退職代行を頼んだら、上司から鬼のように着信が来るんじゃないか。家に来るんじゃないか。損害賠償すると言われたら?

この3つは、退職代行をためらう不安の御三家だ。発生度と対処を先に知っておけば、起きても台本どおりに動くだけになる。順に書く。

先に一文で。会社からの直接連絡には出る義務がなく、自宅訪問には応対しなくてよく、損害賠償や懲戒の脅しは法的に成立しにくいので、対処は「出ない・開けない・記録する」の3つで足りる。

この記事の要点

  • 電話に出なくても退職の効力に影響はない。出ない・折り返さないでいい
  • 家に来ても、ドアを開ける義務はない。記録だけ残す
  • 損害賠償・懲戒解雇の脅しは、実際にはほぼ成立しない
  • 執拗な行為は代行へ報告。組合系・弁護士系なら対応力がある

不安1、本人への電話。出る義務はない

まず前提から。退職の意思表示は、代行が会社へ連絡した時点ですでに届いている。法的な手続きは走り出していて、あなたが電話に出るかどうかは、その進行に影響しない。

だから対応はこうなる。

  • 出ない。折り返さない。これで法的に何の不利益もない
  • 着信履歴は消さず、日時をメモしておく。執拗さの証拠になる
  • 留守電やSMSが残ったら保存する。脅しの文言があれば、それはあなたの武器になる
  • 何度も続くなら代行へ報告する。改めて連絡停止を要請してもらう

電話の内容は、たいてい「一度話がしたい」「直接聞きたい」だ。気持ちは分かるが、直接話す場を作ることは、引き止めと責めの場を作ることと同義になりやすい。話す必要のある用件は、すべて代行と書面で処理できる。例外はない。

不安2、家に来る。開けなくていい

発生度から言うと、まれだ。会社にとって社員の自宅訪問は労力が大きく、得るものが少ない。それでも心配な人のために、来た場合の台本を置く。

  1. ドアを開けない。インターホン越しの応対もしなくていい。会う義務はどこにもない
  2. 居留守でいい。不誠実ではない。会わないという意思表示だ
  3. 日時と様子を記録する。可能ならインターホンの録画・録音を残す
  4. 長時間の居座り・大声・連日の訪問は、退職の話を超えて住居の平穏の問題になる。代行へ報告し、程度によっては警察相談(#9110)も正当な選択肢だ

ここまでの事態はほぼ起きないが、台本を持っているだけで、恐怖の総量は下がる。それがこの節の目的だ。

不安3、損害賠償・懲戒解雇の脅し

「急に辞めるなら損害賠償を請求する」「懲戒解雇にしてやる」。言われたら怖い言葉の代表格だが、法的な実態はこうなる。

損害賠償。退職は労働者の権利であり、権利の行使自体を理由にした賠償請求は成立しない。会社が実害を立証して勝てるケースは、極めて限定的(重要な立場での計画的な引き抜きや破壊行為など)とされる。普通の社員が普通に辞めて、賠償が認められる可能性は現実的にほぼない。そもそも、そんな訴訟を起こす費用と手間は、会社側の負担の方が大きい。

懲戒解雇。退職の意思表示後の2週間を欠勤したことだけを理由にした懲戒解雇は、法的な有効性が争われる筋の話で、会社にとってもリスクの高い手だ。しかも有給が残っていれば、その期間は欠勤ですらない。

つまりこれらの言葉は、法的な予告ではなく、感情の表明であることがほとんどだ。言われたら、記録して代行へ渡す。脅しの文言は、相手の立場を悪くする証拠として働く。

報復の心配。転職への影響はあるか

「業界で悪評を流されるのでは」「転職先に連絡されるのでは」という不安も多い。前職が転職先に否定的な情報を吹き込む行為は、内容次第で名誉毀損や偏見に基づく告知として前職側の法的リスクになる。まともな会社はやらないし、やったらやった側が危うい。退職代行の利用が次の会社に伝わる仕組みそのものも存在しない。この論点は次の会社にばれるのかの記事で詳しく書いた。

対応力は、選んだ代行の型で決まる

ここまでの対処のうち、「連絡停止の再要請」「書類の催促」「脅しへの対応」は、依頼した代行の型で対応力が変わる。民間業者は伝達まで、労働組合は交渉まで、弁護士は法的対応まで。型の違いは弁護士と労働組合の違いで書いた。

不安が強い人ほど、対応力のある型を選んでおくと、この記事の台本のほとんどを代行に任せられる。

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利用の流れ|① 無料相談で「会社からの連絡が不安」と先に伝える → ② 連絡が来た場合の対応方針を確認する → ③ 納得してから依頼する

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逆の立場の人へ。使われた側の対応

この記事を、部下や同僚に代行を使われた側の立場で読んでいる人もいるはずだ。会社側がやるべき手続き・できないこと・原因分析は退職代行を使われた側になったらで書いた。

よくある誤解

「着信拒否をしたら、不利になる」。ならない。連絡を受ける義務自体がないので、拒否の設定も自由だ。ただし実務上は、拒否せず「出ないで履歴を残す」方が、執拗さの証拠が積み上がる分だけ有利に働くことがある。心の負担と相談して選べばいい。

「親に連絡が行くのでは」。緊急連絡先に電話される可能性はゼロではないが、本人に連絡がつかない場合の安否確認の体裁を取ることが多い。事前に親へ「会社から電話があっても、本人と連絡は取れていると伝えて」と一言頼んでおくだけで、この経路は無力化できる。

よくある質問

会社に私物が残っています。取りに行かないとダメですか?

行かなくていい。私物は着払いで郵送してもらうよう、代行経由で依頼できる。貸与品の返却も郵送で完結する。出社が必要な場面は、実務上ほぼ作らずに済む。

実行日の朝、会社から電話が来たらと思うと眠れません

実行日の連絡はすべて代行が行い、あなたの電話が鳴ったとしても出ない、が台本のすべてだ。当日のあなたの仕事は、スマホを裏返して置いておくことだけになる。多くの利用者が「拍子抜けするほど静かだった」と振り返る日でもある。

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