30年で2,000〜3,600万円が加わる。

年齢が上がると支出は減る

世帯主の年齢(二人以上・無職)実収入消費支出
65〜69歳290,110円296,997円
70〜74歳287,725円285,844円
75歳以上252,798円248,460円

65〜69歳が最も支出が多い。旅行・趣味・車の維持・住宅の修繕が重なる時期で、ここに退職金を使い切ると後が細る。

支出の内訳(夫婦の高齢無職世帯)

費目月額割合
食料78,964円29.9%
その他の消費支出(交際費22,047円など)51,341円19.4%
交通・通信31,325円11.9%
教養娯楽26,538円10.1%
光熱・水道23,540円8.9%
保健医療17,941円6.8%
住居17,739円6.7%
家具・家事用品11,237円4.3%
被服及び履物5,354円2.0%

住居が6.7%(17,739円)で済んでいるのは持家が前提だから。賃貸なら住居費が3〜5倍になり、赤字は月10万円前後に膨らむ。

年金でどこまで埋まるか

年金の型月額夫婦の支出26.4万との差単身の支出14.8万との差
厚生年金の平均(男性)169,967円+2.1万円
厚生年金の平均(全体)150,289円+0.2万円
厚生年金の平均(女性)111,413円−3.7万円
夫婦とも厚生年金(男性+女性の平均)281,380円+1.7万円
夫=厚生年金・妻=国民年金227,875円−3.6万円
国民年金のみ(満額1人)70,608円−7.8万円

年金の平均額は年金は平均いくらもらえるかのデータ記事で書いた。夫婦とも厚生年金なら黒字、片方が国民年金だけなら赤字、単身で国民年金だけなら月7.8万円足りない

埋める順番

  1. 退職金|大企業の大卒定年で2,000万円前後、中小で1,000万円前後(退職金の相場の記事退職金の平均のデータ記事
  2. 繰下げ受給|70歳で42%増、75歳で84%増。夫婦の年金22.9万が70歳繰下げで32.5万になり赤字が消える。分岐は81歳11ヶ月(年金の繰上げと繰下げはどっちが得かの記事
  3. 65歳以降も働く月5万円の収入で夫婦の赤字4.2万円は消える。在職老齢年金の停止は年金+給与が月65万円超から(定年後の再雇用で給与はどれだけ下がるかの記事
  4. iDeCo・小規模企業共済・NISA|iDeCoは2026年12月から会社員6.2万円・自営業7.5万円(iDeCoの上限引上げと節税額の記事
  5. 支出を下げる|持家か賃貸か、車の維持費(年40〜60万円)、保険の見直し

ここまでのまとめ

夫婦の高齢無職世帯|収入25.4万、支出26.4万。**毎月4.2万の赤字**

単身の高齢無職世帯|収入13.1万、支出14.8万。**毎月3.0万の赤字**

30年で夫婦1,527万、単身1,079万。25年なら1,273万と899万

フリーランスはもっと厳しい

国民年金の満額は月70,608円。夫婦2人で14.1万円で、単身無職世帯の消費支出14.8万円にも届かない。厚生年金の上乗せがない分、iDeCo(月7.5万円まで)・小規模企業共済・付加年金・国民年金基金で自分で積む(フリーランスの老後資金の記事小規模企業共済の記事)。

私はフリーランス4年目で、会社員時代の厚生年金は4社分ある。独立後の期間は基礎年金しか積み上がらないので、この表の単身欄が自分の下限だと思って見ている。貯金の中央値(30代単身で100万円)から見ると、1,000万円の不足は遠い数字に見えるが、埋める手段は5つあって、どれも今日から始められる(貯金の中央値のデータ記事)。

よくある誤解

「老後2,000万円が必要」。2017年のデータを30年に伸ばした数字。2025年の実額では夫婦1,527万円、単身1,079万円。ただし賃貸ならこれに家賃が乗る。

