デザインの案件で、契約書に「本件成果物に関する著作権(著作権法27条及び28条に定める権利を含む)はすべて甲に譲渡する。乙は著作者人格権を行使しない」とあった。意味が分からないまま、印鑑を押した。

この2行で、渡すものが変わる。全部譲渡と書かれても、27条と28条は動かない。仕組みと、交渉で取りにいく5つを書く。

先に一文で。著作権法61条2項により27条・28条は特掲がなければ譲渡されず制作者に留保されると推定されるので発注側の契約書には必ず「27条及び28条を含む」と書いてあり、著作者人格権は譲渡できないため不行使条項が置かれる。取りにいくのは①利用許諾化②範囲の限定③二次利用の追加報酬④実績公開⑤氏名表示の5つだ。

この記事の要点

  • 著作権法61条2項|27条・28条は特掲がなければ譲渡されない(と推定)
  • だから発注側の契約書には「27条及び28条を含む」が入っている
  • 著作者人格権は譲渡できない。だから「不行使」条項になる
  • 取りにいく5つ|利用許諾化/範囲の限定/二次利用の追加報酬/実績公開/氏名表示
  • 全部譲渡を受けるなら、単価に反映させる

契約書で必ず見る5行

#文言意味
1著作権法27条及び28条に定める権利を含む改変・翻案・続編・別媒体への展開まで渡る
2著作者人格権を行使しないクレジットを外されても、改変されても言えない
3譲渡の時期「報酬の支払をもって」か「納品時」か(未払いのリスクが変わる)
4二次利用別途協議・追加報酬の定めがあるか
5実績公開ポートフォリオに載せられるか

27条と28条は何か

条文内容
27条翻訳権、編曲権、変形権、翻案権(=改変・作り変える権利)
28条二次的著作物の利用に関する原著作者の権利

著作権法61条2項は、譲渡の契約でこの2つが譲渡の目的として特掲されていない場合、譲渡した者に留保されたものと推定すると定めている。

つまり、「著作権を譲渡する」とだけ書かれた契約では、改変や続編、別媒体への展開の権利は制作者側に残る可能性がある。だから発注側の契約書には、ほぼ必ず「27条及び28条を含む」が入る。

著作者人格権は譲渡できない

権利内容
公表権まだ公表していないものを公表するかを決める
氏名表示権名前を出すか、どう出すかを決める
同一性保持権意に反する改変を受けない

これらは著作者の一身に専属し、譲渡できない。そこで実務では「著作者人格権を行使しない」という不行使条項が置かれる。丸のみすると、クレジットが消え、意図と違う改変をされても契約上は言えなくなる

交渉で取りにいく5つ

#落としどころ書き方の例
1利用許諾(ライセンス)にする「乙は甲に対し、本件成果物を◯◯の目的で利用することを許諾する」
2譲渡の範囲を限定媒体(自社サイトのみ)・期間(3年間)・地域(日本国内)
3二次利用は別途協議・追加報酬「当初の用途以外に利用する場合は、事前に協議のうえ別途対価を定める」
4実績としての公開「受託者は本件成果物を自己の実績として公開できる。時期・範囲は事前に甲の承諾を得る」
5氏名表示を残す「ただし氏名表示については別途協議する」

4番は値段より大事なことがある。ポートフォリオに載せられないと、次の仕事が取れない。守秘の案件が続くと、実績が空白になる。

交渉の言い方

拒否ではなく、条件の提示にする。

「著作権の扱いについて2つご提案します。27条・28条を含む全部譲渡でしたら◯◯円、自社サイトでの利用許諾(3年)でしたら◯◯円で承ります。どちらでも対応できます。」

値段の話に変換すると通りやすい。単価の出し方はフリーランスの単価の決め方の記事、上げ方はフリーランスの単価の上げ方の記事で書いた。

法律で禁止されている要求

要求位置づけ
費用を負担せずに内容を変更させる/受領後にやり直させる不当な給付内容の変更及び不当なやり直し(禁止)
金銭・役務その他の経済上の利益を提供させる不当な経済上の利益の提供要請(禁止)
価格協議の求めに応じない協議に応じない一方的な代金決定(禁止)

詳細は取適法の4義務と11の禁止行為の記事フリーランス法で発注者に課される義務の記事で書いた。「追加の対応は無償で」は、契約書に書いてあっても通らないことがある。

受ける前のチェック

  1. 27条・28条の特掲があるか
  2. 著作者人格権の不行使条項があるか
  3. 譲渡の時期は報酬の支払をもって
  4. 二次利用の定めがあるか
  5. 実績公開ができるか
  6. 修正の回数と、それを超えた場合の費用が書いてあるか

契約書全体のチェックは業務委託契約書のチェックポイントの記事で書いた。

私の場合

私はWebデザイナー・ディレクターとして働き、今はフリーランスだ。実績公開の条項を入れられるかどうかで、その後の営業のしやすさが変わるというのを何度も感じてきた。単価が少し低くても実績に出せる案件と、単価が高くて一切出せない案件では、1年後に残るものが違う。全部譲渡を断らなくていい。渡すものを分かって、値段に載せる。それだけで扱いは変わる。

よくある誤解

「著作権を譲渡すれば全部渡る」。27条・28条の特掲がなければ、翻案権などは制作者に留保されると推定される。

「著作者人格権も譲渡できる」。できない。だから不行使条項が使われる。

よくある質問

契約書がない場合、著作権は誰のものですか?

原則として制作者(著作者)に帰属する。譲渡の合意がなければ渡らない。発注側が使える範囲は、黙示の利用許諾の範囲に留まる。

途中で契約を解除されたら、作りかけのものは?

譲渡の時期を「報酬の支払をもって」としていれば、未払いのまま権利が渡ることを防げる。ここを納品時にしていると弱くなる(報酬が未払いの時の記事)。

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