報酬を一方的に減らされた。検収でやり直しを何度もさせられたのに、追加の費用は出ない。支払は納品から3ヶ月後だと言われた。契約書はなく、口頭とチャットだけだ。
これは全部、法律で禁止されている。減額も、返品も、手形払いも、法律で禁止されている。旧・下請法が変わった取適法の中身を、条文どおりに並べる。
先に一文で。旧・下請法は中小受託取引適正化法(取適法)になり、委託事業者には発注内容の明示・支払期日60日以内・書類2年保存・遅延利息 年14.6%の4義務と、減額や買いたたきなど11の禁止行為が課され、手形払いも支払遅延として禁止、受託側が了解していても違反になる。
この記事の要点
- 支払期日は受領後60日以内のできる限り短い期間
- 遅れたら年率14.6%の遅延利息
- 禁止行為は11項目。減額・返品・買いたたき・やり直し
- 新設|協議に応じない一方的な代金決定の禁止
- 手形払いは支払遅延に該当して禁止
- 了解していても、違法性の意識がなくても違反になる
委託事業者の4つの義務
| 義務 | 中身 |
|---|---|
| 発注内容等の明示義務(第4条) | 発注の際に直ちに、書面または電磁的記録を交付。11項目をすべて記載 |
| 支払期日を定める義務(第3条) | 受領した日から起算して60日以内の、できる限り短い期間内に定める |
| 書類の作成・保存義務(第7条) | 取引内容の書類・電磁的記録を作成し、2年間保存 |
| 遅延利息の支払義務(第6条) | 受領日から60日を経過した日から実際の支払日まで、年率14.6% |
明示すべき11項目には、双方の名称、委託をした日、給付の内容、受領する期日と場所、検査を完了する期日、代金の額、代金の支払期日が含まれる。「後で決める」は認められない。
11の禁止行為
| # | 禁止行為 | 具体例 |
|---|---|---|
| 1 | 受領拒否 | 責任がないのに納品を受け取らない |
| 2 | 支払遅延 | 受領後60日以内に定めた期日までに全額払わない |
| 3 | 代金の減額 | 発注時に決めた額を、責任がないのに後から下げる |
| 4 | 返品 | 責任がある不良品以外を受領後に返す |
| 5 | 買いたたき | 同種・類似の給付に通常支払われる対価に比べて著しく低い額を不当に定める |
| 6 | 購入・利用強制 | 指定する製品・サービスを強制的に買わせる |
| 7 | 報復措置 | 公取委などに知らせたことを理由に取引を減らす・止める |
| 8 | 有償支給原材料等の対価の早期決済 | 代金の支払期日より早く原材料代を相殺・支払わせる |
| 9 | 不当な経済上の利益の提供要請 | 金銭・労務・その他の利益を提供させる |
| 10 | 不当な給付内容の変更及び不当なやり直し | 費用を負担せずに内容を変更し、受領後にやり直させる |
| 11 | 協議に応じない一方的な代金決定 | 価格協議の求めに応じない、必要な説明をしない |
11番は新しく入った禁止行為だ。値上げを申し入れても取り合ってもらえない、というのが違反として明文化された。単価交渉の進め方はフリーランスの単価の上げ方の記事で書いた。
手形払いも禁止
支払遅延の禁止には、次の2つが含まれる。
- 手形を交付すること
- 電子記録債権や一括決済方式のうち、支払期日までに代金相当額の金銭と引き換えることが困難なものを使うこと
つまり、「60日以内に手形を振り出す」という形は通らない。60日以内に現金で払うのが原則になる。
了解していても違反になる
公正取引委員会は、中小受託事業者の了解を得ていても、委託事業者に違法性の意識がなくても、規定に触れれば違反になるとしている。「合意したじゃないですか」は反論にならない。
取適法とフリーランス法の使い分け
| 取適法(旧・下請法) | フリーランス法 | |
|---|---|---|
| 対象の決まり方 | 事業者の資本金規模または従業員基準と取引の内容 | 受注側が従業員を使用しない個人・一人法人なら発注側の規模を問わない |
| 取引の内容 | 製造委託・修理委託・情報成果物作成委託・役務提供委託・特定運送委託 | 業務委託全般 |
| 明示義務 | 発注の際に直ちに、11項目 | 直ちに、書面または電磁的方法 |
| 支払期日 | 受領後60日以内 | 受領後60日以内(特定業務委託事業者) |
| 禁止行為 | 11項目 | 7項目(継続的な業務委託の場合) |
| 相談窓口 | 公正取引委員会・中小企業庁 | フリーランス・トラブル110番 |
両方の対象になることがある。その場合、どちらで戦うかを自分で決める必要はない。事実(減額された、60日を超えた、書面がない)を並べて相談すれば、窓口が振り分ける。フリーランス法の中身はフリーランス法で発注者に課される義務の記事で書いた。
動く順番
- 書面・チャット・メール・納品の記録を集める(書面がないこと自体が違反の証拠になる)
- 発注書と入金の日付を並べて、受領日から何日経ったかを数える
- 相手に書面で請求する(報酬が未払いの時の記事)
- 応じなければ、公正取引委員会・中小企業庁・フリーランス・トラブル110番に相談する
- 契約書のひな形は事前に整える(業務委託契約書のチェックポイントの記事)
私の場合
私はフリーランス4年目で、支払期日を契約書に必ず書き込むようにしている。書いていないと「月末締め翌々月末払い」が当然のように出てきて、納品から入金まで90日開くことがあるからだ。60日という線を知っていれば、そこで一度止められる。知らないと、そういうものかと受け入れてしまう。
よくある誤解
「合意したから仕方ない」。了解していても違反になる。合意は免罪符にならない。
「下請法は製造業の話」。情報成果物作成委託(デザイン・記事・プログラム)も役務提供委託も対象だ。
よくある質問
発注書をもらっていない場合はどうなりますか?
発注内容等の明示義務の違反になる。書面がないこと自体が違反なので、チャットやメールの記録を残しておく。
検収で何度もやり直しをさせられたら?
費用を負担せずに内容を変更したり、受領後にやり直させたりすることは禁止されている。追加の作業には追加の費用が要る。
独立の資料をLINEで無料配布中
発注書・納品日・入金日を並べて、60日の線と遅延利息を出す記入表を公式LINEで無料配布している。相手が了解を取っていても、違反は違反だ。