「年金だけで暮らせない」。夫婦とも厚生年金なら平均で黒字。足りないのは、片方が国民年金だけの世帯と、単身の国民年金の人だ。

NISAとiDeCoはどちらを先に使うか

iDeCoは掛金が全額所得控除(年収500万で月2.3万=年4.2万、2026年12月からの上限6.2万なら年11.2万)だが60歳まで引き出せず、NISAは年360万・生涯1,800万で運用益が無期限非課税だが所得控除はない。順番は生活防衛資金6ヶ月→iDeCo・共済→NISAで、転職や独立の予定があるなら現金を厚くする。使い分けはNISAとiDeCoはどちらを先に使うかの記事で書いた。

遺族年金と2028年の改正

遺族基礎年金は子がいる配偶者に月約7.1万円+子の加算(2人で月約11.1万円)、遺族厚生年金は報酬比例の4分の3で年収500万・20年なら月約4.6万円。2028年4月から、子のない60歳未満の配偶者は原則5年の有期給付(額は約1.3倍)になり、男女差と年収850万円要件が撤廃される。額と影響は遺族年金はいくらか、2028年に何が変わるかの記事で書いた。

ねんきん定期便の見方

50歳未満の定期便の金額は「これまでの加入実績」で将来の見込みではなく、50歳以上は「60歳まで今の条件が続いた場合の見込額」。見るのは加入期間・納付額・年金額・直近1年の月別記録の4か所で、転職・退職・独立・改姓で記録の抜けが起きる。ねんきんネットで受給開始年齢を変えた試算ができる。手順はねんきん定期便の見方の記事で書いた。

介護保険料はいくら引かれるか

介護保険料は40歳の誕生日の前日が属する月から始まり、会社員は健康保険料に上乗せで本人負担が月給30万で約2,400円(賞与からも)、フリーランスは国保に介護分(東京23区は所得割2.36%+均等割16,600円)が上乗せ、65歳からは自治体の定額を年金天引き。40〜64歳が使えるのは16の特定疾病に限られる。額は介護保険料はいくら引かれるかの記事で書いた。

子ども1人の教育費はいくらか

教育費は幼稚園から大学まで全部公立で約800万円、大学だけ私立文系で約1,000万円、小学校から私立なら2,300万円超。山は大学の入学初年度で、国公立でも100万円前後、私立文系で150万円前後が一度に出る。目標は高校卒業までに300万円で、児童手当(総額200万円前後)に手を付けずに貯めるのが柱になる。内訳は子ども1人の教育費はいくらかの記事で書いた。

住民税非課税世帯の条件

住民税非課税世帯は均等割も所得割もかからない世帯で、1級地の目安は単身で合計所得45万円以下(給与収入 約110万円)、扶養2人で141万円以下(給与収入 約216万円)。判定は前年の所得なので、退職した年でなく翌年度から該当する。該当すると国保料の7割軽減、高額療養費の上限 月35,400円、大学の授業料減免、給付金の対象になる。条件は住民税非課税世帯の条件はいくらかの記事で書いた。

65歳までは義務、70歳までは努力義務

高年齢者雇用安定法により、65歳までの雇用確保措置(定年の引上げ・定年の廃止・継続雇用制度のいずれか)は会社の義務で、2025年4月に経過措置が終わって希望者全員が対象になった。70歳までの就業確保措置は努力義務で、定年引上げ・定年廃止・継続雇用・業務委託・社会貢献事業の5つから選ぶ形になる。働けることと条件が維持されることは別だ。中身は65歳まで働けるのは義務、70歳までは努力義務の記事で書いた。

親の介護でお金はいくらかかるか

介護保険の自己負担は所得に応じて1〜3割で、月の自己負担には高額介護サービス費の上限(一般世帯44,400円、住民税非課税24,600円、低所得層15,000円)がある。ただし居住費・食費・日用品・紙おむつは対象外で別にかかる。施設は特養 月8〜15万、介護付き有料 月15〜30万が目安。最初に行くのは地域包括支援センターだ。中身は親の介護でお金はいくらかかるかの記事で書いた。

よくある質問

この数字に介護費用は入っていますか?

入っていない。保健医療は月17,941円(夫婦)で、通院と薬が中心。介護が必要になると、在宅で月5〜10万円、施設で15〜30万円が別に要る。

持家でもリフォームや固定資産税は?

住居費17,739円には設備の修繕が含まれるが、大規模なリフォーム(数百万円)は一時的な支出として別に見る。固定資産税は非消費支出に入る。

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