転勤の内示が来た。家族もいる、家も買った、親の介護も始まっている。断りたい。だが断ったらクビになると聞く。本当に断れないのか。
先に言う。断れる転勤と、断れない転勤がある。分けるのは、理由が法的に「正当」に当たるかだ。当たる5つ、当たらない理由、断った時のリスク、断り方を書く。
先に一文で。転勤は就業規則に定めがあれば原則断れず、断れるのは要介護の家族・本人の治療・勤務地限定の合意・不当な目的・育児介護への配慮義務違反の5つに当たる場合で、単身赴任が嫌や通勤の長さは理由にならないので、正当な理由があれば書面で伝えて拒否し、なければ受けるか退職するかを年収と生活で比べて決めるのが正解だ。
この記事の要点
- 就業規則に転勤の定めがあれば、原則は断れない
- 正当な理由は5つ。介護、治療、勤務地限定、不当な目的、育児介護の配慮義務
- 単身赴任が嫌、通勤が長い、家を買った、は理由にならない
- 正当な理由なく拒否し続けると懲戒・解雇の対象。命令が無効なら解雇はできない
原則。就業規則に定めがあれば断れない
多くの会社は、就業規則か雇用契約書に「業務上の必要により転勤を命じることがある」と書いている。この定めがあり、入社時に合意していれば、会社には転勤を命じる権利があり、個人的な事情での拒否は業務命令違反になる。
| 断れない理由(個人の事情) |
|---|
| 単身赴任になる、家族と離れる |
| 通勤時間が長くなる |
| 家を買った、ローンがある |
| 転勤先の仕事内容が嫌 |
| 子どもの転校が嫌(それだけでは) |
法律事務所の解説も揃っているが、ここに当たる理由だけで断り続けると、懲戒や解雇が有効と判断される可能性がある。
正当な理由になる5つ
| 正当な理由 | 中身 | 根拠 |
|---|---|---|
| 要介護の家族 | 同居して介護している家族がいて、転勤で介護が続けられない | 転勤命令の権利濫用。育児介護休業法26条の配慮義務 |
| 本人の治療 | 継続的な通院・治療が必要で、転勤先で続けられない | 同上 |
| 勤務地限定の合意 | 契約書・労働条件通知書に勤務地が限定されている。2024年4月以降は「変更の範囲」の記載で確認できる | 労働契約の内容 |
| 不当な目的 | 退職に追い込む、内部通報や労組活動への報復、差別 | 権利濫用で命令が無効 |
| 育児・介護への配慮義務違反 | 育児・介護中の社員に、事情を聞かず配慮なく命じた | 育児介護休業法26条 |
5つのどれかに当たるなら、命令が無効か権利の濫用になり得て、拒否しても懲戒や解雇はできない。2024年4月から労働条件通知書に「就業場所の変更の範囲」の記載が義務になったので、自分の契約で転勤の範囲がどう書かれているかを先に見る。労働条件通知書の見方へ。
断った時のリスク
| 状況 | 起きること |
|---|---|
| 正当な理由があり、書面で伝えた | 命令の撤回か、配慮(時期の延期・別の勤務地)の交渉になる |
| 正当な理由なく拒否 | 懲戒(減給・降格)。拒否を続ければ解雇が有効になる可能性 |
| 拒否して退職勧奨を受けた | 応じる義務はない。退職するなら会社都合に近い条件を交渉する |
| 命令が無効なのに解雇された | 不当解雇として争える。労基署・労働局・弁護士へ |
断ると決める前に、自分の理由が5つのどれかに当たるかを紙に書く。当たらないなら、受けるか辞めるかの二択だ。
断り方。書面で、事情と希望を
正当な理由がある場合の伝え方。口頭でなく、メールか書面で残す。
「◯月◯日付の転勤の内示について、ご相談があります。同居の母が要介護◯で、私が主な介護者です。転勤先では介護の継続が困難なため、転勤を受けることができません。勤務地の変更なく業務を続ける形、または時期の延期についてご検討をお願いいたします。必要な書類(介護認定の通知等)は提出いたします。」
事情(事実)、できないこと、代わりの希望、証明の用意。この4つで足りる。感情と不満は書かない。異動を断る時の全体の考え方は異動は拒否できるかに書いた。
断れない時の選択。受けるか、辞めるか
正当な理由に当たらない場合、選択は2つだ。
- 受ける。期間(◯年で戻れるか)、手当(転勤手当・住宅補助)、家族の扱い(帯同・単身)を確認して条件を整える
- 辞める。転勤のない会社に移る。転勤を理由に辞める人の動き方は転勤したくないから辞めるに書いた。配偶者の転勤で自分の仕事が問題になる人は夫の転勤と妻の仕事へ
転勤拒否で懲戒を受けてから辞めるより、受けないと決めた時点で転職に動くほうが、経歴は綺麗に残る。
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よくある質問
総合職で入社しましたが、転勤があるとは聞いていませんでした
就業規則に転勤の定めがあれば、聞いていなくても合意したとみなされることが多い。ただし面接で「転勤はない」と説明されていた記録(メール・求人票)があれば、勤務地限定の合意として争える余地がある。
転勤を断ったら、評価を下げられました
正当な理由があって断った場合の評価の引き下げは、不利益な扱いとして争える。正当な理由がない場合は、業務命令違反の評価として認められることがある。記録を残し、労働局に相談する。
転勤の内示から赴任まで、期間が短すぎます
内示から赴任まで数週間が普通だが、家族の事情があれば時期の延期を相談できる。会社には配慮する義務があり、事情を書面で伝えれば延期が通ることは多い。
転勤の断り方と判断シートをLINEで無料配布中
正当な理由に当たるかを確認する5項目のチェック、会社に出す書面の雛形、受ける場合に確認する条件の一覧を公式LINEで無料配布している。断れる転勤と断れない転勤を、先に分けてほしい。


